路傍の花 その27 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 今やソンジュンはユンシクと会うのに人目を気にしないようにすることにした。悪いことをしているわけでもないし、堂々と道を歩いて話をすることで、筆写の仕事をユンシクに与えている貸本屋の主の態度が違ってきたことに気付いたのだ。ユンシクの筆写の腕も上がっているらしく、仕事も大衆向けのものから儒生向けのものが増え、勉強になる、とユンシクは笑っていた。そんな話をしながら、ソンジュンはユンシクと親交を深め、発表された一年後の小科に必ず共に受かろう、と誓い合った。

 

 その話は、時に人の少なくなった時間に落ち合うようにしているジェシンとヨンハにも報告した。するとジェシンが顔をゆがめた。

 

 「今年のを受けるんじゃないのかよ?」

 

 現王様は大層な学問好きで、学に秀でた若者を多く引き立てたいと、一時間が空きがちだった小科、大科を定期的に行うようになっていた。特に小科は、儒生の実力を底上げするためにと、毎年のように行い、今年度は二回目を秋口にするほどなのだ。ジェシンとヨンハは父親や学堂の師匠に勧められ、そして年齢もちょうど良いために、今回のものに挑戦することになったのだという。

 

 「一番早いのを受けるんじゃなかったのかよ。」

 

 明らかに不貞腐れるジェシンに、ヨンハは苦笑して肩を叩いた。

 

 「俺たちがさ、先に受かって、成均館に入って、ソンジュン君たちのために場を作っておいてあげたらいいだろ。」

 

 成均館の一年、二年などあってないようなものだ、とヨンハは笑う。成均館は小科の成績などで優秀なものが選ばれて入る国の学問所だ。有名無実になりつつあるとも言われているのは、縁故と金で小科にも受からない者たちが、下斎生として存在しているからだが、だが、きちんとその才を認められて入っている儒生は優秀で、教える博士たちも国の秀才ぞろいなのは確かだった。入ったら入ったで派閥を問わない秀才たちとの競い合いが始まる。その中で抜きんでるのに年数は関係ない。本当の頭の良い者だけが生き残れるのだ。

 

 「すぐに追いつきますから。二人で。」

 

 「へえ、言うじゃないか。」

 

 ジェシンとヨンハは、ユンシク救出事件からこちら、老論の神童、箱入りのお坊ちゃんと言われていたソンジュンを見直していた。案外気が強く、誇り高く、そして正義感に満ちていた。口も悪い。言葉遣いでなく、はっきりと否定すべきことを言葉に出すところは、なかなかにこちらをたじろがせる面まで見えた。この挑発に、負けていられないのが、多少とはいえ年長の意地だ。何が何でも先輩として君臨してやる、とジェシンもヨンハも不敵に笑った。

 

 「ソンジュン様。ユンシクとお会いになったの?」

 

 ユニが茶を運んできて言った。ジェシンとヨンハ、そしてソンジュンに、と茶を配る順を必ず間違えないのがユニだった。案外こういうことにうるさいのが両班の家のしきたりで、立場が同じなら年齢が序列の基準になる。少年と侮るなかれ。彼らはれっきとした両班の子息で、こういうことにどうしても気が付いてしまう躾を受けてきていた。だから、全く茶の配膳ごときで気になることがないということは、ユニがきちんとその序列に従って茶を配っているという事だった。やはりユニは両班の令嬢なのだ。

 

 「はい。ユニ様もお会いになりたいでしょうが、ユンシク君はあまりユニ様に出歩いてほしくないようです。ユニ様がお困りのことはないか、気にしていました。」

 

 「私は叔父様と叔母様に良くしていただいて、居心地が良すぎるぐらいなので・・・。あの子は健勝でしたかしら。」

 

 「はい。顔色も良く、又背が伸びたようだと喜んでいました。」

 

 「ユニさん。今度シクに逢う日はいつだよ。俺が供をしてやるよ。」

 

 横からジェシンが口を出し、俺も俺も、とヨンハが手を挙げた。

 

 「まあ。ありがたいですけれど、お二人は小科が迫っているのに、お勉強しなければいけないでしょう?」

 

 「毎日してるよう、ユニお姉様!俺は市に向かって帰るからさ、わざわざ供ってわけでもなく一緒にユンシク君のところに向かえるよ!」

 

 「っていうかよう・・・ユニさん、シクを一泊泊めたらいいんじゃねえか?店主殿と女将さんに断りはいれないとダメだろうが・・・。そうしたらゆっくり話もできるし、気になることだって確かめられるだろ?」

 

 「そうだよねえ。どうして寄る辺があるのにそんなに無理して往復するんだろう?」

 

 ジェシンとヨンハが口々に言うのに、ユニはまるで驚くべきことを聞いたように目を丸くした。

 

 

 

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