メロディ その43 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 ユニの言葉にかぶせるようにして、ジェシンは鍵盤を軽くたたいた。この曲の前奏はちょっとばかり長い。ジャズピアニストとしてその演奏家人生を始めた歌手が作った曲だけある。ピアノの出番も多いのだ。だから余計にジェシンは弾き甲斐があった、というか弾いていてそのメロディに、リズムに乗れたのだろう。右手で軽く弾いたメロディに左手がリズムを刻む和音を合の手に入れる。そんな軽い出だしをユニのトークにかぶせると、ユニはくるりと振り向いて、また大きく笑みを広げた。

 

 一歩、二歩、三歩でピアノの傍。ジェシンの演奏を斜め前から覗き込むような場所で、ユニはピアノの端に軽く手を載せた。

 

 指をスライドさせる。発表されている公式な伴奏はここでバックにビックバンドの演奏が入ってくる。けれど、ピアノ一台、ジェシンの両手の10本の指だけでその代わりをしなければいけない。スコアには書いていないトレモロも、グリッサンドも、打音も、それこそアルペジオだってその日の気分で入れて、ユニの歌を盛り上げる想像を頭の中に繰り広げながら弾いてきた。今、目の前にユニが居る。ピアノの端に置いた指がリズムを刻んで、楽しそうに瞳が輝いている。トーク中に静かに、けれど軽やかに始めた前奏はここからどんどんクレッシェンド。そしてジェシンがぴん、と一音叩くと。

 

 A little bit of me and a whole lot of you

 

 ユニの明るい声が囁くようにアカペラでフロアに響く。そして和音を二つ。

 

 Add a dash of starlight and a dazen roses,too

 

 また合の手の和音をリズミカルに入れると、ジェシンの伴奏がユニの歌と共に走り出す。

 

 Then let it rise for a hundred years or two

 And that’s the recipe for making love

 

 ここでジェシンがくるりと音を回した。もう気分だ。気分としか言いようがなかった。歌は確かにジェシンの演奏が誘ったのかもしれない。だけど、今、誘われてるのは俺だ。そんな気にさせるユニのあどけなく聞こえるけれど、甘く香るそのあどけない色気がそのまま声になっているようで、ジェシンの耳に誘いをかけてきている。

 

 ほんの少しの僕とたくさんの君

 ちょっとだけ星の光をひとつかみと一ダースの薔薇を加えて

 そして100年か200年それを膨らませるんだ

 それが愛をこしらえるレシピ

 

 おとぎ話みたいな歌詞が次々にユニの唇からこぼれる。でも結構熱烈。ユニが歌うからかわいらしく聞こえるだけ。十分に甘いから砂糖なんかいらない、熱もたくさん、だからオーブンもいらない、なんてかわいらしく歌ったくせに。

 

 And add a dash of kisses tо make it all complete

 And that’s the recipe for making love

 

 キスをひとつかみ入れたら完璧、なんて少し首をかしげながら歌って、そしてそのままフロアに顔を向ける。へえ、そうかい、みたいなジェシンの軽いピアノの合の手を聴きながら。

 

 正しく出来たかは分かるよ

 今まで作ってきたものとは違うんだから

 もし上手く出来てなくてもわかるよ

 どうしてかって?だって君はそれをそれ以上に戻そうとは思わないでしょ

 

 低音で本来ならベースが叩く音を力強くたたくとAメロに戻る。

 

 歌を改めて聴き、ユニの声に酔いながらもジェシンはこの歌が自分にとって弾きやすかった理由が分かった。歌詞が韻をきれいに踏んでいるのだ。歌詞自体がリズムだった。スウィングだった。

 

 I did’nt get it from my groundmother’s book upon 

 the shelf

 I did’t get it from a magIcal and culinary elf

 No,a little birdie told me you can’t make

 it by yourself

 

 ほら、気持ちいい。ユニの紡ぐ言葉とジェシンの叩く音がシンクロしていく。

 

 それが愛を作るレシピ

 

 

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