貴方の香り その12 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による現代パラレル。

  ご注意ください。

 

 

 良くも悪くも目立つ。それは自覚がある。うっとりするようなハンサムな顔ではない。無愛想で無骨な顔だ。親父そっくりだ。けれど、その顔を皆整っているという。整っているのは、友人のヨンハの様な女に負けないぐらいの優男や、亡くなってしまったが、穏やかな微笑みの似合うジェシンの兄のような男の顔のことを言うはずだ。周りにそんな男が常にいたジェシンにとって、自分の顔は大層なものではない。

 

 だが、喋るようになった同じゼミの奴らや、多少顔見知りになった者達は、皆ジェシンをいい男だという。顔だけの事ではない。スタイル全体を総合してのことだ、とはそれこそ優男ナンバーワンのヨンハがジェシンに対して下した評価だ。確かに、テコンドーで鍛えた身体は、今でも欠かさないウエイトトレーニングで鍛え上がったままだし、背も平均よりかなり高い。みっともない格好ではないと思うが、褒められるほどではないと思っている。

 

 それこそ、好きになった女にはこの容姿がちっとも効果がなかったのだ。図書館にいる彼女を見つけて近くにいるとしたら、広大な砂漠や、人混みの激しい街中じゃあるまいし、向こうだってジェシンの事を認識していてもよさげなものだ。けれど、彼女は図書館にいたジェシンのことを全く認識していなかった様なのだ。やはり大したものじゃないのだ、自分の容姿は。うん。彼女と偽りとは言え、少しばかり近づいた関係になれたのは、自分の粘りと機転と偶然と運のおかげだ。そう、俺は頑張ったんだ。

 

 なのに、彼女と、キム・ユニと時々学内で一緒にいるようになったジェシンに、皆は興味を示した挙句、おそるおそる聞いてくる。やっぱりお前はかっこいいから女の子が寄ってくるんだなあ、うらやましいよ、なんてお伺いをたてるように。何言ってんだ、俺が告ったんだ、いい女だろ?そう言っておく。そうしたら、凄く驚いた顔をした後、曖昧な返事をしてそれ以上は聞いてはこない。何なんだ。俺がモテる訳ねえだろう。それもあんな大人しそうな真面目な女の子に。一番避けるはずだ、俺みたいな男は。多少成績がいいのは自分でも認めるが、悪い噂があるのは知っている。実際サボりにサボって一年留年したのは事実だし。その頃は女遊びはしないが、繁華街で時間つぶしをしていた時期もあった。クラブに出入りするヨンハにつき合ったこともある。くそ面白くもなかったが。テコンドー道場の先輩達と飲みに行ったりもしていた。身体がうずいたら、道場に行って稽古をしていたから、練習のあとに飯だ酒だと連れ回して貰ったのだ。それも悪評の一つとして残っている。みんないい人なのに。確かに大学に行っているような人たちばかりじゃない。高卒で働いている人もいるし、家業を継いでいる人もいた。もちろん大学生も会社員もいた。ただ総じて体格がいいのと声がでかいだけだ。見かけで判断するんじゃねえ。ついでに俺のこともな。

 

 ユニも友人達から質問攻めに遭っているらしい。少々ヨンハからの受け売りで智恵をつけておいてやったからどうにかいいのがれているようだから、何が問題なんだ、と聞いていると、ジェシンも同じ目にあっていると思っていたらしく、そう聞いてきた。だから、いい女だろ?と言っていると教えてやったらなぜか固まった。何でだ?お前は美人だし、真面目だしいい女じゃねえか。俺とは違って。誰も反論してこねえから、客観的に見てもお前は美人なんだ。いい女なんだよ。何がおかしい?

 

 「・・・そ・・・そんなこと・・・私・・・恥ずかしい・・・。」

 

 事実なのに?

 

 「・・・何だか・・・惚気てるバカップルみたいじゃないですかぁ・・・。」

 

 へ?だって。

 

 「そう見せなきゃならねえから、丁度いいじゃねえか。」

 

 図書館の外のベンチで、そんな話を、片やジェシンは少しにやつきながら、片やユニは真っ赤になって口をとがらせながら言い合っている様子は、ユニが言うとおりバカップルに見えているのだが、それには二人とも気づいていなかった。

 

 

 

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