貴方の香り その9 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による現代パラレル。

  ご注意ください。

 

 

 ユニと基礎ゼミや履修講義が重なっていてそこそこ仲よくしている友人達は驚いた。何しろ、ユニにお迎えが来たのだ。それも男子学生の。ちょっと有名な人。そして、一番驚いたのは、ユニがその迎えに驚かなかったことだ。少し挙動不審ではあったけれど。

 

 「ユニ、次の空き時間はまた図書館に行くの?」

 

 「うん。文芸評論の講義のレポートを進めておきたいの。」

 

 「あの講義、レポート多いって聞いたから履修しなかったんだ~。やっぱ大変?」

 

 「うん。結構毎回大変。字数多いし。でも文章を書く練習にはなるわね。」

 

 そんな話をした後、数人はお茶でもしよっか、などと喋りながら席を立ったとき、講義室の後ろの出入り口がざわついた。そしてそこに、文学部では見ることのない男の姿を見つけた。

 後ろの方に座っていたユニたちは、当然後ろの出入り口から出ようとそちらに身体を向けたところだった。だから、入ってきた男とバッチリ目が合ってしまったことは、避けようのない事態だった。

 

 法学部の成績優秀な不良学生、文学部でよそ事だと思っていた皆は、あり得ないものがそこにあるような目をしていたに違いない。そして、見なかったことにしようと視線をそらしていったのも、防衛本能のなせる技だ。静かに、目に留まらないように、どうにか横を通り過ぎよう、それが皆の共通認識だったはずなのだが。

 

 「・・・もう移動できるのかよ、ユニ?」

 

 彼の口から、自分の友人の名が聞こえたような気がして、皆視線を元に戻した。そしてその視線達は、当然自分たちの輪の中にいる友人の一人に集まる。

 

 「はい。今行こうとしていたから、迎えに来なくても大丈夫だったのに。」

 

 返事がありましたね~、と、まるで遠い国の出来事のように感想だけが頭の中にテロップのように流れたのも無理はないと自分でも思う。私の友人は、ユニは今なんて答えた?その前に、どうして何だかすごく知り合いっぽい?いや、それよりもスティディっぽいのはなぜ?私たち、何度かこの人がちょっと怖そうだなんて話、したことあるよね。ユニは・・・全然怖がってないよね?

 

 「じゃあ行くぜ。どうせレポートあんだろ?」

 

 「私はレポートをするけれど、ジェシン先輩はどうするの?」

 

 「ん?行く先は図書館だろうが。暇を潰す本はいくらでもあるだろ?」

 

 「あ、そうでした。」

 

 所々敬語で所々砕けた物言い。ちょっと、とつい肩を叩いてしまったのも無理はない、と次の日にユニを問い詰めた友人は開き直った。

 

 「ちょっと・・・ユニ・・・あんた、あのムン・ジェシン先輩と・・・何なの?」

 

 おう、と低いがからかいの混じる明るい声がユニの代わりに返事をしたから、みんなしてちょっとびくついたのなんの。

 

 「こいつが隠せって言うから、俺もこっちには初めて来たんだが、隠しておけねえ理由ができたんでな。もう解禁でいいだろうよ、キム・ユニ?ん?」

 

 呼ばれた本人に、ジェシンの言葉につられて目をやれば、居心地悪そうにモジモジしている姿がある。

 

 「俺とつき合ってるってことだよ。おい、図書館に行くんだろ?じゃあな。」

 

 最後の言葉は皆に放って、ジェシンはユニが片手に提げていたリュックをひょいと取り上げた。それを、自分が片方の肩に引っかけているバックパックの上に軽々と重ねて引っかけ、顎をしゃくるとさっさと歩き始める。

 

 「あ・・・待って!もう・・・じゃ、ユナはまた五限目に!」

 

 小さく手を振り、とことことジェシンの後を追ったユニを、皆でぽかんと見送った。その一瞬の間の後に急いで出入り口まで行き、通路に飛び出すと、ユニの後ろ姿がある。

 後を追うユニの前には、立ち止まっているジェシンの姿。ちゃんと顔をこちらに向けて、少し笑って待っている。追いついたユニが引っ張るリュックを奪われることなく、今度は隣にユニを引き連れて歩き出した。

 

 「・・・う~わ・・・彼氏だねえ・・・。」

 

 「うん・・・彼氏だわ。」

 

 唯一、五限目の講義が一緒なユナは、一斉に皆に振り向かれて、「聞いておくわよ。」と肩を竦めた。

 

 

 

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