1979年のアルバム(その25 Tusk / Fleetwood Mac)
世界のトップ・グループとなった Fleetwood Mac
1977年年間を通して売れ続けた Rumours(「噂」)
その余波は、1978年になってもまだ続き・・・
この年、グラミー賞のAlbum Of The Yearも受賞
メンバーは、ファミリーといえる Bob Welch等、多くのアーティストのレコーディングにも参加
特にStevie Nicks
Kenny LogginsとのWhenever I Call You "Friend"
それを筆頭に引っ張りだこといった感じでした。
1979年春ごろ来日していたJohn McVieから新作のタイトルは・・・
Tusk
・・・と発表されていました。
その年の夏も終わった頃、ラジオから・・・
騒がしい雑踏のような環境音の中に太鼓といった感じのドラムスが響き、ジャーンとギターと共に、暗い感じのコーラス・・・
「まるでお経みたい・・・」
・・・これが、Fleetwood Macの新曲 Tusk
徐々に盛り上がっていき、Mick Fleetwoodのドラム・ソロも
"Tusk"とのシャウトも繰り返され、フェイドアウト・・・
「ド肝を抜かれた」感じもしましたが、彼らのWorld Turningや、The Chainに共通したところもあるのでは
先ずこの Tuskが、全米シングル・チャートに登場したのでした。
Rumoursから2年8ヶ月
待ちに待った新譜は、なんと2枚組
さらにメンバーの写真
Lindsey Buckinghamが、髭を剃って、髪も短くなっている
綺麗サッパリ、Alain Delonのような2枚目になっていたのでした。
日本での表記は「牙(タスク)」
自分は行きつけのレコード店で予約・・・
発売前、NHK-FMの「軽音楽をあなたに」でも、ほぼ全曲オンエア・・・
それもエアチェックさせていただきました。
D.J.は、水野美紀さん
自分は、1977年に同番組での美紀さんのFleetwood Mac特集から、Lindsey、Stevie加入以前のFleetwood Macにも興味を持つようになったです。
FM雑誌に放送予定曲が記されていて、まずA面の5曲・・・
Stevieの歌がない・・・
A面最後の曲、「セーラ」ってあるけど、女性名だから、Lindseyの歌だろうな・・・そう思っていたら・・・
"Wait A Minute, Baby, Stay With Me A While~"
Stevie Nicksの歌声
彼女の単独のヴォーカル曲としては、いつ以来・・・
ただ感動したのでした。
番組最後で、美紀さんは、Tuskの歌詞を少し訳され、3人のシンガー・ソングライターもいいけど、あのMick Fleetwoodの力強いドラムスが、Fleetwood Macの魅力・・・とまとめられておられ、さすが、Fleetwood Macのことを分かっておられる、そう思ったのでした。・・・
ほぼ全曲エアチェックをしたものの、当然、日本盤「牙(タスク)」入荷と同時にレコード店に行きました。
予約特典は、メタルのステッカー、そしてレコード帯には、早くも「来日記念盤」と明記されていたのでした。
レコーディングは、1978年~1979年
カリフォルニア州、ロスアンゼルスの Thre Village Recorder
当時、最新のデジタル・レコーディング
それと Lindsey Buckinghamの自宅録音
メンバーは・・・
Lindsey Buckinghamヴォーカル、ギター、キーボード、ベース、ドラムス、パーカッション
Stevie Nicksヴォーカル
Christine McVieヴォーカル、キーボード、ピアノ、オルガン
John McVieベース
Mick Fleetwoodドラムス、パーカッション
エンジニアリングは、Mac ファミリーといえる、Richard Dashut、Ken Caillat
アシスタント・エンジニアリングは、Rich Feldman、Hernan Rojas
マスタリングは、Capitol Masteringにて、Ken Perry
プロデュースは、Fleetwood Mac、Richard Dashut、Ken Caillat、そして、Lindsey Buckingham
あと Special Thanks To Lindsey Buckinghamとクレジットされていました。・・・
アルバム・ジャケット、アート・ディレクション、デザインは、Vigon Nahas Vigon
写真撮影は、あの Norman Seeff
Peter Beard、Jayme Odgersとなっていました。・・・
凝った写真が多いですが、表ジャケットは、Mickの足に犬が噛みついている・・・
そんなシンプルな写真です。・・・
「我々のサウンドは、虎が牙を剥いて突進してくるようなものだ」
当時の Mick Fleetwoodの言葉です。・・・
レコード1枚目A面、1曲目、スローなリラックスしたムードで始まるのは・・・
Over And Over、Christine McVieの作品で、リード・ヴォーカル
どことなくあのAlbatrossを思わせるところも、但し歌入り・・・
Christineの歌には説得力があり、タイトル通り、何回も聴くと味が出てきます。Stevieのコーラスが印象的、Mickのドラムスはパワフルです。
2曲目、エフェクターの効かせたベース音が響き・・・
The Ledge、Lindesy Buckinghamの作品で、リード・ヴォーカル
終始 Stevieがコーラスを付け、前作の I Don't Want To Knowを思わせ・・・
実験的な音作りですが、ポップな一面も感じます。
3曲目、ドラムスから、ポップなメロディへ・・・
Think About Me、Christine McVieの作品で、リード・ヴォーカル
ようやく登場した軽快な Fleetwood Macらしいナンバー
Mickはヴィブラフォンもプレイ
アルバムから、第3弾シングルとしてリリース
全米 No.20、全米AC No.39、カナダ No.24
シングル・リリースの際は、リミックスされていました。・・・
4曲目、シンプルなリズムとアコースティックなサウンドをバックにる・・・
Save Me A Place、Lindsey Buckinghamの作品で、リード・ヴォーカル
これも実験的なナンバーですが、サビのコーラス部分など・・・
Fleetwood Macならではです。
5曲目、ピアノとアコースティック・ギターの美しいイントロから・・・
Sara、そう、Stevie Nicksの作品で、リード・ヴォーカル
魔性の女性、Stevieの世界に引きずり込まれていくようなナンバー
バックアップする、Lindsey、Christineの歌も美しく・・・
まさに「ファンタスティック・マック」・・・
アルバムから第2弾シングル、短く編集されてリリース
全米No.7、全米AC No.13、全英 No.37、カナダ No.12、カナダAC No.3、オーストラリア No.11、ニュージーランド No.12、南アフリカ No.18、ベルギー No.14、西ドイツ No.44、フランス No.31、オランダ No.14、世界中で大ヒット
1980年の全米年間チャートでは、No.89
本作から最大のヒット曲となりました。
尚、"Sara"とは、Stevieが1番好きな女性の名前とのことでした。・・・
レコード1枚目B面、パワフルなドラムスからピアノも入り・・・
What Makes You Think You're The One
Lindsey Buckinghamの作品で、リード・ヴォーカル
邦題は「何が貴女を」、ようやく従来のLindseyらしいナンバーが登場
シャウト気味に歌い、John Lennonを思わせるところも
ギターのバイオリン奏法も効果的に、
シングル・ヒット向きとも思いましたが・・・ここにStevieは入っていないようです。
2曲目、ギターのピッキングから静かに始まる・・・
Storms、Stevie Nicksの作品で、リード・ヴォーカル
邦題は「夜ごとの嵐」、彼女の Landslideを思わせるところも・・・
やはり彼女のルーツは、カントリー・ミュージック
ここでも、メンバーのコーラスが美しく響きます。・・・
3曲目、いきなり歌から・・・
That's All For Everyone、Lindesy Buckinghamの作品でリード・ヴォーカル
ギターをバックに、同じフレーズの繰り返し・・・
ヴィブラフォンも入り、子守歌のようにも・・・
メンバーのコーラスは美しく、特にStevieの歌が入るところは・・・
彼らの前身、Buckingham Nicksを思わせます。・・・
4曲目、こちらもいきなり歌からパワフルに・・・
Not That Funny、Lindesy Buckinghamの作品で、リード・ヴォーカル
パンク・ムーブメントに対抗した作品とのこと
実験的な音でシンプルなロック・ナンバー
後半ではギター・・・
欧州等では、アルバムから第3弾シングルとしてリリースされました。
5曲目、バスドラムのビートにギターが入って・・・
Sister Of The Moon、Stevie Nicksの作品で、リード・ヴォーカル
静かに始まり、徐々に盛り上がっていく・・・
アルバム中、1番、彼女らしいナンバー
Lindseyの泣きのギターも聴かれます。
邦題は「月世界の娘」、アルバムから第4弾シングル、全米No.84
尚、このサイドには、Christine McVieの作品がありませんでした。
レコード2枚目A面(C面)1曲目、軽快なキーボード音に乗って・・・
Angel、Stevie Nicksの作品で、リード・ヴォーカル
彼女としては珍しくシンプルなロック・ナンバーですが・・・
後年の彼女のソロとしての活動を示唆するナンバー
シングル・リリースされた国もあったよう、尚、Heroes Are Hard To Findに、Bob Welch作の同名異曲Angelが収録されていました。
2曲目、ギターのカッティングで、シンプルに始まる・・・
That's Enough For Me、Lindesy Buckinghamの作品で、リード・ヴォーカル
カントリー風で軽快に、邦題は「それでいいの」でした。
3曲目、ドラムスのカウント音から、静かにキーボード音が入って・・・
Brown Eyes、Christine McVieの作品、彼女らしいメロディアスなナンバー
勿論、リード・ヴォーカル、邦題は「茶色の瞳」
Lindsey、Stevieのコーラスも印象的ですが・・・どちらかといえば、彼らが参加する前のChristineの作品に近い感じ・・・
ノン・クレジットですが、Peter Greenが参加
因みにChristineは、Peterとは入れ替わりに参加・・・
随所に入るMickのパワフルなドラムスが印象的です。・・・
続くように、静かにギターがフェイドインして4曲目は・・・
Never Make Me Cry、Christine McVieの作品で、リード・ヴォーカル
静かにじっくり聴かせるナンバー、前作のSongbirdを思わせます。
当時、Christine自身、1番好きな曲と言っていました。・・・
5曲目、一転、軽快なカッティングで始まる・・・
I Know I'm Not Wrong、Lindesy Buckinghamの作品で、リード・ヴォーカル
Not That Funny同様、パンク・ムーブメントに対抗したナンバー
キーボードも担当して、ノリの良さからも彼の自信が伺えます。
最後はギター・ソロも入ってフィニッシュ
個人的にはLindseyの曲で最も好きな曲の1つ
ソロでのヒット曲Troubleにも繋がるようなナンバー
邦題は、短縮形で「アイム・ノット・ロング」でした。
レコード2枚目B面(D面)1曲目、アコースティック・ギターとパーカッションで・・・
Honey Hi、Christine McVieの作品で、リード・ヴォーカル
トロピカルなムードで、ポップなナンバー
Lindesy、Stevieのコーラスも、リラックスしたムードを盛り上げます。・・・
2曲目、ピアノとアコースティック・ギターが静かに・・・
Beautiful Child、Stevie Nicksの作品で、リード・ヴォーカル
ベースの音が響き、彼女の歌はより叙情的に・・・
Lindseyが、"Your Hands, Held Mine So Few Hours~"と歌い・・・
Christineが、"I Fell Into Love~"と入るところは最高
最後はStevieの歌に、Christineが、"Hold You Again~
そしてフェイドアウト・・・
個人的には、彼女の歌で1番好きです。
尚、この年は国際児童年ということで、協賛曲にもなりました。・・・
3曲目、ややリラックスしたムードで・・・
Walk A Thin Line、Lindsey Buckinghamの作品で、リード・ヴォーカル
ミディアム・テンポで、コーラス部分が印象的
このアルバムの彼の曲では、ノーマルな曲といえるでしょう。・・・
尚、Mick Fleetwoodがお気に入り
彼のソロ・アルバム The Visitorでも取り上げています。
(そこでの、リード・ヴォーカルは、George Hawkinsです。)
4曲目、ここで、タイトル曲・・・
Tusk、Lindsey Buckinghamの作品で、リード・ヴォーカル
・・・ですが、3人で歌い始め、前述のように最初は暗いムード・・・
ロスアンゼルスの Dodger Stadiumでレコーディング
USC Trojan Marching Bandが、ホーンとパーカッションで参加
臨場感に溢れています。
前述の通り、先行シングルで、全米No.8
全英No.6、カナダ No.5、オーストラリア No.3、ニュージーランド No.4、オーストリア No.6、西ドイツ No.7、ベルギー No.26、アイルランド No.15、オランダ No.10・・・異色なナンバーとはいえ、世界中で大ヒット
1980年の全米年間チャートでは、No.94となっています。・・・
ドラムスのスティックのカウントが響き、フェイドイン・・・5曲目は・・・
Never Forget、Christine McVieの作品で、リード・ヴォーカル
彼女ならではのポップなメロディで、美しい夜空の光景が目に浮かぶよう・・・
Stevie、Lindseyのコーラスも入り、色々な楽曲が登場したこの作品も・・・
全20曲、最後は明るいムードで、フィナーレ、邦題は「思い出の一夜」でした。・・・
CDの時代となり、最初は、Saraが、シングル・ヴァージョンとなって、1枚のCDとしてリリースされていました。
2004年に、リマスター盤が、2枚組のDeluxe Editionとしてリリース
1枚目は、Saraもオリジナルの長さとなった、Tuskのリマスター盤
2枚目は、Tusk収録曲のデモ・ヴァージョン、アウトテイク、オルタナティブ・ヴァージョン、未発表曲、シングル・ヴァージョン等が、ほぼTuskの曲順に準じて収録されていました。
2015年には、新しくリマスター盤がリリース
またこのリマスター盤を含む、3枚組のExpanded Editionも登場
さらには・・・Tusk Tour Live I & IIの2枚を加えたCD5枚、DVD付きという豪華な Deluxe Rditionもリリースされました。・・・
ここに登場した通り、全米最高位No.4
実は、Rumoursの次だけに、初登場No.1
それを期待したのですが・・・残念・・・
但し全英 No.1、オーストラリア No.2、ニュージーランド No.1、オーストリア No.4、オランダ No.3、フランス No.3、西ドイツ No.3、ノルウェー No.6、スウェーデン No.8、スペイン No.18、カナダ No.11・・・
日本でもオリコン・チャート No.27、世界中でベストセラーに・・・
全米でも1980年の年間アルバム・チャートでは、No.20
ダブル・プラチナ・ディスク獲得
Rumoursには遠く及ばずとも、それなりのセールスは記録しています。
全20曲中、Lindsey9曲、Christine6曲、Stevie5曲と今回は共作曲がないのですが・・・
それぞれの曲で、他のメンバーが素晴らしいコーラス・ハーモニーを聴かせ・・・
これが、唯一無二、最強のFleetwood Macと思っています。
日本でも賛否両論となった、Tusk
発売の少し後に、レコード帯の通り、1980年2月の来日公演
しかも全国縦断公演が発表されたのでした。・・・