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高をくくる

   

この日はなんだかせかせかしていた。

大学に行き、派遣登録に向かい、

日曜日のイベントで受け取るビラを受け取り、高い寿司を奢ってもらった。

 

派遣登録に向かったのはよかったが、

よくよくネットで調べるとすこぶる評判の悪い派遣会社だった。

その内容に間違いはなかった。

むしろやり口が汚いというか見え透いているというか。

どうもコールセンターのアルバイトに誘導するような流れが派遣会社にはあるらしい。ああ、まんまとのせられたようだ。少し苛立って早めに全てを終わらせた。

 

ビラ520枚を受け取った。

高校生や社会人にも受け渡されるであろうビラである。

これが団体の明るい未来につながってくれれば良いのだが……。

 

その後父親と出会う。

高い寿司を奢ってもらう。350円の中トロは噛むことが出来なかった。口の中で溶けたのだ。ああ、恐ろしい。父親の財力は読めない。

 

この日、僕は新しいパソコンを手にした。没個性的なシルバーだが、性能が格段に良い。本当は黒がよかったが、それさえ許したくなるような性能の良さである。もうすべて許そう。彼とともにこの先の未来を歩むことになるだろう。

 

 

ラーニングカフェというのは小さい小さいワークショップみたいなものである。まぁ、ワークショップという言葉を出すと、正直「じゃあワークショップってなんだ?」という疑問も出てくるのだが、それはもう各自にお任せしよう。

 

特に何の気なしにラーニングカフェをやることになった。

そして4人班が構成されてから早2・3か月。

遂に架橋となっていた。しかしながら、案外文系の大学生というのはPPTを使うこともないらしい。割と簡単な講座を試しにクラス内で出したところ面白いリアクションをしてくれた。

 

授業内の変なあだ名で呼ばれる。

しかし、この日はとてもコミュ障だった。

声が妙な震え方をしていた。どうしてだろう。

どこか調子がおかしかったのかもしれない。

自信は人の見え方を変える。もっと自分に自信を持ってくれよ。じゃないとやっていけない。きっとやっていけないよ。


聴覚障害のある人と関わり、手話を学ぶ僕がなんだかよくぶちあたるのは「ろう」という言葉だった。

言葉の定義のひとつに、聴覚障害100db以上で「ろう」というものがある。
しかしながら、それとは全く別に「聞こえないという文化」「手話を母語とすること」など、固有のアイデンティティを持って「ろう」という言葉を用いる人もいる。

「対応手話はろうには分からない」
「ろうの表現は豊かだ」

たまにそっちのろうの人が言う。
しかしながら、聴覚障害のろう、アイデンティティのろう、どちらも読みと手話が同じである。

大体この認識もあっているのか分からない。ややこしい。
英語ではDAEF、daefという綴りの違いがあると言う。

ろうではないから、聴覚障害でないとか、そういうことでもない。この難しい世界。なんというか、そう、ややこしい。


昔も代表だが、今も代表だ。会議はやる。出来る限りのことをやる。会議の無駄な数も時間も要らない。最小限で最大限運営してみせる。

そんな努力は決して見せなくても良いものだったが、僕はどうしても見せようとしてしまう。こぼれ落とす。

「僕はこんなすごいことしてるんだぜ」

といわんばかり。

本当はこの団体の代表は僕じゃない。望まれていたのは僕じゃないと思うと認められたくて仕方なかった。


ひとつしたの後輩とは、反りが合わなかったようで、彼らは僕を精神的に追い出してくれた。苦しみを与えてくれた。なんの生産性のない苦しみだった。

ふたつしたの後輩は、僕の誇りだった。自分の代表時代の運営を純粋に見つめ、付いてきてくれた人達のはずだった。でも、彼らは独立した。そこに僕の意思は残っていなかったように思う。

みっつしたの後輩となれば、もう1回生と4回生だった。けれど、彼らは4年間でもっとも明るい世代なのかもしれない。

とある後輩と共に帰った夜道。学園祭の発表をペアとして支えさせてもらった。結果的には彼女の才能任せになってしまったところも多かったけれど、精神的な支えくらいにはなれたようだ。

もっと話したいと言ってくれる後輩に、喜ぶ僕。そうか、多分、僕は自分を受け入れてくれる人に対して好感を抱くのだ。敵対も正しさも真面目さも要らない。ただ受け入れて欲しい。そんな寂しい奴の心を浮き彫りにされた気持ちだ。

変な後輩と変な外国人の後輩と、ペアとして頑張ってくれた後輩。僕は卒業してしまう。嫌だな。もっと彼らの成長が見たかった。一緒に学園祭がしたかった。もう終わりか。僕は。



週末のイベントの為の会議だった。
地下鉄の終点が最寄り駅の僕だが、そこから終点へむかう。遠い。終点から終点への道のり。

今回は80人くらいの前での司会がある。本当は300人くらいの前でやるほうをしたかったのだが、所詮僕の限界か。

しかしながら久しぶりにダメ出しがあった。「波がある」とのことだ。

最近意図的に波を作っている僕としてはなかなか難しいことである。なぜ波を作っているかといえば……いや、そもそも波ではなく緩急をつけているのだが、単調なものはなんでもつまらないからである。

さて、僕はどうすべきだろうか?
本番は週末だ。このままでいいのか。



なんと3年ぶりにユニバーサルスタジオジャパンにいった。貧困な僕は同伴者として半額で入ることになった。
男女8人。と聞けばなんだか青春風味だが、そこまで理想的なものではなかった。キラキラしていないからだ。

○スパイダーマン
朝早かっただけにスムーズに入ることが……出来たらしいが、僕にはとてもそうは思えなかった。スパイダーマンは複数の敵キャラ相手に奮闘した。
3D眼鏡が随分とかっこよくなっていたが、3D感はあまり感じなかった。

スペースファンタジーザライド
初めて乗るもの。まず持ち物をロッカーにいれなければならないということで驚く。

太陽が迫り来る地球を……云々という設定。待機中の映像が何故だか退廃的で怖い。休日の減少、という妙にリアル感を出したニュースも心に刺さった。
中に入っていくとそこは宇宙であり、ひたすらナビゲーター的な二人が躍り狂っていた。

地球の危機ではないのか?

設定を聞き流していたので、彼らが躍り狂っていたのにも理由があるのかもしれない。

乗ってみるとちょっとした絶叫系で振り回された。ああ、3年ぶりに振り回される身体。お腹の感触。宇宙をテーマにした空間を漂うのは結構気持ちよかった。

○ジェラシックパーク
ずっと怖がっていて乗らなかったアトラクションだが、まぁ、この際だからと乗ってみた。

設定的には良い感じの施設を漂っていたはずなのに、危ないところに入っちゃった、ということだろうか。

登っていく……。
「来るぞーー!Tレックス!!」
恐竜好きの同回生が叫ぶ。

しかし……なにも来ないまま船は落ちていった。故障なのか? 恐竜好きは不満の声を漏らしまくる。

そして僕は全身を濡らした。
通いなれた同回生いわく、「初めて見る水柱の量だった」そうだ。

○ハリーポッター
これまでにない長蛇の列。相当な時間待ち続けた末に乗る。

ハリーポッターがとりあえず頑張って助けてくれる話。今まで何度か映画を見ていたが、まさかディメンターがあんなにでかいとは思わなかった。たぶんあれでは僕は戦えないだろう。

ハリーポッターの世界はとても頑張っていたように思える。

○ユニオン
日も暮れてきた。更に長蛇の列。ユニオンは女性に人気のようだ。寒くなってきた。

「ユニオン可愛い」
「可愛い可愛い」

「可愛い」……とは一体何なのか。女性の可愛いと、男性の可愛いは違うというが、なんというか可愛いの連呼に腹が立ってきた。

意外に設定をおっていくとピックアップされているのは悪役?主人?の家族であってユニオンはそこに直接関わっているわけではないらしかった。

アトラクションの内容事態は引き込まれて楽しいものだったが、130分の寒さに見合うかどうかは微妙である。

大学生といえば……。
こういう問いで返ってくるだろうひとつを体験できてよかった。高校三年生の受験を終えたころの僕は、こんな事態を想像していただろうか?
面白かったよ。

   

 

僕が所属しているサークルは

学生をスカウトし、団体スタッフとなってもらうことで

その活動を代々維持している。

 

正直こんなあやふやなやり方で今まで維持してきたのは

素直に凄いと思うのだが、思えば自分も3年間もの間スタッフを務めている。

 

そして、ここでの経験は確かに自分に大いなる経験と変革をもたらした。

反発や喧嘩の記憶も多かったが……

 

こんな団体ながらあるコミュニティではかなり強い知名度を持つし、

割と人間的にスキルの高い人々が集まっている(自分以外)。

そんなわけで僕としては後輩にこの団体を継いでほしかった。

 

僕がかつて最も大切にしていた団体からも4名の候補者が出たが、

全て断られてしまっていた。

その度に胸が傷ついたものだった。

 

5人目を誘おうとしていた。

彼女は今この団体の中では確かに非の打ち所が無いほどに

僕がおすすめしたいと思える人だった。

 

去年僕が跡継ぎにしたいと思っていた彼は

あまりにも完成されていた。

しかし彼女には完成という文字は似つかわしくなかった。

成長段階と言う言葉は素晴らしいものに思える。

先輩としては後輩の成長過程を見るのは何よりも喜ばしいのだから。

 

彼女がどう選択をするのかはわからない。

ただ残していくものが欲しいのだ。

その場から居なくなる僕が、居なくなった後に

居ても居なくても同じように扱われるのは

嫌だったのだ。

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