Artist 011 - 我々はゴミ箱の中に咲く花だ / Public Image Ltd. | 午前零時零分零秒に発信するアンチ文学

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* 関連文書 *
A) Artist 002 - 女王陛下なんかクソ食らえ / Sex Pistols



- 1985年アメリカ -

おい、オマエ。そこのライトを下げろ!

眩しいんだよ。折角インタビューを受けてやろうってのにこれじゃ満足に出来やしねえ。
それで誰が取材するんだ? 何?オマエか…そうか。俺様はライドン。

ジョン・ライドンだ。

昔のことを穿り返すのは俺の性に合わねえが、今日だけは特別サービスだ。
ってか、おい!その置物に手を触れるな!ワイフがいちいちうるせえんだ、分かったか?
…そうか、分かったか。。。じゃ、さっさとインタビューを始めろ!

あぁ何だってぇ? また懲りずにセックス・ピストルズか。。。

俺たちを見た目で判断するな。ピストルズは文学的なバンドだったし、俺もそうだ。歌詞の意図するところも全然違うところにあったんだ。それが、あのクソったれマルコムのせいで、俺の「ジョニー・ロットン」というイメージはオマエらマスコミによって勝手に作られ、俺たちの音楽は商売道具になり下がった。ありゃパンクが犯した最大の罪だ。

俺たちピストルズはツアーの最中が崩壊寸前だった。

みんなテメーのことだけで精一杯だったんだ。俺たちは時間を追われる日々だった。こんなことをやりに来たんじゃねえ。これ以上、マルコムの好きにさせてたまるか。

ロックは死んだ!ありゃ病気だ。長続きし過ぎたんだよ。

後は記者のオマエらが知ってるだろう。ピストルズは解散し、俺は休息がてらにジャマイカで羽根を伸ばした。レゲエが好きでな、ダチのジャー・ウォブルもそうだった。その時からだ、次のユニット「パブリック・イメージ・リミテッド」(PIL)を作ろうと考えてたのは。

今度は俺のやりたいことだけをやる。

その為には、キース・レヴィン(元クラッシュのギタリスト)の頭脳が必要だった。俺は早速ウォブルとキースに声を掛けた。それで、奴ら一発で乗ってきやがったんだ。

何?音楽的にはピストルズの延長線上だって?
何でそうなるんだ?勘弁してくれよ。だが、その前にメンバー紹介させろ。
1978年、俺たちPILはロンドンで結成した4人組だ!

ジョン・ライドン(V)
キース・レヴィン(G)
ジャー・ウォブル(B)
マーティン・アトキンス(D)

パンクとはファッションでも何でもねえ。
常に「自分らしくあれ」って意味だ。

だから、みんな自分の音を持つべきなんだ。
んで、何で俺がピストルズに拘らねばならねえんだ?
ありゃマルコムのイメージなんだぜ。

俺様の音楽にジャンルなど必要ねえ。
敢えてジャンルをつけるなら、それは「PIL」でしかない。

だから分かっている奴は、ちゃんと分かっているんだ。

俺たちのデビューアルバム「Public Image」はダブ処理されたメタリックでへヴィなサウンドだ。ロックの新しい形なんていう気は更々ねえが、単に身体で体感する音だ。

何?60年代風のポップ・ミュージックにする気は無かったのか?ってか。
オマエら、それをこの俺様に質問してどうするんだ?

ごちゃごちゃ抜かす前に「メタル・ボックス」でも聴きやがれ!

何?メタル・ボックスを知らねえのか?
ちっ!これだからマスコミは困るんだ。
今から教えてやるからよく聞いとけよ。

1980年の2ndアルバム「Second Edition」の限定レコードだ。文字通り金属の缶ケースに45回転用のLPが3枚入れてあるんだが、当然ながら制作にも金が掛かっている。材料の至るところに高級素材を使ってるから採算が取れねえんだよ。売れるほど赤字になる。

んなもんだから、制作しようと思えば誰かが自腹を切らねばならねえ。
その金…どこから出てると思ってんだ?

これは俺様の出血大サービスなんだよ。熱心なファンのためにな。
だからケースの中にメッセージを入れておいた。

いいステレオで聴いてくれ!

俺はオーディオにも煩くてな。今や音楽メディアはアナログからCDに変わろうとしているけど、いい音で聴きたいのならアナログが一番なんだ。しかも、いいステレオに聴いてこそ、いい音が出る。折角だからアルバムの中身も説明もしてやろう。

音楽的には、前作よりもダブ処理に工夫を重ねて数段グレードアップしてある。うねりのあるドラム、地を這うようなベース、三味線に似た耳を突き抜けるような高音かつヒステリックなギター、そんなサウンドの海中をこの俺様が自由奔放に歌うのさ。

正確には「Second Edition」は後からリリースしたから
メタル・ボックスよりも収録曲は多くなっている。

だからよ、こんな時代にポップ・ミュージックなんか歌ってられるか。
とことん音を追求してやるんだ。

だが、ここでウォブルから突然の脱退だ。
どうも俺のスタンスと合わねえんだとよ。

あん時は本当に参ったぜ。

だから翌年の3rdアルバム「Frowers Of Romance」には相当入れ込んだ。今、思ってもこれがPILとしてのベストアルバムだ。ベースは敢えて採用しなかった。

そうか、オマエらも聴いたことがあるのか。
何?いきなりお経から始まるだって?
いいか、よく聞けよ。

これらの曲は元々教会で聴かれていた古典的な音楽だったんだ。ロックと正反対な音を目指したつもりだ。この時のキースはいい仕事をしていた。重くてうねりのあるリズム、中東的ともアフリカンとも取れる神秘な音は滅多にないぜ。そういえば、サポートメンバーにひとり女が混じっていたかな。まあ、けっきょく彼女は何もしなかったがなあ。

この後に、日本へ行ったことがある。
オマエら、あそこの地下鉄はいいぞ。
駅が信じられないぐらい綺麗でなあ。

ロンドンなんかとは比べ物にならねえ。胡坐をかいて弁当が食えるぐらい綺麗なんだよ。
実は、そこの東京でライブ収録したアルバムも出してるから、買って聴けよ。

そんでもって、次は俺たちの頭脳だったキースが脱退しやがった。

4枚目のアルバムをレコーディング中に意見が分かれたからだ。ここは、お互いに譲らなかった。奴は、脱退してからというものの、制作途中のナンバーを独自にアレンジし、俺の許可もなしに勝手にPIL名義で「Commercial Zone」としてリリースしやがったんだ。だから、店頭によっては運よくそのアルバムに出会えるかも知れないが、俺としてはお勧めしねえ。

そんなことがあったから俺とアトキンスは、もう一度練り直してレコーディングをやり直した。タイトルも「This Is What You Want... This Is What You Get」に変更した。2曲目「This Is Not A Lovesong」でも聴いてみやがれ。笑っちゃうぜ。



それで何でアメリカに住んでいるのかって?

ピストルズ時代に歌った歌詞が国家の逆鱗に触れた。反イギリスの象徴として、官僚どもが俺を危険人物だと判断したからだ。おまけに愛国主義者からは狙われ、ナイフで左手を貫通された。お陰でこのザマよ。今でも左手の拳が握れねえ。それでも俺はロンドンに居たかったが、国家が許さなかった。仕方なく、このアメリカで永住権を得たって訳よ。

俺たちがピストルズで歌ったことは、国家に対する非難でも政治批判でもねえ。奴らが作り上げたクソみたいな体制に踏みつけにされ、犬に成り下がった労働者階級の馬鹿野郎共に言いたかったんだ。「オマエらこのままでいいのか?」ってな。

だから、俺はパンクの帝王でも救世主でも天使でもねえ。
どこまでいっても「ジョン・ライドン」でしかないんだ。

第一、今のパンクヘビー・メタル
アイツら互いに、いがみ合ってるようだけど一体何が違うんだ?
俺には、どちらも同じにしか見えねえぜ。

俺様の真似をして、おんなじようなファッションをしたり
髪型を変えたり、ギャーギャー騒いでいる奴らを見てると反吐がでるぜ。
あんなものパンクじゃねえ。

パンクの意味するところは常に「自分らしくあれ」だ。



そういや、あれからアトキンスにも脱退されたんだ。
おまけにキースは、以降音楽活動らしきことはしてねえ。

だから「PIL=俺様自身」って事がハッキリした訳よ。
今後は、活動の度にメンバー招聘になるだろうなあ。

それでも俺は人生を楽しんでいる。
実は、オマエらがここに来た理由も知ってんだぜ。
今度リリースされる5thアルバム「Album」のことだろ。
来年(1986年)2月にリリースだ。

今ここで聴かしてやってもいいぜ。今回のテーマは原点回帰だ。
ピストルズの音楽を贅沢にしたみたいな感じだな。

メンバーは以下の通りだ。

ジョン・ライドン(V)
スティーヴ・ヴァイ(G)
坂本 龍一(K)
ビズ・ラズウェル(B)
ジンジャー・ベイカー(D)

どうだ?錚々たる顔ぶれだろう。

日本に行った時、リュウイチとも話をした。
奴にフェアライトを使わせたら右に出る者はいねえ。
このアルバムでも遺憾なく発揮されてるぜ。

ただ、レコーディングには骨が折れた。
ラズウェルの奴がプロデュースしたんだが、アイツ煩くてな。
流石の俺様も、レッスンを受けるように歌い直したって訳よ。

それでも今思えば楽しかったぜ。
未体験なことも多かったからな。

だから、記者のオマエらもレコード買えよ。

もしも、この中に俺様のことを知らねえ奴等がいたら
下の動画でも見ておけ。

■タイトル曲 / 収録アルバム

1) Annalisa / Public Image
2) Swan Lake / Second Edition
3) Flowers of Romance / Flowers of Romance
4A) Solitaire / This Is What You Want... This Is What You Get
4B) Young Brit / Commercial Zone
5) F.F.F. / Album
6) The Body / Happy?
7) Disappointed / 9










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