快晴の青空の下…
オープンカーにでも乗りながら夏風に吹かれ、海岸線を走ってみたい。
そんな季節になってきた。
折角だから音楽でもかけてみたい。
しかし、車内にCDはあるものの、これといって似合う曲はない。
ところがあるんだな、コレが。
この季節にとっておきのやつが。
昔のバンドでもいいのならかけてやるよ。
そのように呟く君…
1980年、イングランドはケント州で結成された若い男性6人組
「ヘアカット100」(ヘアカット・ワン・ハンドレッド)である。
メンバーは以下の通り…
ニック・ヘイワード(V・G)
グラハム・ジョーンズ (G)
フィル・スミス(S)
レス・ネムス(B)
マーク・フォックス(P・V)
レアー・カニンガム(D)
フロントマンのニック・ヘイワードを筆頭にルックスが良く
見た目は、まるで英国のジャニーズという印象を受ける。
だが、バンドとしての実力は折り紙つきだ。
この時期、黒人音楽であるファンクにラテンやカリプソの要素を混入してトロピカルな音に仕上げる「ファンカラティーナ」というカテゴリーの音楽が流行になったが、演奏出来るアーティストは数少ない。
同ジャンルを演奏している他バンドでも、パッと思い浮かぶのは「モダン・ロマンス」、「ブルー・ロンド・ア・ラ・ターク」、「キッド・クレオール&ザ・ココナッツ」ぐらいのもので、音楽的には、やはりヘアカット100が三馬身以上リードしている。
パーカッションを混入したラテン的なリズム、アコースティックなギター、所々で響き渡るサックス、ニック・ヘイワードの清涼感のある歌声、それらが見事に合わさり、とても爽やかでゴキゲンなサウンドが展開されている。と思えば、メロディにどこか夏の終わりを思い起こさせるような切なさまで同居している。まさしく「青春の音楽」という感じだ。
1981年のデビューシングル「フェバリット・シャツ」は、いきなり全英4位となり、一躍注目を浴びた。後、1982年に発表されたデビューアルバム「ペリカン・ウエスト」も全英2位。
このアルバムは、世界の音楽史上を紐解いても、類まれない傑作といっていいだろう。
たとえ12曲全曲シングルカットしたとしても売り上げが見込めそうだし、完成度も非常に高い素晴らしいアルバムである。
因みに、シングルになったのは、先程の「フェバリット・シャツ」(全英4位)をはじめ、「渚のラヴ・プラス・ワン」(全英3位)、「ファンタスティック・デイ」(全英9位)、「ノーバディーズ・フール」(全英9位)の計4枚で、そのどれもが大ヒット。
バンドは、デビュー早々に頂点まで登りつめ
マンチェスターの「グラナダTV」など、各音楽番組から引っ張りだこになった。
何もかもが順風満帆だったヘアカット100…
しかし、ここでバンドの顔であり頭脳でもあるニック・ヘイワードが突然の脱退!
これから発表されるシングル曲を巡ってニックと他のメンバー間で権利問題が発生したのか、或いは、レコード会社とひと悶着あったのかどうか真相は定かではないが、アリスタはバンドとの契約を解除。改めて、ニック・ヘイワード個人と契約を締結した。
そしてニックは、1983年にソロデビュー。デビューアルバム「風のミラクル」(全英10位)は、ヘアカット100時代よりも音楽的にブラック・ミュージック寄りになっている。
一方で残されたメンバーは、1984年にポリドールへ移籍し、そのままヘアカット100名義で2ndアルバム「ペイント・アンド・ペイント」を発表。音楽的にはよりエネルギッシュになっているし爽やかさも健在なのだが、なぜかメロディが後に残らない。早い話が「特徴がない」といえばそれまでだろうか。セールス的にも振るわなかった。
尚、このアルバムは廃盤になっているので、入手は困難を極める。
シングルカットは「プライム・タイム」(全英46位)、「ソー・タイアード」(全英94位)、「トゥー・アップ、トゥー・ダウン」の3曲。バンドは自然消滅した。
これらを思えば、やはりニック・ヘイワードを含めた全員が揃ってこそ初めて「ヘアカット100」になるのだろうなと改めて感じさせてくれる。
2004年、熱心なファンの期待に応えたのか、バンドは一時的に再結成する。
メンバーもみんな渋いオジサンになっていたが、あの頃の演奏は健在だった。
時代は変わっても、やはりいい音楽は色あせないものだ。
1) Love Plus One / Pelican West
2) Lemon Firebrigade / Pelican West
3) Too Up Two Down / Paint and Paint
4) Where Do You Run To Now / Paint and Paint