見守る、見守られる | 午前零時零分零秒に発信するアンチ文学

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時事問題から思想哲学に至るまで、世間という名の幻想に隠れた真実に迫る事を目的とする!

人は死んだらどうなるのだろうか?

それは死んで見なければわからない。だが、中には臨死体験といって死後の世界まで足を踏み入れながらも奇跡的に生還した者がいるとされるが、我々にそれを知る術は無い。なので意図的に臨死を味わおうとする者もいるようだが、辞めておいたほうが身のためだ。

仮に奇跡的に生還出来たとしても、生前のような状態であるとは限らない。いや、そうでないことのほうが多いだろう。一度生物的に停止したのだからね。当然ながら脳ミソを始めとした各器官への指令系統も停止した訳だ。そんな状態から再びスイッチを入れたところで、記憶や身体的機能が全部戻っている可能性は極めて低いのではないかと私は思う。下手をすれば、それが原因で精神まで壊れてしまっており、半狂乱の状態で戻る恐れもある。

では、こういうのはどうだ?

自分自身の人生に絶望していた者がいたとする。そんな時、怪しい人物が現れてこういう。

「あなたの人生を我が機関が買い取らせて頂きましょう。その代わり、あなたには新しい人生をお約束します。生前の嫌な記憶は一切ありませんし、身体的欠陥もありません。それに、我々がお支払いした金額も全て新しいあなたに引き継がれます。生まれ変わったあなたは、最初から莫大な富を手にしていることになります。いかがでしょうか?」
「…………」

「おや、お疑いですね。ならば我が機関の華々しい実績をお見せしましょう。過去、我々はあなたのような方を大勢見てまいりました。そして、彼らの望む通りに願いを叶えて差し上げた。今や彼らの人生は生前とは比較にならないほど劇的に変わり、充実しているのです」
「…………」

「作業は一瞬で終わります。悪い話ではないと思うのですがねえ」

もしも、美味しい話だと思ったのなら、君は立派な自殺志願者だ。
人間がなぜ死を恐れるのかといえば、肉体の消滅よりも、精神の消滅…つまり、自我がロストしてしまうことに恐怖があるからだろう。だが、精神が永遠に不滅だと物理的に証明され、その際に何の痛みも伴わないと判れば、死を恐れない人間は今後増えるだろう。

しかし、上記の怪しい人物の通りに従ったとしても、必ず対価を支払わされる。
君の人生を全否定されたことになるからだ。思い出も経験も、楽しかったことも苦しかったこと、辛かったけど感動したこと、その全てが失われる。そして、同じ経験をまた最初から体験させられる。当然ながら、生前に味わった絶望は必ず再びやってくる

そう思えば、やはり我々は「人間としての役目」を全うし、ふと「もう何も思い残すことはない、いつ死んでもいい」と感じ取れた時に、自然にあの世へ行けるのが一番いいだろう。



閑話休題



想う人がこの世を去り、ひとり取り残されたことに悲しむ君。

例えば、大好きだった祖父母が居なくなってしまったり、親友が事故で死んでしまったり、恋人を失ったりした時などがそうである。そんな未練を断ち切りたくないから、君は死んだ彼らに対して「どうかあの世で私を見守っていて下さい」などと願いを込める。

私には君の気持ちがわからない。

だってそうだろう。死してなお「あの世から見守られる」のだぞ!
一生監視されているようなものだ。迷惑以外の何物でもない。

人はどんなに親密な関係でも、秘密にしていたい事があるものだ。

君が一人で風呂に入っていた時…
窓から死んだ祖母が羨む表情で覗いているのを想像してみるがいい。
気持ち悪いだろう。

君が恋人とセックスをしている…
そこに、死んだ祖父が天井から「頑張っとるのう~!」なんて声を掛けてくる。
それこそ「ジジイ邪魔すんな! とっとと失せろ!」となるだろう。

それに新しい恋人が出来て幸せを掴みかけていた時に…
死んだ恋人が現れて「私はこれからもあなたをずっと見守ってるから」なんてなれば
見守っていらんから、君はあの世で人生を充実させてくれ」となるだろう。

少なくとも私はそう思う。

そうなのだ。我々がいつも「あの世でも見守っていてくれ」なんていうのは、自分達のご都合なのである。もしも、死後の世界があるならば、行った彼らは、まずそこでの環境に慣れなければならない。そして、新しい生活、新しい仕事が待っている。

とてもではないが、此方に構っている暇はないのだ。

金八先生として有名になった武田鉄矢氏が「自分を励ましてくれるのは、過去の自分だけだよ」なんて言っていたが、「見守る」というものを厳密にいえば、その者と関わった思い出学んだことなのだ。そして、そういうものは「自己の中にしか存在しない」のだ。

従って、我々は多くのことから「見守られる」べき存在であり
それは幻想や虚構でなく、紛れもない真実なのである。

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