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(本好きな)かめのあゆみ

かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

原題は

The BUG BOOK

 

表紙の折り返しには

 

生きていくことの

怖さと哀しさと美しさを

虫たちに託して描いた

特別な一冊

 

って書いてある。

 

正直なところいまのぼくには

ぴぴっ

とは来なかった。

 

くろいむしに与えられた仕打ちが

その罪の重さに見合ったものかどうかはともかくとして

あおいむしあかいむしきいろいむしたちの

平和な日常を脅かしたのは事実なので

やはりそれなりの罰があってしかるべきだと思う。

 

ここまで書いて

くろいむしの

挙動は

だれの視点からだったのかと考えてみる。

 

誤解ということはないのか。

 

くろいむしは悪意によってあれらのことをしていたのか。

 

文学者なら

くろいむしの心理の背景に思いを巡らすのだろう。

 

ひとはひとに罪を与える資格を持っているのか。

 

いや

これは考え過ぎだな。

 

強いていえば

コミュニケーションの難しさ

ということになるのだろうか。

 

あるいは

すでにできあがっているコミュニティーに

あらたに参入することの困難さ

とか。

 

排除の残酷さを読み取ることもできるだろうけど

善良なむしたちが追いつめられた後の最後の手段として

ぼくはこれを非難することはできないような気がするのだ。

 

後味の悪さはあるにしても。

 

その後味の悪さを余韻に残すのが

ゴーリー流。

 

 

 

--むしのほん--

エドワード・ゴーリー

柴田元幸 訳

脳科学者である中野信子さんの著作を読むのはこれで2冊目。

 

1冊目は心理学者の澤田匡人さんとの共著

正しい恨みの晴らし方。

 

ほかにもラジオ番組のゲストとして話しているところや

NHKのSWITCHインタビュー達人達で

パイロットである室屋義秀さんと話しているところを観ているので

ぼくにとってはかなり気になるひとなのである。

 

この本の内容は

月間『BIG tomorrow』で連載した内容がベースになっているとのことで

どうりで啓発本の匂いが漂っていた。

 

とはいえそういうのがあまり好きでないぼくでも

やはり共感できる内容だらけだった。

 

ふだん人間として生きているなかで経験的に感じていることを

脳科学の知見でどんどん裏付けていくって感じ。

 

もうドーパミンとかオキシトシンとかβ-エンドルフィンなんかは

ぼくにはおなじみで

それのためにひとは生きているんじゃないか

っていう視点を得たことで世界が広がり

他人や自分とのコミュニケーションも楽になったような気がする。

 

また

ぼくにとっての脳の役割は

扁桃体が情動を生み出し

海馬が短期記憶を行い

前頭前野で知能を働かす

っていう感じ。

 

細かい分類はよくわかってないけど

扁桃体が欲望を感じているなあ

とか

海馬がフル回転して現状を本能的に把握しようとしているな

とか

前頭前野で長期的な視点に立って最適解をみつけようとしているな

とか

メタ認知をする習慣ができてきつつあるような気がする。

 

もっともあいまいな知識なので間違った認識かもしれないけど

とにかく自分の腑には落ちているので

いまのところはだいじょうぶ。

 

この本には

生き物としての人間の脳のメカニズムがわかりやすく書かれているので

日常で感じるモヤモヤにもかたちを与えてくれるような気がして

とてもいいと思う。

 

もっとも

もちろんこれが人間のすべてではないし

身も蓋もないようなことが書かれているので

納得しかねるひともいるだろうけど。

 

ともかく

自分自身こどものころから生きにくさを感じていたという

中野信子さんのものの見方は

とてもやさしいのでそういうところも好きな理由だ。

 

 

 

 

--あなたの脳のしつけ方--

中野信子

父と母それからわたしが暮らす家。
 
そこにあひるがもらわれてきた。
 
あひるによって変わる家族の生活。
 
不器用なおもいやりによりねじれていく。
 
つつましい。
 
いじらしい。
 
生命のエネルギーが弱い。
 
でも生きている。
 
激しい嫌悪の方がまだましなくらいの
地味すぎて目を背けたくなるみじめな描写。
 
それなのに幸福とも不幸とも単純に判別しがたい。
 
この作家の独特の感性だな。
 
あひる
おばあちゃんの家
森の兄妹
のみっつの短編を収録。
 
どこか昭和のものがたりのようでもあり
けれども現在のものがたりでもある。
 
便利さ、快適さ、爽快さとは無縁のこの世界から
なぜか目が離せないのだ。
 
 
 
 
--あひる--
今村夏子