父と母それからわたしが暮らす家。
そこにあひるがもらわれてきた。
あひるによって変わる家族の生活。
不器用なおもいやりによりねじれていく。
つつましい。
いじらしい。
生命のエネルギーが弱い。
でも生きている。
激しい嫌悪の方がまだましなくらいの
地味すぎて目を背けたくなるみじめな描写。
それなのに幸福とも不幸とも単純に判別しがたい。
この作家の独特の感性だな。
あひる
おばあちゃんの家
森の兄妹
のみっつの短編を収録。
どこか昭和のものがたりのようでもあり
けれども現在のものがたりでもある。
便利さ、快適さ、爽快さとは無縁のこの世界から
なぜか目が離せないのだ。
--あひる--
今村夏子