原題は
The BUG BOOK
表紙の折り返しには
生きていくことの
怖さと哀しさと美しさを
虫たちに託して描いた
特別な一冊
って書いてある。
正直なところいまのぼくには
ぴぴっ
とは来なかった。
くろいむしに与えられた仕打ちが
その罪の重さに見合ったものかどうかはともかくとして
あおいむしあかいむしきいろいむしたちの
平和な日常を脅かしたのは事実なので
やはりそれなりの罰があってしかるべきだと思う。
と
ここまで書いて
くろいむしの
挙動は
だれの視点からだったのかと考えてみる。
誤解ということはないのか。
くろいむしは悪意によってあれらのことをしていたのか。
文学者なら
くろいむしの心理の背景に思いを巡らすのだろう。
ひとはひとに罪を与える資格を持っているのか。
いや
これは考え過ぎだな。
強いていえば
コミュニケーションの難しさ
ということになるのだろうか。
あるいは
すでにできあがっているコミュニティーに
あらたに参入することの困難さ
とか。
排除の残酷さを読み取ることもできるだろうけど
善良なむしたちが追いつめられた後の最後の手段として
ぼくはこれを非難することはできないような気がするのだ。
後味の悪さはあるにしても。
その後味の悪さを余韻に残すのが
ゴーリー流。
--むしのほん--
エドワード・ゴーリー
柴田元幸 訳