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(本好きな)かめのあゆみ

かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

おおう

なかなかいい混沌感だねえ。

 

文体も独自な感じで

口語がまさる感じ。

 

乱暴な言い方をすると関西っぽい。

 

それは文体だけじゃなくて

思考方法というか思考様式というか

とにかく関西とインドをハイブリッドにした感じ。

 

感じ

っていう表現がしっくりくる感じ。

 

チェンナイのIT企業で日本語を教える混沌と

アダイヤール川の氾濫による百年泥による混沌。

 

ごちゃごちゃしていて

それはまさに世界のはじまりの混沌に似ている。

 

っていうか

世界ははじまりだけじゃなくて

途中もおわりも混沌としているのかもしれなくて

秩序を持たせたがっているのは人間だけかもしれない。

 

秩序をみつけた

っていっていい気になっているのも

人間の自己満足で

その秩序は世界全体からみたら

ちっとも秩序じゃなかったりするかもしれない。

 

日本語を教える

っていうのと

百年泥

っていうのが

小説の装置として抜群で

そのアイデアで

この小説は自由に動いているような気がする。

 

時間が一方向には流れていない

っていう感じも小説世界をよくあらわしていた。

 

からっ

とした表現がいいね。

 

さて

この作者は

次回どんな作品を読ませてくれるのだろうか。

 

 

 

 

 

--百年泥--

石井遊佳

これいいね。

 

おじさん

って人類のカテゴリのなかで

わりかし忌避されがちだと思うんだけど

この本にはおじさんへの愛があふれている。

 

金井真紀さんの

おじさんへの純粋な興味のたまものだね。

 

パリのすてきな

っていうのは

もちろんおしゃれで洗練されているおじさんもいるんだけど

それだけじゃなくて

生き方や暮らし方からあふれ出る

すてきさ

っていうこと。

 

そう

パリのおじさんたちも

日本のおじさんたちとおなじように

それぞれに固有のすてきな生き方をしている。

 

日本と違う点があるとすれば

パリの気候や風土

文化的あるいは社会的な背景

の違いによるものだろう。

 

パリで暮らすおじさんは

実に多様だ。

 

人種もルーツも信じる宗教もいろいろ。

 

もしかしたら

革命以後の

自由・平等・友愛

っていう思想もおおきな影響を与えているかもしれない。

 

派手で目立って羨ましがられるようなおじさんもいれば

地味で目立たなくても自分の生き方にこだわりを持っているおじさんもいる。

 

どちらもそれぞれに自分の生き方。

 

今日もパリの空の下ではおじさんたちが生きている。

 

そんなふうに思うと

よしぼくも生きよう

っていう気分になれる。

 

世界中のおじさんの生き方や暮らし方を読んでみたいような気もした。

 

それにしても

絵や文からただようパリの雰囲気にはあこがれる。

 

いいなあ

パリ。

 

もちろん実際に暮らしてみるといやなところも知ることになるんだろうけど。

 

 

 

 

 

 

--パリのすてきなおじさん--

金井真紀・文と絵

広岡裕児・案内

話題のこの本。

 

いままで読んだことがなかったけど

せっかくなので読んでみた。

 

漫画版もおもしろそうなんだけど

原作

というか小説版で読んだ。

 

こっちの方が内容も多そうだし。

 

読んでみたら。

 

なんだ

すごくいいじゃないか。

 

読みながら自分のこどものころのことを思い出したよ。

 

ピュアだったあのころ。

 

ぼくには

コペル君にとっての叔父さんみたいな存在はいなかったけど

ぼくがこどものころには

まだおとながこどもに対して理想を教えていたような気がする。

 

いまのおとなはこどもに現実の厳しさを教えてるけどね。

 

ぼくなんかは

コペル君ほどではないにせよ

いい人間

社会の役に立つ人間

になるのがあたりまえのことのように感じていて

それに向かって進んでいたんだよ。

 

でも

おとなになって

なんだかほかのひとたちはぼくがあたりまえに感じていることを

あたりまえと思っていないようだぞ

と気づき

それまで感じていた理想と現実とのあいだのギャップに

悶え苦しんだ時期があった。

 

いまはほどほどに力を抜いて

弱い自分を認めながら

でもこころの片隅には青い理想も残っているような

そんな生き方になっている。

 

だから

叔父さんやお母さんがコペル君に求めていたようなことは

たしかにいいことなんだけど

その後のコペル君の生きづらさにつながらなければいいんだけどな

ってちょっと思った。

 

まあこれはひねくれてしまったぼくのつまらない心配なんだけどね。

 

実際のところこの本は

こどもはもちろん

かつてピュアなこどもだったおとなが

ぜひとも読んだ方がいい内容だと思う。

 

特に

おじさんのノートがいい。

 

一面的でなく

押しつけがましくなく

やさしさにあふれている。

 

叔父さんっていっても

大学を出たところなのでまだ20代そこそこなんだけど

そんな年でこんなことが言えるなんてすごい。

 

叔父さん自身も

理想と現実との間のギャップに悩んでいたんだろうな。

 

経験したことについて自分で考えること。

 

考えの内容よりも考えることそのものがまずはたいせつ。

 

ひとの受け売りで自分で考えていない考えなんて

薄くてつまらないもんね。

 

それにしてもコペル君が熱を出して倒れたところ。

 

ああいう理由で熱を出したことが

たぶんぼくにもあったはず。

 

なつかしいなあ。

 

最後がまたいい。

 

ぼくなんかはただなんとなく

いい人間になるのがあたりまえ

なんて思っていたけど

コペル君には

いい人間になるという覚悟

が芽生えたような気がする。

 

無自覚よりも自覚することの強さ。

 

季節や風景の描写もよかった。

 

 

 

 

 

 

 

参考に目次をあげておく。

 

  • 一、へんな経験
    • ものの見方について(おじさんのノート)
  • 二、勇ましき友
    • 真実の経験について(おじさんのノート)
  • 三、ニュートンの林檎と粉ミルク
    • 人間の結びつきについて(おじさんのノート)
  • 四、貧しき友
    • 人間であるからには(おじさんのノート)
  • 五、ナポレオンと四人の少年
    • 偉大な人間とはどんな人か(おじさんのノート)
  • 六、雪の日の出来事
  • 七、石段の思い出
    • 人間の悩みと、過ちと、偉大さとについて(おじさんのノート)
  • 八、凱旋
  • 九、水仙の芽とガンダーラの仏像
  • 十、春の朝

 

 

 

 

--君たちはどう生きるか--

吉野源三郎