(本好きな)かめのあゆみ -40ページ目

(本好きな)かめのあゆみ

かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

新潮文庫で上下あわせて

およそ800ページ弱。

 

ついに読んだ。

 

いや読んだというと嘘になるかな。

 

とにかくすべての本文に目を通した

くらいの感じ。

 

注釈もおおむね読んだけど

●ページ●行を見よ

っていうのは飛ばした。

 

こんな

みたいな文章だとは思わなかった。

 

実に難解。

 

難解だけど

いきおい

みたいなものは充分に伝わった。

 

熱量。

 

内容が

挑発的で扇動的なので

現状に不満を感じているわかいひとには影響がおおきいだろうな。

 

それはいつの時代であっても。

 

どの長編でもそうなんだけど

たとえ最初の方が読みにくかったとしても

終盤になるころにはその文章に慣れてきて

はまっていく。

 

この作品もそう。

 

第4部はけっこう盛り上がったような気がする。

 

難しいことはわからないし

研究者でもないので

ぼくなりの解釈をメモしておきたい。

 

超人

っていうのは

人を超えた存在

っていうことではなくて

既存の価値観で苦しんでいるのならばそれを超えてより自由な人になろうぜ

っていう意味じゃないかな。

 

永劫回帰は

自分の人生は何回も繰り返されて

それはいまの人生とまったく同じ人生になるってこと。

 

だから

いまの人生で苦しんでいるとしても来世では幸福になれる

なんて考えていたら

けっきょく来世もいまの人生と同じように苦しい人生になってしまう。

 

そんなの嫌だよね。

 

だったら

いまの人生とまったく同じ人生が何回も繰り返してもいいと思えるように

いまの人生を肯定できるように

いまの人生が幸福であるように

そうなるように生きていこうぜ

っていう意味だと解釈した。

 

超人になって永劫回帰する。

 

きわめて前向きな人生哲学だと思う。

 

 

 

 

 

 

--ツァラトストラかく語りき--

ニーチェ

竹山道雄 訳

いとうせいこうさんの小説を読むのはこれが初めて。

 

近未来の戦後の設定で

あたらしい支配者による小説禁止令に賛同するという立場で

主人公が随筆を書く。

 

実験的な作品だ。

 

アイデアがいいと思う。

 

描き方はもしかしたら物足りないといえるかもしれない。

 

っていうかぼくの主観でいえば物足りなかった。

 

アイデアはすごくいいし

普遍的なテーマなので

もっと読み応えのある作品になる可能性があるような気がする。

 

それにしても

禁書

っていうのは人類が書物を手にしてから何度も繰り返されている統治手段だから

それだけ効果があるっていうことなんだよな。

 

小説が禁止されてもなんにも生活に影響を与えないひとも相当の割合でいるだろうけど

ぼくには小説がない世界はものすごくつらいなあ。

 

自分がその気にさえなればほとんどの小説が読めるいまの時代はほんとうにありがたい。

 

もちろんぼくが気づいていないだけでぼくには決して読むことができない小説もあるには違いないのだけど。

 

 

 

 

 

--小説禁止令に賛同する--

いとうせいこう

ランちゃんのお父さんは

作者の高橋源一郎さんを思わせる。

 

ハラちゃんは誰をモチーフにしているのだろう?

 

肝太先生はカント

理想先生はルソー。

 

くにをつくる

っていうので

井上ひさしさんの

吉里吉里人

を思い起こさずにはいられなかった。

 

この作品ではこどもたちがつくろうとするんだけどね。

 

こどもたちのまわりのおとなたちが実にやさしい。

 

こんなふうにこどもたちに接せられたらどんなにいいだろう。

 

キヨミヤくんがいうように

ランちゃんはすごく恵まれていると思う。

 

でもそれだけじゃないんだろうな。

 

だからキヨミヤくんもランちゃんたちのことを気に入っている。

 

こどもたちがみんなこんなふうに過ごせたならどんなにいいだろう。

 

序盤はすこし説教臭さが見え隠れしているような気がして

高橋源一郎さんらしくないなとも感じたんだけど

アイと雪の女王さんが現れたあたりから

俄然おもしろくなってきた。

 

アイちゃんたちの一族は

国民なのか

基本的人権を有しているのか

ってあらためてきかれると

即答できない。

 

それって実はすごいことなんだけど

意識しないでもやっていけるのだから

不思議な仕組みだ。

 

アイちゃんの家の本棚から通じる場所。

 

ここで現れる半裸の男性が誰かはすぐにわかった。

 

ぼくもこのひと

好きなんだよね。

 

かなりの変人なんだけどね。

 

でも世界を知ろうとするならそれくらいじゃなきゃ。

 

ぼくもキャラメルの箱をもらいたいけど

自分で用意したいと思います。

 

それで

まあ全体として興味深く読んでいたんだけど

終盤の展開でうれしいおどろき。

 

まさかこの作品で涙が出てくるなんて思っていなかったので。

 

ハラちゃんがいつも電話で話していたひと!

 

エピローグもいい。

 

わくわくする。

 

 

 

 

納得できるまで自分の頭で考えること。

 

何事も結論を急ぎ過ぎないこと。

 

(仮)っていうことで考えながら進めること。

 

身近なひとの話をきくこと以上にたいせつなことなんてないんだよ。

 

こどもたちもおとなたちも。

 

 

 

 

 

 

--ぼくたちはこの国をこんなふうに愛することに決めた--

高橋源一郎