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(本好きな)かめのあゆみ

かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

津村記久子さんの作品は

ずいぶん久しぶりに読んだ。

 

最近映画化されていたので

それきっかけで読んでみた。

 

ぼくが過去に読んだ津村記久子さんの作品は

働くひとたちの物語だったんだけど

この作品は就職手前の大学生の話だったので

とても新鮮に読めた。

 

あれっ?津村記久子さんの作品ってこんな感じだったっけ?

って思えた。

いい意味で。

 

青春には年齢は関係ないなんていうけど

やっぱり大学生の青春がいちばん輝いているような気がする。

 

もっとも主人公は全然地味で

ポチョムキンなんだけど。

 

2005年に出版されているけど

当時から若者たちには

こういう諦めというか悟りというか

世界の限界みたいなものが覆いかぶさっていたんだな。

 

大学生らしい暢気な生活はありつつも

見通せる未来はほんとうにささやかというか。

 

いやぼくの大学生活もそんなに変わらないかもな。

 

なんか関係するひとりひとりとの距離感に

身に覚えのあるものが多くてなんだか懐かしかった。

 

経験が少なく未熟ながらも他者と向き合おうとしていたあの頃。

 

構成としてはたくさんの要素が巧みに絡み合っていて

津村記久子さんの手腕を感じた。

 

イノギさんとの夜

穂峰君の部屋

吉崎君もオカノもいいやつだ。

 

女性への性暴力については

これはきっと2005年よりも

2021年の日本の方が

問題意識が高くなっていると思う。

 

ほんとうにこういうのは

こころの殺人だから

犯人は絶対に逮捕して罰を受けさせなければならない。

 

それから児童虐待も絶対にだめ。

 

ああ

でも16年経っても

こういうのが減った気がしないのは

まだまだ社会が本気で取り組んでいないからなんだろうな。

 

それにしても

タイトルは

マンイーター

よりも

君は永遠にそいつらより若い

の方が断然いいね。

 

 

 

 

--君は永遠にそいつらより若い--

津村記久子

羽生善治九段を

岡村啓嗣さんが

1985年の

15歳のデビューから撮り続けてきた写真に

2018年の羽生さんがコメントを付けたという珍しい1冊。

 

30数年も

同じひとから撮影され続けるって

そうそうあることじゃないと思う。

 

野球なら

長嶋茂雄さん

王貞治さん

はあるかもしれない。

 

イチローさんでもあるかな。

 

サッカーなら

中田英寿さん

本田圭佑さんか。

 

三浦知良さんでもあるかな。

 

俳優なら

吉永小百合さん

高倉健さんとか。

 

それにしても

15歳の羽生さん

わかい!

 

でもまあ勝負師ではあるので

やはりそこは厳しい世界を第一線で生き抜いてきたひとである。

 

羽生さんは

将棋以外のことも

幅広く体験されているので

そういう面も振り返られる。

 

写真がメインで

文章はあくまでも

2018年の視点でのものであり

当時どのような思いだったかは

この本からはわからない。

 

文章で良かったのは

AIと美意識についてのところ。

 

美意識は可能性を狭める

という問題提起もあるけれど

AIは勝っても美しくない

なぜならば

ひとが持っている

勝負の方針や美意識が感じられないから

というのはなるほどなと思う。

 

たしかにAIはその圧倒的な演算速度で

正確な手を弾き出すだろう。

 

しかし人間が見たいのは

ただの勝ち負けではなくて

勝ち負けをめぐるドラマなのである。

 

そういう意味では

いくらAIが進化しても

ひとが指す将棋はなくなることはないだろう。

 

もしかしたら

レンブラント風

の絵画をAIが描くように

羽生善治風

の将棋をAIが指せるようになるかもしれないが

将棋はライブなので

ひとが見たがるのは生の勝負なのだろう。

 

 

 

 

--瞬間を生きる--

羽生善治

撮影 岡村啓嗣

又吉直樹さんの

ヘウレーカ!

ダンゴムシに心はあるのか?

の回に出ていた

森山徹さんの著作。

 

森山徹さんのこれまでの研究と思索から

脳のないダンゴムシにも心はあるし

無機物の石にだって心はある

というのを主張している。

 

ぼくもあらゆるものには心があると考えている。

 

ぼくが考える心は

物質の組み合わせや関係性

によって生み出されるもので

ひとの心も

心というものが独立して存在しているのではなくて

ひとを構成する物質の組み合わせや関係性によって

生じているものだ。

 

魂の素粒子

なんてことも考えたこともあるけど

物質を構成するそもそもの最小単位は1種類に落ち着くはずなので

その最小の物質の組み合わせや関係性が

心を生み出す

ということで言い表せていることになる。

 

それは自分の皮膚の内側の物質に留まらず

自分の外側の世界にある物質との組み合わせや関係性さえも

含んでいる。

 

森山徹さんのこの著作。

 

最初はぼくの考えていることとは違う感じがしたので

なんだかなあ

と思っていたが

よくよく考えると

やはり同じことを言っていることになると気づいた。

 

森山徹さんの主張のキーワードは

デンサー的行動決定機構

創発型コミュニケーション

潜在行動決定機構群

隠れた活動体

ということになるだろうか。

 

顕在化した言動の背後には

多数の抑制された潜在的な言動のひらめきがある

っていうことと理解した。

 

無機物にも

顕在化している現象の背後に

多数の抑制された潜在的な現象のひらめきがある

と。

 

にしても

森山徹さんのこの研究。

 

イグノーベル賞系というか

科学の本流からは離れているというか

ぼくみたいな者には興味をもっておもしろがられるけれども

一般的なひとたちからは

うさんくさい科学というか

こんなもの科学じゃないというか

こういう研究には公的資金は投入できないといわれそうな

そういうアウトロー感があって

ちょっと心配にもなるけれど

妻や娘さん2人からは理解されているようで

それはそれでしあわせなことである。

 

あと

ぼくがすきな

椎名林檎さんやコムアイさんのことなども書かれていて

親近感が湧いた。

 

 

--モノに心はあるのか 動物行動学から考える「世界の仕組み」--

森山徹