菜食主義者 ハン・ガン/訳 きむ ふな | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

冒頭から惹きこまれた。

巧みな文章だ。

 

菜食主義者になったヨンヘと

その夫の視点から語られる

「菜食主義者」

ヨンヘの姉の夫の視点から語られる

「蒙古斑」

ヨンヘの姉の視点から語られる

「木の花火」

の3作品からなる。

 

「菜食主義者」を読み終えて

「蒙古斑」を読み始めたときは

よく似た世界観ではあるが別の物語かと思ったが

読み進めるうちに同じ世界の続きの物語だとわかった。

 

ヨンヘが狂っているとはぼくには思えないので

ヨンヘの姉の夫がヨンヘに興味を持って

一線を越えてしまうところは

お互いに大人だし同意があるから良し

と感じたので

常識的な倫理観とは異なる読み方をしてしまったかもしれない。

 

当然、ヨンヘの姉の感覚の方が普通なのだろうか。

 

いずれにしても

女も男もそれぞれに抑圧されているというのがよくわかる。

 

著者のあとがきから

「慰めや容赦もなく、引き裂かれたまま最後まで、

 目を見開いて底まで降りていきたかった。」

 

訳者のあとがきから

「「私」は家族の中で形成され、

その家族によって「私」であることを妨害される。」

 

これらの文章がこの作品をよく表していると思う。

 

汚れた動物であることをやめて

静かな植物になりたい。

 

ヨンヘみたいなことにはならなくても

その気持ちに共感する現代人は多いに違いない。

 

抑圧されてこの世界に絶望しているひとは

目を見開いてその抑圧とともに底まで降りて行け。

 

そして

「もうここからは、違う方向に進みたい。」

と。

 

 

 

 

 

――菜食主義者――

ハン・ガン

訳 きむ ふな