不憫な目に遭った
十八歳と八歳の姉妹の
四十年にわたる人生の物語。
最悪なのは実の父と
その後に現れた実の母の新しい男。
ろくでもない。
けれどこういう男はたくさんいる。
女性のみなさんはくれぐれも注意してほしい。
でもそういう男に寄りかかってしまう
女性の気持ちもわからないでもない。
人間って合理的な動物ではけっしてないからな。
わからないでもないんだけれど
こどもを育てる選択を一度した限りは
やっぱりまっとうしてほしい。
それは女性も男性も。
そういう最悪なスタートで最初はつらいけれど
その後の姉妹を見守るあたたかいひとびとの存在は
もしかしたらファンタジーでしかないのかもしれないけれど
こういう世界はもしかしたらあるのではないか
と思わせられる自然さで
読んでいてほのかに幸せな気持ちになれる。
津村記久子さんの抑えた描写がとてもいい。
すごく特別なことが次々と起こっているはずなのに
これはこういうふうになるしかないというような
自然な流れ。
金銭的に裕福じゃなくても
このひとたちの暮らしの方がよっぽど幸せそうに思える。
いまの暮らしはなにをするにしてもお金がかかるんだけど
もしかしたらそれは何らかの錯覚で
本質をうまくつかめばお金をかけなくても暮らしていけるんじゃないかと
そう思わせられる。
ネネの存在が最高に利いていた。
こんなに賢くて長生きな鳥がいるなんて
考えたこともなかったよ。
で
とても幸せな話なんだけど
姉妹は結局こどもを持たないようだったので
それは何らかの作者のメッセージなのだろうか。
ーー水車小屋のネネーー
津村記久子