ドライブ・マイ・カー 濱口竜介監督 | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

帰ってきたヒトラー

以来

およそ5年ぶりの映画館での映画鑑賞。

 

なんとなくいまのぼくに必要な映画だという予感がしていた。

 

さいわい

村上春樹さんの原作は読んでいないので

ほぼ白紙からみることができた。

 

もっとも原作にかなり脚色が加えられているらしい。

 

179分の映画だが

静かな緊張感がありつつ

ここちよい時間を過ごした。

 

まるで映画のなかに入って

自分も登場人物たちの会話に参加している感じ。

 

ひとつひとつのことばに

ほんとう

が乗っていて磨かれていた。

 

こんなことばを話したいし

こんな会話をしていたい。

 

日常生活では無理だけど。

 

映像がとてもからだになじんだ。

 

大きなスクリーンで観る映像美は映画館ならでは。

 

悠介がみさきに感情を吐き出すシーンはカタルシスで

ぼくもそういう流れにあこがれる。

 

相手が誰でもいいってわけじゃない。

 

ここからはネタバレになるけど自分のためのメモ。

 

 

 

 

 

 

チェーホフのワーニャ伯父さんなどの舞台との交錯がとても効果的。

テキストはそれだけで強いちからがある。

 

多言語の俳優たち。

手話がさらに鮮烈。

 

赤いSAABが印象的。

ぼくはロードムービーが好き。

車内の会話

カセットテープから流れるのは台本を読む妻の声(夫のセリフの部分をあけてある)

運転席から見た風景

車の後ろに過ぎ去る景色

遠くから車を撮った映像。

 

北海道で雪道をバックするシーン。

後から映る花屋の看板で

なんのためのバックかがわかった。

 

ベッドのうえで紡がれるあたらしい物語。

前世はヤツメウナギだった少女。

 

オープニングの音の美しさ。

性交の後に音が物語を語るのは

まるでシャーマンのようだった。

 

広島で悠介が逗留した島の部屋からみた瀬戸内の青。

 

ごみ焼却場。

 

湾岸の階段。

 

北海道で悠介が感情を爆発させるところ。

正直なところぼくはここで

自分の感情とていねいに向き合い

抑圧せずに自分の感情を受け入れることのたいせつさについて

どんな説得力のあることばが聴けるだろうと期待していたんだけど

そこはちょっと思っていたのとはちがった。

もちろんむずかしいことであるのでしかたがない。

 

パートナーの秘密を知ってしまったときにどうするか。

ぼくは

パートナーを失うこと

パートナーとの関係性を壊すこと

をおそれて

やっぱりあのときの悠介とおなじように

だまって知らないふりをするだろう。

 

高槻が悠介に言った

もしも彼女がそれを聴いて欲しがっていたとしたら

っていうのは

可能性としてはわからないことはないけど

そうじゃない可能性もあるので

かなりむずかしい判断になるだろう。

 

自分から言ってきてほしい。

聴く準備はいつでもしておくから。

 

 

 

 

--ドライブ・マイ・カー--

監督 濱口竜介