すごいすごいとは聞いていたが
ほんとうにすごかった。
圧倒的なスケール。
壮大な構想と構成。
そしてアイデア。
中国の作家の作品を読む機会はほとんどなくて
記憶に残っている作品といえば
李白とか杜甫とか
荘子とか老子とか孔子とか
そういう2千年前クラスのものばかりなのだが
現代の中国のSFはこんなことになっているのか。
といってもまだこの1冊しか読んでいないので
中国の全体的な水準や傾向はわからないんだけど
とにかくすごかった。
それに現代の
っていっても
連載は2006年っていうことなので
もう13年も前なんだよな。
それなのに内容が陳腐化していない
というより
さらにリアリティを増している
と言ってもよい感じ。
早川書房とはいえ
そもそもSFと知らずに読み始めたので
冒頭の迫力からやられた。
中国でこんなこと書いても大丈夫なのか
って思いながら読んでいた。
文化大革命っていうのがあったのは知識としては知っていたが
この小説に書かれているようなことなのか。
もちろんフィクションなのはわかっているが
ある程度似たような事実があるような気もして
だとするとなかなかひどいことがあったもんだ。
しかもそれはそれほど遠い昔のことではない。
で
そんなことから始まって
政治的思想的な話なのかと思いきや
どんどんミステリアスな展開になっていく。
三体問題を扱ったVRゲーム
三体
のアイデアもすごく興味深くておもしろい。
こんなゲーム
ついていけるひとはほとんどいないだろうけど
インテリの知識欲は相当刺激されるだろうなあ。
射撃手と農場主
の寓話もすごくよくできている。
まことしやか。
それから智子。
ともこ
ではなく
ちし
って読むんだと思うけど
フリガナ的には
ソフォン
ってなっている。
えーっ
そういうことなの?!
ってびっくりするアイデア。
すごい。
三次元には広大な二次元が内包されている
ってほんとうにそうなの?
で
それがああなってこうなってそんなことになるの?
すごいよ。
で
アイデアだけで突っ走るわけではなくて
情景や心理の描写もていねいでうまい。
郷愁も誘う。
ラストも良かった。
SFっていうのはこういうものだと思うけど
ひさしぶりにでかいものを読んだ快感があった。
たぶんある程度の物理学や天文学の知識がないと
ちんぷんかんぷんになるところもあると思うけど
ぼくレベルのあいまいな知識でもぎりぎり想像力で補えたと思う。
ぜんぜん勘違いしてるかもしれないけど。
あと
中国の小説は
もっと不自由なのかなと思っていたけど
案外きわどいことも書けるんだなというのも感想として持った。
まあ政治的な事情がわかっていないので
あくまでも感覚的な話だけど。
それにしても
基礎科学の研究はほんとうにだいじだな。
あともうひとつ。
文潔のとりまきの女の子はいったい何者だったのだろう?
--三体--
劉慈欣
訳 大森望、光吉さくら、ワン・チャイ