地球にちりばめられて | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

ぼくは言葉が好きで

言葉遊びも

対話も好き。

 

滅多にないことだけど

いい言葉遊びや

いい対話の時間が過ごせると

とても幸せな気持ちになれる。

 

そんな言葉好きなぼくだけど

つたなくても思いが伝わる言葉や

言葉を超えたコミュニケーション

っていうのにも憧れる。

 

多和田葉子さんの作品は知的だなあ。

 

寓話的というか思考実験的というか

小説ならではの表現がおもしろい。

 

社会批評的でもあるんだけど

そこを声高に叫ぶのではなく

さりげないところがまたいいんだよね。

 

献灯使

で舞台となっていた

原発事故のせいで他国との行き来はもちろん情報のやりとりも断絶された日本

を想像させる国の出身で

たまたま断絶時にヨーロッパに留学していたせいでもう二度と故郷に帰れなくなり

独自のコミュニケーション言語

パンスカ

を編み出した

Hiruko

という主人公が

言語を学ぶクヌートという学生と一緒に

故郷の言葉を話す人物を探すという設定。

 

登場人物のひとりひとりが

既成の価値観からはみ出していて

でもそれは反骨精神とかそういうのじゃなくて必要に迫られてのもので

生きづらいには違いないけどそういう感じでもなくて

すごく魅力的なんだよね。

 

こういうのを自由っていうんだろうな。

 

そんな自由なひとたちが

お互いの価値観を認め合いつつも

ときにはより深く理解するために衝突し合いながら

言葉を交換し合っていくっていう

ある意味

言葉そのものに価値を見いだすぼくにとっては

ユートピアのような世界。

 

そんな言葉のやりとりの物語の最後がああいう感じなのは

それもいいなと思えた。

 

感動とか泣けるとかそういうのではなくて

小説という手法でこそ表現される実験的な遊びに触れることを楽しめる作品だった。

 

 

 

 

--地球にちりばめられて--

多和田葉子