ようやく読めた。
この短編集に収められている
七階
が読みたかったんだよな。
病気の症状が重いほど一階に近く
軽いほど七階に近いフロアに入院させられるといわれる病院。
病気でもないくらいの軽度の症状で念のため入院した男が
なんだかんだで七階から順番に下のフロアに下ろされて行き
やがては一階までたどり着くという話で
それが現在の社会状況に似ているのでは
と気になったので読みたかったのだ。
だがこの作品はぼくにとってはまあまあだった。
もうちょっとナチュラルな感じで一階に下りていく感じが欲しかった。
その方が怖くていい。
この短編集に収められている16の短編のなかでは
神を見た犬
がぼくはいちばん好きだったかな。
いかにもひとびとの愚かさを表現した寓話って感じで。
別の短篇集
魔法にかかった男
を読んだ時にも感じたんだけど
全体を通してあいまいで不確かな不穏さが漂っていて
エドワード・ゴーリーの作品と似た印象を抱いた。
カフカといえばカフカなんだけど
ファンタジーの匂いが強いような気もする。
竜とか騎士とか出てくる作品もあるし。
あと
カフカにあるユーモアは弱いような気がするので
やっぱりカフカとは違うかな。
ってほかの作家の作品と比べるのは品がないし失礼なのでやめるが
この短編集のイタリア感は嫌いではない。
--七人の使者--
ディーノ・ブッツァーティ
脇功 訳