玄人好みの作品なんだろうな
これは。
ちょっと素人にはぴんと来ないっていうか。
自分で
これは面白いはずこれは面白いはず
と暗示をかけながら読んだのだが
いまひとつ最後までどう読んだらいいのか
わからなかった。
小説の技巧が優れているのは
なんとなくわかるような気がする。
っていうのも自己暗示のたまものかもしれないが。
性器や性技についてのあれやこれやが
とにかく連綿と描写されるのだが
まああからさますぎて
エロティックでも何でもなく
冗談に思えて仕方がない。
しかも腹を抱えて笑いたくなるくらい
ナンセンス
というわけでもない。
そんな微妙さ。
で
ミステリアスな伯爵夫人のありようも
そこはかとなく滑稽で
どう捉えたらよいのかやっぱりわからなかった。
小説の技法を駆使した
壮大なおとなの戯れみたいなものなのだろうか。
この作品をおもしろいと思えるのは
やはり小説の玄人だけなんじゃないかな。
性と戦争との突飛なつながりを
もっと寓話的に描いてもらえたら
ぼくの好みに近づいたかもしれない。
しいていえば
日米開戦前の富裕な高等遊民たちの
文化的な薫りなどの舞台背景は
ノスタルジックでロマンチックだったとは思う。
--伯爵夫人--
蓮實重彦