スクラップ・アンド・ビルド | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

最近テレビではよくみかけるものの
作品を読むのは初めての羽田圭介さん。

ついついこの作品の主人公が
羽田さんと重なってみえてしまった。

ふつう言いにくいことをはっきりいってしまうそのあり方。

生産性の低い高齢者は社会保障費の抑制のために早く死んでほしい
という世論はひどい暴言として実際に口に出されることはないけれども
多くのひとのこころの隅にはあるんじゃないだろうか。

でもこの作品の主人公はちょっと違う。

死にたがっている老人をなんとか希望通り死なせてやろう
しかも苦痛をできるだけ伴わずに
というポジティブな思考。

そう
誰もが長生きを喜んでいるわけではないのだ。

金もなく健康もなく相手をしてくれるひともなく仕事もなく
そんな日々が延々と続くのがあらかじめわかっているのだとしたら
ひとはそれでも生きていたいと思えるのだろうか。

まあそんな話は抜きにして
この作品での祖父と孫とのやりとりは
変なんだけどどこかなまなましく
暗くもなりえるところを妙なあかるさが漂っている
っていう独特の雰囲気があって
ああたしかにこれはあたらしい日本の家族の肖像を描いているようだ。

これまであまり口には出されなかっただけで
実際にはありふれた家族の日常であるともいえる。

それをかろやかにユーモラスに語ってみせたところに
この作品の価値はあるのかもしれない。

スクラップ・アンド・ビルド。

壊して創る。

それは
肉体であり精神であり
ひととひととの関係性であったりする。





--スクラップ・アンド・ビルド--
羽田圭介