ついに読んだ。
500ページ超の分厚い作品。
あらかじめ想像していたのは
例のカルト教団みたいなのがいかにして信者を獲得し暴走に至ったか
というようなことを
思考実験的に小説で再現するような企て。
でもそうじゃなかった。
教団Xの側は
セックスで信者を獲得しているようだったが
その必然性はいまひとつあいまいな気がした。
そんなんで
信者になるかな?
って。
たしかに
セックスは気持ちがいいのかもしれないけれども
誰とでもいいってもんじゃないだろう。
もしかしたら
社会で評価されず居場所のないひとたちを
評価し居場所を与えることで
信者としていったといえるのかもしれないが。
ああそうだ
恐怖による支配っていうのもある。
要するに
飴と鞭。
気持ちいい
っていうのは危ない感情だとつくづく思う。
で
ぼくは
そういったカルト教団の恐ろしさを描いたところや
公安を交えたスリリングな展開の部分よりも
もうひとつの柱である
教祖の奇妙な話
が気に入った。
宇宙の成り立ちとか
素粒子の構成とか
ぼくの思い描く世界観と通じるものがあって
とても愉快に読んだ。
それもそのはず。
巻末の
主な参考文献
には
福岡伸一さんとか
ローレンス・クラウスさんとかの
著作が含まれていた。
ぼくはこういうモノの見方には慣れ親しんでいるので
とても愉快に読んだのだが
こういうモノの見方に慣れていないひとにとっては
ピンとこないかもしれないし
逆に
目から鱗が落ちるように
世界観ががらっと変わるひともいるかもしれない。
それくらい
読むひとによっては内容が充実していると思う。
うっかりカルト教団の信者になってしまいかねないひとは
ぜひとも読んでおけばいい。
あと
世界
に興味がある青二才も。
それに
考えがいちど凝り固まったら
理屈でその考えを変えるのはほぼ無理で
あとは感情を揺さぶる体験くらいしか
凝り固まった考えを変える術はない
っていうのは
残念ながらわかるような気がする。
--教団X--
中村文則