ひとけのない住宅街を車は走る。
“歌は同じ”
モノローグ。
豊かさと貧しさについてのオザケンらしい問題提起。
ステレオ・タイプな価値観に疑問を投げかける。
けれどもその疑問は疑問としてステレオ・タイプなのが皮肉。
わかってやってるんだろうけどやはり青い若さに思える。
それがオザケン。
マイナーで哀愁の漂うイントロが流れてくる。
“カローラ2にのって”
わお、なんだかフォルクローレみたいなアレンジ。
コンドルが飛んでいるような。
これもいいんだけど軽くてポップでかわいいオリジナルが聴きたいとやっぱり思ってしまう。
――彼を迎えに出かけて もう1時間待ちぼうけ カローラⅡはその時 私の図書館
“痛快ウキウキ通り”
タイトル通りウキウキしちゃうメロディー。
――喜びを他の誰かと分かりあう それだけがこの世の中を熱くする
目的地にたどり着く。
車を停める。
外の空気は冷たさを増している。
あっけないほど早々に用件を済ませ車に戻る。
エンジンをスタートさせる。
再び始まる音楽。
不穏な緊張感をはらむ前奏。
“天気読み”
――真っ白な壁ぶちあたる彼ら 何という言葉もないまま 嫌な返事ってのだけ狙ってるから
さて。
帰りは急ぐわけでもない。
高速ではなくまちの道を行こう。
毅然と始まる次の曲。
“戦場のボーイズ・ライフ”
――この愛はメッセージ 僕にとって祈り 僕にとって射す光 いつだって信じて!
なんてかっこいい曲。
青年の決意。
――続きをもっと聞かして!
間髪を入れず次の曲へ。
“強い気持ち・強い愛”
力強いポップ・チューン。
――長い階段をのぼり 生きる日々が続く 大きく深い川 君と僕はわたる
孤独を愛するぼくだけど
オザケンの曲を聴いていると
人間の最小単位は恋人どうしなんじゃないか
ってそんな気にもなる。
誰かと歩く人生。
静かな住宅街を抜けて賑やかな市街地に出る。
このあたりはひとが多い。
道行くひとはそれぞれに日々を暮らしている。
オザケンならずとも愛すべきひとびと。
リズミカルな曲が静かに始まる。
“今夜はブギー・バック”
オザケンのメロディー・パートがひと段落してスチャダラパーが登場。
沸き立つオーディエンス。
――コレよくない?よくないコレ?よくなくなくなくなくなくない?
よいんじゃないかな。
ってかよい。
かっこいいね。
途中からは聴いたことのないラップのパート。
スチャダラさんのアレンジだとこういう曲なのかな。
――とにかくパーティーを続けよう これからも ずっとずっとその先も
スチャダラさんとオザケンのコラボにより観衆の盛り上がりが最高潮に達したところでブレイクダウン。
“自転車”
モノローグ。
日本人の安全志向を皮肉る。
自転車に乗っているときの日本人の大胆さにはなるほどってなる。
“夢が夢なら”
蘇州夜曲を思い出すこのメロディー。
中原中也を思わせる詩。
季節は廻る。
――ああ夢の彼岸まで高く架かる橋 萌え立つ霧と蜜の流れる波をたゆたう姿
そしてオトナっぽくシリアスに始まる次の曲。
“麝香”
――あなたがそっとバッグに手をかけ直した時 何気もない仕草に その美しさは昂る
車が都心に入る。
高層ビルが並ぶ。
オフィス街の休日。
ひとはいない。
車だけが走っている。
突然人類が消えた後に残された街をイメージする。
コンパクト・ディスクを入れ替える。
――我ら、時(第二盤)――
小沢健二