我ら、時(第三盤) | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

高架道路に上がれば都心が抜けられる。


坂を上るときの高揚感。


あとは北に一直線。


信号もない。


“笑い”


モノローグ。


世界のジョークについて。


ローカルなものほど連帯感のある笑いになる。


曲も同じ。


っていう論理で次の曲。


“シッカショ節”


やろうとしていることはわからないでもないんだけどオザケンの世界からの飛躍が激しすぎてついていけてないファンも実は多いのではないかな。


まあでもこういうことをしようっていうのがオザケンなんだけど。


“さよならなんて云えないよ”のメロディーに合わせてメンバー紹介。


スカパラのみなさん。


スカパラのアルバム“グランプリ”を思い出す。


オザケンの歌う“しらけちまうぜ”が懐かしい。


メンバー紹介のあとに続けて始まる。


“さよならなんて云えないよ”


――青い空が輝く 太陽と海のあいだ “オッケーよ”なんて強がりばかりの君を見ているよ


のびやかなこの曲。


すがすがしい青春。


美しさ。


若さはそれだけで美しい。


――左へカーブを曲がると光る海が見えてくる 僕は思う この瞬間は続くと いつまでも


――本当は分かってる 2度と戻らない美しい日にいると そして静かに心は離れてゆくと


続けざまに始まるポップなメロディー。


“ドアをノックするのは誰だ?”


早口でまくしたてるような詩。


――風薫る 春の夜 君の心の扉を叩くのは いつも僕さって考えてる


いつの間にか雪が舞っている。


けっこう派手に降っている。


フロントガラスのワイパーが追いつかない。


北へ一直線に伸びる高架道路を降りるともうすぐ我が家。


ライブも佳境。


このまま車の中で聴いていたい。


遠回りすることにする。


“ある光”


ほぼアカペラの短い曲。


詩。


“時間軸を曲げて”


文学度があがる。


――ありがとうという言葉で 失われしものに誓うよ 磯に波打つ潮よりも濃く 我の心は供にあると


こういうのもかっこいい。


一転。


ギターの軽やかなリズムからおあずけのあの曲。


“ラブリー”


――とても寒い日に 僕ら手を叩き 朝が来る光 分かりあってた!


“流星ビバップ”


オープニングの曲を再び。


オーディエンスとともに歌う。


“いちょう並木のセレナーデ”


しっとりとした名曲。


――やがて僕らが過ごした時間や 呼びかわしあった名前など いつか遠くへ飛び去る 星屑の中のランデブー


そしてとうとう最後の曲。


“愛し愛されて生きるのさ”


――とおり雨がコンクリートを染めてゆくのさ 僕らの心の中へも沁み込むようさ


3時間にもなろうかというこのライブを通してぼくはすっかりあの頃のぼくに戻っている。


車のボディーにふりかかる白い雪の情景とあいまって感極まってくる。


――我ら時を行く


――熱心に考え 深夜に恋人のことを思って 誰かのために祈るような そんな気にもなるのかなんて考えたりするけど


ああオザケン。


過ぎ去った青きあのころ。


繰り返されるフレーズ。


美しい記憶。


白い雪。


寒い冬。


どこまでも。


どこまでも。







――我ら、時(第三盤)――

小沢健二