苦手な宮沢賢治さんの作品。
ぼくの感性がかれの創作に追いつかない。
理解したいけれども届かない。
けれども、ぼくには縁がないと諦めつつも目を離せない。
有名なこの詩。
幾度となく通読したはずなのに冒頭と最後くらいしか覚えていない。
引用され過ぎてむしろ手垢にまみれているようにさえ感じられる。
ところが最近たまたま読んだこの一文がぼくのこころに引っかかった。
――アラユルコトヲ ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ああ、賢治はきっとこういうひとなのだろう。
ぼくはこの考えが好きではない。
いや、好きではなくなったというのが正しい。
こどものころはむしろ好きだった。
そういうひとになりたいと思っていた。
自分のことはさておいてみんなを喜ばせるひと。
みんなの喜びが自分の喜びであると感じられるひと。
けれどもおとなになるにつれてその考えは変わってきた。
いまでも自己犠牲の考えは好きだが、それはそれしか手段がなくなったときの最後の選択。
そうでなければむしろ自分もちゃんと勘定に入れてほしい。
ひとりひとりの取り分が減るとしてもみんなで分かち合おうよっていいたい。
賢治が喜ぶ姿をみたいよって思う。
いつも賢治ばかりが後回しになっていてなんとも思わない友人たちばかりだなんて、そんなはずはないじゃないか。
同じ高さにいさせてほしい。
ひとりだけ遠くに行ってしまわないでほしい。
――雨ニモマケズ――
宮沢賢治