5年ぶりに再読。
ぼくの生き方に大きな影響を与えた1冊。
同時期に、
ミヒャエル・エンデの“モモ”と、
サン=テグジュペリの“星の王子様”
に出会ったのだが、この3冊に、それまでのぼくの読書とは違った感動を覚えたのだった。
おとなになって社会に出てから出会ったのが大きかったと思う。
こどもの頃に出会っていたら、これほどの影響は受けなかっただろう。
“モモ”と“星の王子様”とは全然違うタイプの本に思える“老人と海”なのだが、その頃のぼくには何か相通じるものが感じられたのだろう。
で、“老人と海”である。
やっぱりカッコいい。
ハードボイルド・リアリズム。
徹底的な外面描写。
登場人物の内面なんて詮索しない。
これまでは、肉体と自然との直接的な関係がこの作品の魅力だと思っていたが、ぼくが好きなのは、サンチャゴの哲学的な思考だと気づいた。
巨大なカジキマグロと死闘を繰り広げている間に、結構、サンチャゴは哲学している。
哲学っていっても小難しい論理をこねくり回すのではなくて、あくまでもシンプルでまっとうな人生を歩んできた人間ならではの根源的な思考だ。
そこが魅力的。
サンチャゴはツキに見放されているかのような日々を最近は送っていたが、淡々と自分を、そして自然を信頼している潔さがかっこいい。
ついつい、自分にとっていまやっている仕事はどういう価値があるのか、自分にはふさわしくないのではないか、こんなことやっていても時間の無駄なのではないか、なんて思ってしまうときがあるのだが、そういう時にはぼくは、この作品を読んで自分を奮い立たせている。
いや、奮い立たせる、っていうのはちょっと違うかもしれない。
自分のやっていることを肯定したくなる、っていう方が近いかも。
逃げずに、目を逸らさずに、自分のやるべきことをやる。
今回、この作品を読んでいる時に、サンチャゴとONE PIECEのルフィがダブって見えた。
もしかしたらこの二人の思考パターンは似ているかもしれない。
そう思うのはぼくだけかな?
結局、ヘミングウェイではこの作品しか読んでいないのだが、何度読んでもこの作品は爽快だ。
決してグッド・エンディングではないのだけれど。
巻末に訳者の福田恆存さんが書いている“『老人と海』の背景”もなるほどと思う内容だ。
あの頃のアメリカとは時代は変わってしまっているかもしれないが。
――老人と海――
アーネスト・ヘミングウェイ
福田恆存 訳