ネイサン・イングランダーさんの“アンネ・フランクについて語るときに僕たちの語ること”を読んだのをきっかけにして、本家を読んでみた。
すごく短い作品。
レイモンド・カーヴァーさんは、短編の名手って感じ。
ふた組の夫婦の会話で展開する。
会話が洒落てる。
決して明るくはない、不穏な会話であるにもかかわらず、知性とユーモアで陰湿にならない。
けれどもその実、そうとう痛々しい内容である。
もうちょっと素直に不安がったり悲しがったりすればいいのに、と思う。
アメリカの知的なインテリは、悲しみもユーモアに包んで語らなければならないということか。
だとすると、アメリカの知的なインテリというのは、つらいものだな、と思う。
といいつつ、メルは、自分ではユーモアを交えて話しているつもりなのに、あからさまに攻撃的で、これじゃあ苦しんでいるのがバレバレだよな。
この作品、確かにオシャレではあるが、ぼくは“アンネ・フランクについて~”の方が好き。
ところで、村上春樹さんの訳で読むと、まるで春樹作品のように感じられるから不思議。
――愛について語るときに我々の語ること――
レイモンド・カーヴァー
訳 村上春樹