キャパの十字架 | (本好きな)かめのあゆみ

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沢木耕太郎さんの名前は「深夜特急」の作者として知っていたけれども、実は作品に触れるのはこれが初めて。


今年の初めごろにNHKの番組で沢木さんが報道写真家、戦場カメラマンのロバート・キャパを追っていたのを観て、キャパの著作、「ちょっとピンぼけ」を読んだのですが(記事はこちら→ )、そのときにブロガーさんからご紹介いただいたのがこの「キャパの十字架」です。


なるほど。


このタイトルにはうなずけます。


まさに十字架。


沢木さんの大胆な仮説が事実ならば、たしかにキャパは相当重たい十字架を背負っていたことになります。


それはあかんやろ、とも思いますが、そのあかんやろが自分の力ではどうしようもなくひとり歩きして大きな意味を帯びてしまう。


自分の力ではどうしようもなく?


いや、どうにかなったかもしれないですが、誰がそれを責められるでしょう。


キャパのもっとも有名な写真、「崩れ落ちる兵士」の謎に迫ろうとする沢木さんの情熱は激しい。


おとななので目に見えてわかりやすい熱さではないのですが、やってることや考えていることはとても熱い。


読みながら、トーマス・トウェイツさんの「ゼロからトースターを作ってみた」(記事はこちら→ )を思い出しました。


スペイン、アメリカ、イギリスと飛び回り、実験と調査により論理的に仮説を立証しようとする試みに、ちょっと証拠というには弱いのではないのか?思い入れが強すぎるのではないか?と思う部分もなきにしもあらずなのですが、そういうのを抜きにして、謎解きミステリを読むような興奮がありました。


「ちょっとピンぼけ」を読んだときに、なぜにキャパはそんなに危険な場所に飛び込んでいくのか、そんなに名声が欲しいのか、血に飢えているのか、生死のはざまのスリルを味わいたい死にたがりか、という感想も抱いたぼくなのでしたが、キャパにはそうしないではいられない理由があった、まさに十字架を背負っていたのかも、と思うと、よりキャパの魅力が増すのでした。


同時に、写真とはなにか、真実とはなにか、ということも考えさせてもらいました。




――キャパの十字架――

沢木耕太郎