いまさらながら読んでみた。
おっと、いいじゃないか。
繊細で静謐。
こどもからおとなになる前のその一瞬のはがゆさせつなさもどかしさこわれやすさ、そしてきらめきとやさしさ。
説明が少ないのがいい。
行間に感性があふれている。
おとなになるということは何かを失うことだというけれども、そう、なんでもかんでもおとなになればいいってもんじゃない。
こどもの方がおとなよりも優れているなんてことはたくさんある。
おとなの事情はわからなくても、ひとの気持ちはわかるんだ。
はじめて絵柄をみせてもらったときには、いまひとつどこがいいのかピンとこなかったけれども、物語の持つ気配にこの華奢でナイーヴでそれでいてどこか野性的な線が合っている。
桐山零くんはこれからどうなっていくのか。
将棋と彼と三姉妹の関係は。
零くんと香子、歩との傷が癒されることはあるのか。
零くんにとっての将棋が、誰かとつながるための思いつめた「道具」から、盤上の対話を楽しめる「目的」になる日はやってくるのか。
さよなら絶望先生が終わってしまってからあたらしい漫画を探していたのでしばらくはこれを追ってみよう。
すでにコミックスは8巻まで出ているようなので、ゆっくり追いかけていたらいずれ追いつくだろう。
ちなみに先崎学棋士のライオン将棋コラム3の三手詰めはなんとか解けた。
初歩中の初歩とはいえうれしい。
人生の詰めは甘いが、将棋の詰めも甘いぼく。
そんな将棋が苦手なぼくだけどククハチジュウイチマスの盤上の宇宙で繰り広げられる真剣勝負のドラマが好き。
ところでぼくもあかりおねいさんに拾ってもらってふくふくにしてもらいたいなあ。
――3月のライオン(1)――
羽海野チカ