熱狂的な愛読者さんとは異なって
ぼくにはいまひとつしっくりとこない
梶井基次郎さんの作品たち。
なんだろう。
鋭敏すぎて理解しづらいというかなんというか。
けれどもこの
Kの昇天
はぼくにもその儚い美しさが伝わってきた。
ちょうど満月が近付いているこの時期。
夜空をみあげると仄かに白く反射する月光に心を奪われる瞬間があるせいだろうか。
満月の夜の砂浜。
己が影に魅入られるK。
墜落するイカロス。
寄せては返す波の静けさ冷たさ。
こういうのはいいね。
現実のぼくのまちは。
雨があがった。
西の空にはまだ残る雲間からかすかにのぞく赤い夕陽。
まだ薄明るい東の空にはややいびつなまるい月が昇ってきた。
さて今宵はビール片手に季節外れの月見などを愉しんでみようか。
――Kの昇天――
梶井基次郎