父と暮らせば | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

やっぱり日本には

井上ひさしさんが

必要だなあ。


現在の日本のあれやこれやを

井上ひさしさんなら

どう感じて

どう発言して

どんな作品を創造するだろう

ってあれからしばしば考えます。


この

父と暮らせば

原爆を投下された3年後

昭和23年(1948年)7月の最終火曜日の午後5時半

広島市、比治山の東側の主人公の家で始まります。


登場人物は

娘と父の二人きりです。

(父はとある設定なのですが)


戯曲ですので

二人芝居です。

(これにも実は仕掛けがあります。)


完全なる会話劇です。


むずかしいことをやさしく

やさしいことをふかく

ふかいことをゆかいに

ゆかいなことをまじめに


っていう井上ひさしさんのモットーは

もちろんこの作品でも健在です。


ゆかいなのにまじめです。

まじめなのにゆかいです。


井上ひさしさんの作品を読みたくなるのは

ぼくが自分の怠惰を叱ってもらいたいと

思っているときかもしれません。


なんだか読むときに

自然に姿勢がぴんとなるんですよね。


決してむずかしい内容じゃないんですよ。

ほんの100ページくらいで

速い人なら1時間もあれば読めちゃうくらいのボリュームだし。


でもね

うっかりすると

ただのおもしろくて泣ける話

で終わっちゃうくらいあっさりしているのに

しっかり読むと

実に厳しいことが書かれているんですよね。


ああぼくって

大事なものを見失っているな

いやわざと目を逸らして気づかないふりをしているな

できないいいわけを並べてごまかしているな

って嫌でも気づかされます。


この戯曲で語られている感性が

昭和の遺物ではなくて

21世紀に生きるぼくたちのこころにも

残っていてほしいけど

もしかしたらあぶないかもしれないな

って心配してしまいます。


っていうかまず自分

しっかりしなくちゃ。





劇場の機知--あとがきに代えて

今村忠純さんの解説

も必読です。





-父と暮らせば-

井上ひさし