(其の二 アマテラスとスサノヲ - 高天の原の姉と弟 はこちら )
其の三 スサノヲとオホナムヂ - 文化英雄の登場
高天の原から追いやられた
スサノヲ。
さまよう道中で
オホゲツヒメに食べ物を乞い
与えてもらったが
オホゲツヒメがその食べ物を
自分の鼻や口や尻から取り出したのを
不愉快に思い斬り殺す。
どこから出すねん
とオホゲツヒメに突っ込みつつも
スサノヲも無茶苦茶で
なんだこりゃ。
でも
神の世界でいちいち道理が通ると考えること自体が
不遜。
とりあえずいつもどおりおもしろがっておく。
とにもかくにもこのことが
ぼくたちが今もいただいている土の恵みの
おこり。
スサノヲは出雲の国の肥の河のほとりで
老いた男と女と娘が泣いているところに出会う。
オホヤマツミの子
アシナヅチと
その妻
テナヅチ
そして娘の
クシナダヒメ。
クシナダヒメは
近々
コシノヤマタノヲロチに
食われることになっているとか。
スサノヲは
ヤマタノヲロチを倒す代わりに
クシナダヒメをもらう約束をする。
知恵を働かせて
スサノヲはヤマタノヲロチを倒す。
酒に酔わせる
という方法で。
スサノヲがヤマタノヲロチを切り刻んでいると
尾のなかからツムガリの太刀が出てきた。
恐れ多くて怪しげなその太刀を
スサノヲはアマテラスに遣いを出して差し上げる。
それが天皇家の三種の神器のひとつ
草薙の太刀。
ハヤスサノヲはクシナダヒメと結ばれ
子を生む。
クシナダヒメだけではなく
カムオホイチヒメとも結ばれる。
一夫一妻制とか固いことは
神の世界では関係がないもよう。
子孫が子孫を増やし
やがて
オホクニヌシ
が生まれる。
オホクニヌシはほかにも
オホナムヂ
アシハラノシコヲ
ヤチホコ
ウツシクニタマ
とあわせて5つの名を持つ。
神の名は能力をあらわす。
現代風にいうとマルチタレントなわけである。
ここから
オホクニヌシの
出世物語がはじまる。
オホクニヌシには腹違いの兄弟神が80あまりおり
互いに競い合っていた。
80の神々は稲葉(因幡)のヤガミヒメを妻にめとろうと
出雲の国から競って東に向かって進んでいた。
オホナムヂ(オホクニヌシ)は最後尾で
荷物持ちとして付き従っていた。
気多の岬で皮を剥がれたウサギに出くわす。
80の神々はウサギをからかって
酷い目にあわせる。
あとからたどり着いたオホナムヂは
ウサギにことの成り行きを聞き
知恵を授けて助ける。
荒ぶる神スサノヲの子孫の割には
このオホナムヂはやさしい知恵者である。
このやさしさに惹かれたのか
ヤガミヒメはオホナムヂを夫に選ぶ。
怒り狂った80の神々は
オホナムヂを罠にかけて殺してしまう。
オホナムヂの母神はなき悲しみ
オホナムヂを復活させる。
それを知った80の神々は
ふたたびオホナムヂを殺す。
母神は
ふたたびオホナムヂを復活させ
木の国(紀伊の国)のオホヤビコのもとに逃がす。
80の神々は木の国まで追ってくる。
オホヤビコはオホナムヂを
根の堅州の国のスサノヲのもとに逃がす。
根の堅州の国とは
大地の下にあるあらゆる生命力の宿る根源の世界。
いつの間にかスサノヲはこんなところに落ち着いていた。
オホナムヂが根の堅州の国にたどり着くと
スサノヲの娘
スセリビメに出会いふたりは結ばれる。
スセリビメは家にオホナムヂを迎え入れるが
父のスサノヲはオホナムヂに嫌がらせ(試練?)を
三度くわえる。
三度の試練を
スセリビメやねずみの助けと
自らの知恵で切り抜けたオホナムヂは
スサノヲの宝物の生太刀と生弓矢
そして天の詔琴を持ってスセリビメと逃げ出す。
スサノヲは追っては来るものの
オホナムヂとスセリビメにエールを送る。
なんだかよくわからない展開だが
おもしろい。
スサノヲの助言どおりにオホナムヂ(オホクニヌシ)は
スサノヲの家から持ち去った生太刀と生弓矢でもって
80の神々を追い払い
葦原の中つ国を統べ始め
はじめて国をつくった。
今回の話も読みどころ満載だ。
ヤマタノヲロチ退治
因幡のシロウサギ
オホクニヌシのスサノヲ訪問
国の統一
ぼくの記事では
それぞれの話はかなり端折っている。
ぜひとも本を読んでもらいたい。
口語訳ならではの
リズムが心地よい。
ちゃんと知らなかったこの国の神話が
楽しみながらするすると頭に入ってくる。
日本全国を飛び回る壮大な物語なので
これからの旅行の楽しみにも深みが増すことだろう。
疑問な点がある。
古事記は戦前戦中の天皇崇拝教育に活用されたというが
いまぼくが読んでいるこの自由奔放な物語を
いかにすればそんなかた苦しいイデオロギー教育に
活用できたというのだろう。
この古事記は読み物として
実にエンターテインメントな仕上がりになっているのである。
に続く。
-口語訳 古事記 〔完全版〕-
訳・注釈 三浦祐之