陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに
乱れそめにし われならなくに
河原左大臣
われならなくに
を
我なら泣くに
と勘違いしていました。
わたしのせいではないのに
なんですよね。
かなり技巧的な歌のようです。
しのぶもぢずり
っていうのは
忍草で摺ったもじり模様の布なんですって。
もじり模様っていうのは乱れ模様で
その布が表象するのは
忍ぶ恋と乱れた心。
乱れそめにし
は
布の乱れ染め
と
恋の乱れ初め
が掛けられているということで。
で
こんなふうにわたしの恋心が
陸奥のしのぶもぢずりの模様のように乱れはじめているのは
誰のせいかっていうとわたしのせいではなくて
ほかならぬあなたのせいですよ
とこうなるわけ。
いまならこういうまわりくどい愛情表現は
なかなか通じないけれども
みやびの世界では
婉曲な知的風雅な表現に
恋人たちは胸きゅんだったんでしょうね。
絵になります。