ぼくとカフカ | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

ぼくはカフカさんの作品が好きである。


けれどもこのブログでは

さほどカフカさんの作品については語っていないので

少し触れておきたい。


というのも

なんだか近々カフカ・ブームが起こりそうな

気配を感じるからだ。


いわゆる

電車に乗り遅れるな

である。


カフカさんの作品が好きといっても

読んだ作品はこれまで3作なので

浅いといえば浅い。


しかも最近は読んでいないので

内容の細かい記憶は残っていない。


とはいえ

作品に共通する不条理感などが

印象的にぼくに植え付けられており

今日はそのあたりの記憶を

たどっていこうと思う。


審判

変身

の順番で読んだ。


審判と変身は

それぞれ3回かそれ以上は読んでいる。


審判

はある日

突然逮捕された主人公の物語。


逮捕された理由も分からず

しかも逮捕されたといっても

別に身柄を拘束されるわけでもなく

たまに裁判所に呼ばれることを除いては

いつもどおりに生活ができる。


変身

はある朝

目覚めたら虫になっていた主人公の物語。


はあるまちに仕事を依頼されたのに

いっこうに仕事をさせてもらえず

依頼者にも会えないという

測量士の主人公の物語。


いずれの作品でも

ある日突然ありえないような重大な問題が

身に降りかかっているのに

わずかに違和感を感じたり

ぐちぐち愚痴りながらも

それをある種

許容の範囲内であるかのように

主人公やその他の登場人物たちが対応していく。


ぼくが日常生活でカフカさんの作品を思い出すのは

なんか変かも

と思うようなことが

あたりまえのように行われている光景にでくわしたとき。


理由を聞いてもだれも説明できないし

そもそもなぜ理由が必要なのかと

いぶかしがられるような場面がしばしばある。


いいから黙って従いなさい。


それをいう人は

理由を隠しているのではなく

理由を知らないのである。


ぼく自身も

理由を知らないまま

ほかの人になにかを依頼することもある。


いや、いつもこうやってるから。


審判

のなかで

主人公を逮捕した男たちが

逮捕の理由を主人公に問われたとき

そんなことをおまえが知る必要はない

というようなことをいう。


そもそも男たちも逮捕の理由など知らないのだ。


ただ

上司に逮捕して来いといわれたから

逮捕しに来たに過ぎない。


だが

男たちに迷いはない。


なぜならば上司に命じられたことを

実行しているからだ。


いわば

上司に命令されたから

というのが理由だ。


ほんとうにそれを理由といえるのか?


さらに

主人公を裁く裁判官たちですら

同じようなもんだ。


逮捕というのは大げさなことかもしれないが

日常生活でもこういう場面は

よくみればそこかしこにある。


でも

ぼくたちはあまりそのことに気づいておらず

むしろありのままに受け入れている。


その方が楽だからかもしれない。


主人公たちも

しばしば抵抗を試みるが

やがてその不条理な状況に慣らされていく。


逮捕の話でいえば

オスカー・ワオ

オリガ・モリソヴナ

みたいに

審判

以上に不条理な扱いを受ける場合も

世界には普通にある。


まあ

ぼくはこういう得体の知れない

その世界独特の不文律みたいなものに

翻弄される物語を読んで

自分自身が経験する

不条理な出来事への耐性を

無意識に鍛えようとしているのかもしれない。


こんなふうに書いていると

カフカさんの作品は暗いばかりでしんどそう

と思えてくるが

実際に読んでいると

そこを突き抜けて

なんだか笑えてくるのも事実だ。


かなりレベルの高いユーモアや風刺の精神が

作品に込められているようにも感じる。


現実世界の先取り。


いってみれば

世界は冗談のように不条理だ。





あいかわらず

好きな気持ちが空回りして

充分に表現しきれていないことを

もどかしいと感じつつ

このへんで諦めておく。


ああ明るい不条理。




-審判-

フランツ・カフカ

中野孝次 訳


-変身-

フランツ・カフカ

高橋義孝 訳


-城-

フランツ・カフカ

前田敬作 訳