活字が躍っている。
躍動している。
どんな踊りかっていうと
決して社交ダンスのように上品なものではないが
きわめて清々しい。
読んでいると
あまりのリズムのよさに
あたかもぼく自身が
話し上手になったかのような
錯覚をおぼえる。
ぜんぜん
そんなことないんですけどね。
自由奔放な
噺家の子として生まれた主人公。
次々と変わる母。
母が変わるたびに増える
異母きょうだい。
職も転々。
そして終盤の泥臭くも
ドラマティックな展開。
短い物語に詰め込まれた
ひとかたならぬ人生の変転。
ながらく愛され続ける
庶民の小説といいたくなる。
圧巻は
少年時代の
まちなみの描写。
夜店の幻想。
もちろんこの時代の経験は
ぼくにはないけれども
なんだか目の前に
その光景が浮かび上がるから
いとふしぎ。
情熱。
技巧。
うまいなあ。
大阪人ならば
やはり必読。
-アド・バルーン-
織田作之助