富嶽百景 | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

昨日の

田子の浦に

で富士山のことを考えていたら

久しぶりに読みたくなったので

読んでみました。


久しぶりに読むと

読み手であるぼくの置かれている状況が

変わってしまったせいか

あらたな感想を抱きます。


富嶽百景

の名のとおり

実にさまざまな

人間の心模様が

描かれています。


文庫でわずか30ページに

凝縮されています。


凝縮されすぎて

以前のぼくでは

ピンときていませんでした。


芸術も極まるとシンプルに到達する

とはいいますが

シンプルすぎると素人には

充分伝わらないようです。


今回は

ぼくの読解力も磨かれたのか

気づかなかったところに

いろいろと気づき

名作だなと

こころあらたにしたしだいです。


ユーモアも

卑屈も

諦めも

惨めも

自信も

全てがあざなえる縄のごとくに

ひとりの主人公の心情として

浮かんでは消えます。


心情描写が面白かったし

富士山が主人公の気持ちを投影している点も

画になっています。


書き出しの一文が

カッコよくて

お気に入りです。






他にも好きなシーンはこんな感じ。

(こういう過去の文学作品はネタバレとか

ものともしない強さを持っていますが

念のため改行をしておきます。)











冒頭の富士山への批評。

完全の頼もしさに接したときの人間の態度。

東京のアパートのトイレの窓から見た富士山。

天下茶屋からの富士の眺めへの批評。

井伏鱒二さんとの登山。

お見合い。

富士見西行の狼狽。

町の青年とのやりとり。

町からみた月夜の富士。

雪の富士への批評。

バスでの老婆とのシンクロ。

星が大きい夜の芸術への身悶え。

遊女の一団への批評。

緊張の甲府での見合い相手とのやりとり。

肩たたき。

娘と二人きり。

花嫁への批評。

都会のOLとのやりとり。シャッター。




-富嶽百景-

太宰治