何年か前の夜
テレビをザッピングしていたら
たまたま大竹しのぶさんが
ひとり芝居をしている様子に
出くわしました。
瞬間的に
言葉のリズムや
言い回しがぼく好みで
惹き込まれました。
新聞のテレビ欄を見てみると
作・演出が野田秀樹さん。
納得です。
好きなものは
それと知らされていなくても
分かるものなんですね。
この作品は
智恵子抄の
高村智恵子さんの生涯を
野田秀樹さんがフィクションで
創作したものです。
夫である高村光太郎さんの詩は
今でもぼくたちの胸に
鋭く瑞々しい刺激をぶつけてきますが
その創作の背後にある
智恵子の内面の苦悩や葛藤を描き
智恵子が壊れていく様を
大胆な仮説で展開させていきます。
もちろん
智恵子の裕福な実家が破産したり
一家が離散したりという原因は
大きいでしょうが
光太郎の創作を支えるために
世俗的な苦労を一身に背負い込み
自らの芸術への志向さえ断念しながら
生きてきた智恵子の様子は
実に痛々しいです。
光太郎を尊敬しながらも
同じ芸術を志すものとして
嫉妬をも覚え。
智恵子を狂気へと追いやったのは
ほかならぬ光太郎自身ではなかったのかと。
智恵子抄
未読ですが読まずばなるまい。
その仮説のうえで読む
レモン哀歌。
胸が締め付けられます。
あくまでも
野田秀樹さんの創作の世界の話なので
真に受けてはなりませんが。
それにしても
大竹しのぶさん
凄いです。
80分あまりのひとり芝居です。
変幻自在です。
女優の鬼気迫る迫力を思い知らされました。
天使であり悪魔であり。
舞台美術もシンプルで美しいです。
-売り言葉-
作・演出 野田秀樹
出演 大竹しのぶ