(本好きな)かめのあゆみ

(本好きな)かめのあゆみ

かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

見てくれてありがとうございます。


本好きといいながら、本だけじゃありませんが。

町田康さんの歌集を読んだ。

 

荒々しい悲しみ。

 

町田康さんの小説に通じる短歌が並んでいた。

 

好きな歌をいくつか。

 

知り合いに水だけ出して帰らせてその後わがは薄茶のむなり

 

もはやもうなにもしないでただ単に猫を眺めて死んでいきたい

 

日歸りで入浴したい俺たちは既に裸で歩みをるなり

 

阿呆ン陀羅しばきあげんど歌詠むなおどれは家でうどん食うとけ

 

落武者に飯見せつけて食わさんと棒で殴って服と銭取る

 

木下とたった二人でだんじりをやった苦しみ誰が知るのか

 

ふざけるなおまへそれでもうどん屋か先祖代々俺は石屋だ

 

人の為うどんを作る歳月に別れを告げる午前二時頃

 

東京のお金持ってる人たちは短歌作って遊び暮らすか

 

 

 

 

 

--歌集 くるぶし--

町田康

冒頭の女性三人のやりとりがいけず過ぎて

なんだこりゃ

って感じだったのだが

読み進めていくうちに

主人公の菖蒲(あやめ)の魅力が心地よくなっている。

 

菖蒲の夫に近い慎重派のぼくにとっては

菖蒲のぐいぐい楽しみに向かって突き進んでいく姿は

あまりに危なっかしくて心配だけれど

羨ましい気持ちもある。

 

そこまで快楽を優先できるメンタリティってすごい。

 

現実世界にもこういうひとをときどき見かける。

 

実際コロナに何回もかかったり

酷い目に遭ったりもしているけれど

それでも反省することなく

むしろこのくらいなら大丈夫と経験値を上げて

快楽追及にまい進する。

 

パワフル。

厚かましさ図々しさっていうのも

生きていくうえでは必要だよね。

 

作者の綿矢りささんは

たぶんこんな感じのひとじゃないような気がするので

そのなりきり感っていうのがすごいと思う。

 

的外れかもしれないけれど

読みながら

サリンジャーのライ麦畑や太宰の女生徒のイメージが

よぎった。

 

ラストの菖蒲の決意は

きっとどこかで破綻するだろうけれど

おもしろいから支持したい。

 

ちなみにぼくも

じぶんの脳内で幸福を完成させる技術に取り組んでいる。

 

これってエコ。

最強の錬金術。

 

あと単純に

コロナ禍の北京の暮らしぶりや

生活、文化がこれでもかと描かれていて

ちょっとした滞在感覚も味わえた。

 

食べることの魅力がまじであふれていた。

 

じぶんの街を外国人にこんなふうに表現してもらえたら

かなりうれしいし興味深いと思う。

 

ぜひ北京のひとたちにも読んで欲しい。

 

 

 

--パッキパキ北京--

綿矢りさ

2023年が終わってから早くも4か月が経った。

 

なぜ年末に書けなかったかというと

なんとなく

もう書かなくていいか

という気分になっていたからで

外にはこれという理由はない。

 

今日これもなんとなく2022年の記事を読み返してみたら

これはこれで記録として意味があるかも

と思い立ち

久しぶりに書いてみることにする。

 

2022年2月に始まった

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は

いまだに終わらない。

ウクライナは自由を守るため徹底抗戦しているが

各国の支援も弱まり始め

ロシアがこのまま押し切りそうな雰囲気になっている。

それでいいのか 世界。

 

さらに

2023年10月にイスラム組織ハマスがイスラエルを急襲し

多くの市民の犠牲を出したことから始まった

イスラエルによるガザ地区への攻撃も

いまだに終わらない。

これも当初は率直に

先に手を出したハマスが絶対に悪い

と思っていたのだが

過去の経過を見ていくと

イスラエルもそれまでにそうとう無茶なことを

パレスチナの市民にしてきたようで

そりゃあそういうことにもなるよな

という感覚にもなり

そのうえいまのイスラエルの攻撃は

あまりにも見境がなく

どちらがより悪かという問いを発しないわけにはいかない。

もっともユダヤのひとびとが二千年にわたり味わってきた

苦難の歴史も踏まえると

これは人類には永遠に解決できない問題なのではないかという

絶望感に苛まれる。

 

もちろん世界の争いはこの2つだけではない。

 

世界はいつも危うい。

 

日本ではコロナが2023年5月から5類に移行した。

何年もコロナに怯える生活が続くと想像していたが

いまとなっては杞憂で

花粉症対策をするくらいの予防意識で社会はまわっている。

まったく気にしていないひともいる。

もっとも

コロナで重症化して酷い目に遭っているひとの話も

たまに聞くので

けっして安全というわけではないのだろうが

それでもほかの病気の脅威と同じくらいの危機管理で良いとは

いえるのかもしれない。

 

円安は引き続き続き

昨日は一時1ドル=156円台後半となり

34年ぶりの円安となった。

 

株価もぐんぐん伸び

2024年2月には一時39,156.97円と

ついにバブル期以来の高水準に達し

さらに3月には終値で40,300.00円に達した。

(ちなみに昨日の終値は37,934.76円)

 

2022年に元首相が選挙の応援演説中に殺害されたが

2023年には現首相がおなじく応援演説中に襲われた。

2022年の方は裁判が続いているが

宗教二世の問題はこれを機に社会に認知された。

2023年の方はいまだに動機がわからない。

 

既に亡くなっている者による

過去の未成年者への性暴行で

人気の芸能事務所が終焉した。

社名を変更して芸能活動は続いているが

社会に与えた影響は大きい。

 

お笑い界のカリスマが

9年前の女性への性行為への告発が週刊誌に掲載されたことを機に

芸能活動を休止した。

8年前に結婚しているので

独身当時の出来事ということになるのか。

結婚してこどもが産まれてからは

性に対する意識が大きく変わったのではないかと想像するが

独身時代にどういう意識だったかは気になるところ。

 

じぶんのことでいえば

2023年は仕事の環境が予想外に大きく変わった。

当初はどうなることかと心配していたが

ここまでなんとかやってきた。

 

 

 

 

読んだ本を振り返る。

 

スケールの大きな優しさと強さ。

いまの価値観では流行らないかもしれないけれど

こういう生き方には憧れる。

八郎 斎藤隆介作/滝平二郎画(1月)

 

なぜひとは争うのか。

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を機に考えるひとが増え

この作品に注目が集まっていた。

こどもたちのために。

これは重要な視点だが

戦争当事者に響くかと言われると難しいと言うしかない。

作者には切実な思いがあるにちがいないが

平和な国で読んでいるひとにその切実さが伝わっているかは怪しい。

動物会議 エーリヒ・ケストナー作/ヴァルター・トリアー絵/池田香代子訳(1月)

 

端正な文章で描かれる

かつての流行感冒のいち風景。

当時の文化も偲ばせるし

ひとびとの視点もやさしい。

流行感冒 志賀直哉(1月)

 

圧倒的なスピード感とエネルギー。

挑発的で読む者に問題を突きつける。

シスターフッド。

目の前のことに一生懸命やってきただけなのに。

ちなみに刊行記念のサイン会にも参加できた。

いい思い出。

黄色い家 川上未映子(2月~3月)

 

地球にちりばめられて

星に仄めかされて

に続く三部作最終作。

言語を巡る旅。

ジェンダーを無効化する平和なひとびとの旅。

太陽諸島 多和田葉子(3月)

 

斎藤幸平の思想は日本社会を変えることができるか。

変えてほしい。

変えなければ。

ゼロからの『資本論』 斎藤幸平(5月)

 

これを読んで酒がやめられるかというと

まったくそういうわけではないが

こんなに酒が好きだったひとでもやめられると

実証した意味はある。

しらふで生きる 大酒飲みの決断 町田康(5月)

 

社会で感じるもやもやの一部が言語化されている。

なんかずるい。

そういう感じってあちこちにあるし

そう感じるじぶんの器のちいささに悲しくなるときもあるけど

でもやっぱりもやもやするよね。

おいしいごはんが食べられますように 高瀬隼子(5月)

 

他人からの承認ばかりを気にし過ぎ

他人軸で生きることのぎすぎす。

フォロワー数ZERO 本谷有希子(7月)

 

こういう世界はいまも現実にある。

これだけ管理された社会なのに不思議。

とはいえ背景は時代とともに変わっているようだ。

さいごの色街飛田 井上理津子(9月)

 

気になっていたのでようやく読んだ。

結婚ってそういうことだったのか。

してやられた。

現実入門 ほんとにみんなこんなことを 穂村弘(10月)

 

夫と妻が

互いの日記を隠れ読んでいるのかいないのか。

官能小説かと思いきや良質なミステリだった。

鍵 谷崎潤一郎(10月)

 

こういう水のなかをおだやかに揺蕩うような思考は好き。

水中の哲学者たち 永井玲衣(12月)

 

SF的な思考実験。

安部公房さんの文章が好き。

方舟さくら丸 安部公房(12月)

 

人間はそれぞれの物語を持って生きている。

それは他人からは理解されないものであっても

当人にとっては揺るがすことのできない物語である。

しかしある方法を使うと他人の物語を変えることができる。

ぼくたちはすでにそういう社会に生きている。

インターネットは善にも悪にも強力なツールだ。

人を動かすナラティブ なぜ、あの「語り」に惑わされるのか 大治朋子(2024年2月)

 

ことばにことばをどれだけ積み重ねても

共有できない世界。

虚空に向かって各々がじぶんにしか通じない

(じぶんにすら通じていない?)

ことばを叫んでいるだけの世界。

世界は初手から断絶している。

東京都同情塔 九段理江(2024年3月)

 

未刊の文章がついに文庫化。

生誕100年。

やっぱり安部公房さんの文章が好き。

飛ぶ男

さまざまな父 以上 安部公房(2024年3月)

 

ボディビルに励むひとの心理や生態が垣間見えた。

彼等を身近に感じることができた。

相手を知るっていうことは争いを遠ざける。

我が友、スミス 石田夏穂(2024年4月)

 

 

 

引き続き過去に読んだ本を読み返したくなるこの頃。

 

読み返すと以前とはちがう感想を持つことになる。

善百合子を抱きしめたくなる。

夏物語 川上未映子(1月)

 

互いに傷つけあうような自意識の葛藤に

青春とおなじエネルギーを感じる。

人間 又吉直樹(1月)

 

何回読んでもこの作品は響く。

よくぞ教科書に載せてくれている。

全世代で語り合えるのでは。

山月記 中島敦+ねこ助 乙女の本棚(3月)

 

土地の記憶を読むと

その土地が重層的に見えてくる。

大阪アースダイバー 中沢新一(4月)

 

斎藤幸平の思想が日本のひとびとの意識を変えてくれますように。

人新世の「資本論」 斎藤幸平(6月)

 

青春。

身の回りの出来事への新鮮な感じ方が参考になる。

池尻大橋の小さな部屋

劇場のモチーフにもなっていそうだけど

好きな話。

身勝手な青春。

のんさんも好きらしいのでうれしい。

東京百景 又吉直樹(7月)

 

中島敦の文章はきれがあって最高。

弟子 中島敦(8月)

 

美しい寓話。SF。

万里の長城 カフカ(8月)

 

同時代を生きる者として畏れ多くも共感することが多い。

直観力 羽生善治(10月)

 

誇張と言えるのか。

現実もかように残虐である。

毟りあい 筒井康隆(11月)

 

懐かしく美しい。

特に

クロウリング・キング・スネイク

がめちゃくちゃかっこ良かった。

白いメリーさん

ラブ・イン・エレベーター

日の出通り商店街 いきいきデー

クロウリング・キング・スネイク

白髪急行

夜走る人

脳の王国

微笑と唇のように結ばれて 以上 中島らも(11月)

 

感受性がかなり衰えたので以前のようには刺さらなくなってしまった。

あの頃が懐かしい。

それでも好きなんですけどね。

先端で、さすわ さされるわ そらええわ

少女はおしっこの不安を爆破、心はあせるわ

ちょっきん、なー

彼女は四時の性交にうっとり、うっとりよ

象の目を焼いても焼いても

告白室の保存

夜の目硝子 以上 川上未映子(2024年2月)

 

神話。

ラストはそういえばこんな話だったな。

ドッグランのところと地下駐車場のところが特に好き。

ホサナ 町田康(2024年2月)

 

 

 

 

 

積ん読の本がうずたかく積まれている。

 

2024年元日の能登半島地震の日

こちらは震度4だったが崩れなかった。

 

能登半島地震は発災後4カ月が経過しても

ライフラインがじゅうぶんに復旧しておらず

避難しているひともまだまだ多い。

 

人口減少社会。

つらい話だが生活エリアの集約化は現実の問題だ。

生まれ育った場所を愛する気持ちは尊いが

それを守り続けるには覚悟が必要だ。

 

自助努力

自己責任

が過度に内面化された社会。

こんな社会でぼくたちは暮らしたかったのだろうか。

もうちょっとやさしい社会にならないのだろうか。

方法はあるはずだ。

何かをやめて何かを得る。

現実を直視しつつも理想も抱いていなければならない。

単に現実に流されているだけでは漂流してしまう。