(本好きな)かめのあゆみ -2ページ目

(本好きな)かめのあゆみ

かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

森田真生さんによる

センス・オブ・ワンダー

の訳の部分ももちろん新鮮でいいんだけど

そのあとの

僕たちの「センス・オブ・ワンダー」

がすごくいい。

 

レイチェル・カーソンの意図をよく受け取って

自分なりにその続きを描いている。

 

このやり方は他のひとにもできるだろうから

僕たち私たちの「センス・オブ・ワンダー」は

世の中に無数にあり得る。

 

歓びは細部にある

と言いたくなる。

 

図鑑の動植物と

カードゲームとは

「集めたい」という欲求を満たすという点で

似たような存在だと思っていたけれど

カードゲームのキャラクターたちは顕微鏡で見ても

それ以上の細部はないけれど

現実の動植物は顕微鏡で観察すれば

どこまでも細部につながっていく。

 

その深さこそが現実の動植物の魅力なんだろう。

 

ぼくたちは

観察して見たくないものを見てしまうのを避けるように

表面的な部分より深くものを見るということをやめてしまった。

 

けれども子どもたちは

おそれを知らずにどんどんものを観察していく。

 

たいていのおとなはそれを安全のためとかいいながら止めにかかるけれど

森田真生さんは子どもたちと一緒になって観察をしていく。

 

こんな子育てって最高だな。

 

憧れる親は多いと思うんだけれど

忙しさにかまけてついつい子どもたちを観察から遠ざけてしまう。

 

森田真生さんの文章が

一文一文とても瑞々しくて

平易な文章なのに美しいと感じる。

 

この世界に

「きてよかったね」

と子どもたちもおとなたちも思えるような

そんな世界であってほしい。

 

 

 

――センス・オブ・ワンダー ――

レイチェル・カーソン

訳とその続き 森田真生

絵 西村ツチカ

2024年ももうすぐ終わる。

 

最後の最後でお隣の国では

大統領に逮捕状が出たり

旅客機の大事故が起こったりしている。

 

心配だ。

 

世界では

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻も

ハマスによる襲撃に端を発するイスラエルの報復も

終わらなかったし

イランはアサド政権による独裁体制が終わって

これからどうなるかわからない。

アメリカではトランプ氏が大統領に再選。

イーロン・マスク氏が政権に接触。

 

国内では

衆議院が自公連立で過半数割れし

微妙な政治状況になり

よくもわるくも今後の政治状況は変わりそう。

 

元旦に発生した地震と

夏の豪雨災害により

能登半島は立ち直れていない。

災害列島で生きるとはどういうことかと考えさせられるが

実際に災害に見舞われたことのあるひとしか

行動に移らないのも人間のさが。

 

夏の南海トラフ臨時情報で危機感は高まるが

それでも行動に移らない人間のバイアス。

 

わかっているのにできないということ。

 

夏の異常な暑さと

あまりにも短い秋。

 

SNSと選挙についても課題が噴出した。

成熟への過渡期としてやむを得ない混乱か。

 

そうそう大谷翔平選手。

強力なサポーターと信じていた通訳による裏切りから始まり

結婚

そして漫画みたいな大活躍と

波乱万丈にもほどがあるスケールの大きさ。

びっくりするくらい稀有な存在。

明るい話題をふりまいてくれたけれど

オオタニさんだけで世界が救えるわけじゃない。

 

じぶんのことでいえば

健康診断で初めて心電図で引っかかった。

再検査で何もなかったのでほっとしつつも

たしかに息苦しく感じることが増えてきた。

階段の横にエスカレーターがあったら

確実にエスカレーターを使う。

心肺機能を鍛えようと早歩きなども試してみるが

すぐに忘れる。

歩く速さが遅くなると認知症のサインとか。

死ぬまで働かないと生きていけない(変な言い方だけど)

ので

満足のいく死に方をするためにも健康第一だ

なんて年寄りみたいなことを考えたりもして

すっかり老人思考。

 

そんなことをぐちぐちと愚痴れるくらいには

それなりにやってこられた2024年。

 

世界はこれから居心地わるくなるばかりだと思うので

じぶんのまわりだけでも居心地よくしていきたい

ってみんなが考えて動いたら

それはそれで良い世の中になったりしないかな。

利害衝突してやっぱり無理かな。

 

 

 

2024年の読書を振り返る。

前回が2023年+2024年の4月までだったので

5月以降に読んだものになる。

 

ちゃんと読んだことがないけれど

いろんなひとに影響を与えているから

ずっと興味があったフロイト。

100分de名著で取り扱っていたので

そのテキストを読んだ。

夢は現実の延長にある。

・100分de名著「夢判断」フロイト 立木康介(5月)

 

又吉直樹さんの文章が好きで読んでいるとなじむ。

エッセイも好き。

・月と散文 又吉直樹(5月)

 

話題になっていたので読んでみた。

ゴリラの権利を通して

マイノリティの権利について考えた思考実験。

・ゴリラ裁判の日 須藤古都離(5月)

 

コロナ禍の中国の若い都市生活者の生活が垣間見えた。

中国人が白湯を信頼しているっていうのが本当なら

共感する。

ぼくも白湯大好き。

・パッキパキ北京 綿矢りさ(5月)

 

ひそかに一昨年から短歌にはまっているのだが

ぼくがやっているのは短歌というより

警句らしきものを五七五形式にしているだけなので

こういうちゃんとした短歌に触れると

あたりまえだけど

ぜんぜん違うなって思う。

あたりまえだけど。

・アボカドの種 俵万智(5月)

 

老境のエロじじいに共感しつつ

文豪の美文と巧みな筋立てに感動する。

・瘋癲老人日記 谷崎潤一郎(6月)

 

俵万智さんの短歌とはまたぜんぜん趣きがちがう

町田節炸裂の歌集。

町田康さんの文章も好きで読んでいてなじむ。

・歌集 くるぶし 町田康(7月)

 

上田岳弘さんの小説はたくさん読んでいるけれど

こういう短篇は初めて。

ぼくと考え方やものの見方が似ているような気がするんだよな。

おこがましいけども。

上田岳弘さんの新聞連載

浮動

も楽しみにしながら毎日読んでいる。

・旅のない 上田岳弘(9月)

 

ノーベル文学賞を受賞して初めて知ったハン・ガンさん。

ぼくが知らなかっただけで日本でもかなり読まれていたようだ。

邦訳の作品も多い。

手始めに読んだのはこの詩集。

痛みに向き合っていてつらいけれど優しい。

ことばのひとつひとつがうつくしい。

翻訳の力もあるのだろう。

・引き出しに夕方をしまっておいた ハン・ガン(10月)

 

一文一文をしっかり読み込むスタイルに感動。

作家はたしかにどの一文にも意図を込めているはず。

だからといってこの読み方は

時間がかかり過ぎるので真似はできないけれど

ときどきは立ち止まって一文一文を鑑賞するようになった。

・本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む かまど・みくのしん(11月)

 

おなじみのピーター・ラビットのおはなしの

川上未映子訳!

新鮮。

・ピーターラビットのおはなし ビアトリクス・ポター 訳 川上未映子(11月)

 

流行りの転生ものの島田雅彦バージョン。

もちろん理屈重視の青二才ミックスなので

しっかり斜に構えています。

・大転生時代 島田雅彦(12月)

 

 

今年も過去に読んだ本を読み返したくなって再読した。

これって人生の秋だからなのかな

 

東京飄然を読み返してから

どつぼ超然

この世のメドレー

生の肯定

と読み返していくつもり。

町田康さんの文章が大好き。

・東京飄然 町田康(5月)

 

遂に文庫化ということで読み返した。

ブエンディア一族の100年の盛衰っていうか

生きた軌跡っていうか

圧倒的な世界観。

今回の読書ではウルスラの愛が気に入った。

・百年の孤独 G・ガルシア=マルケス(7月)

 

これから産まれてくる子どもに

産まれたいかどうかを尋ねるシステムを

確認したくって読み返したんだけど

ただの皮肉ではなくて

最初の設定からして変化球だったのを忘れていた。

・河童 芥川龍之介(10月)

 

日本の詩の巨星が亡くなったので

読み返した。

ぼくの青春の詩集。

・詩を贈ろうとすることは 谷川俊太郎(11月)

 

 

 

いまの世界は悪くなる一方だと言うのはたやすい。

実際にそうかもしれないけれど

それは日本で暮らすぼくたちの狭い世界観のせいかもしれない。

 

既存の社会システムでは持続可能性が低いというのは

もうみんなわかっているんじゃないかな。

 

無理をして過去のシステムを延命させようとするのではなく

思い切って理想に向けてシステムを変更する。

そういう姿勢が必要だと思う。

 

もちろん痛みは伴う。

じぶんだけはノーダメージで逃げ切ろうなんて甘いし不道徳だ。

 

子や孫がいるひとはもちろん

そうでないひとも未来に向けて社会を変える決意をしなければならない。

 

その方が楽しくないですか?

本のこんな豊かな読み方は知らなかったよ。

 

いや知っていたのかもしれないけれど

すっかり忘れてしまっていたのかもしれない。

 

かまどさんが

友だちの

みくのしんさんに

本を勧めて読んでいる様子を文字化して

書籍にしたもの。

 

走れメロス(太宰治)

をスタートにして

一房の葡萄(有島武郎)

杜子春(芥川龍之介)

本棚(雨穴さんの書き下ろし)

と4作品を採りあげる。

 

みくのしんさんはまともに読書をしたことがないまま

32歳になったそうで

そんなひとに本を読ませたらどういうことになるか

っていう興味から始まった企画なんだけど

これがなんというかすごくドラマチックで

読書好きを自称するぼくたちの目を開かせてくれる。

 

みくのしんさんは黙読がつらいそうで

まずは音読をしてみる。

 

これがまずこの企画の成功の要因だった。

 

ほぼ1行ごとにリアクションが入るんだけど

そのリアクションがぼくたちの想定を軽く超えてくる。

 

走れメロスひとつとっても

小説の実況を聞いているような新感覚を味わえる。

 

ゲームの実況っていうのがあって

他人がゲームするのを観ていて何が楽しいのかと思っていたけど

観てみたらけっこう楽しかった

っていう経験がすでにあるけれど

他人が小説を読みながらどんなことを考えているのかなんて

想像したこともなかったので

すごく興味深かった。

 

一行一行作者には意図があるはずなので

ほんとうは読み飛ばしたらもったいない。

 

でもぼくなんかはついつい読み飛ばしてしまうことがある。

 

かまどさんの突っ込みというか相づちというか

それもみくのしんさんへの親しみと尊敬がこもっていて

ナイスアシストって感じ。

 

ぼくもこれからこういう読書をしたいと思ったけれど

それはそれでエネルギーの消費が大きそうで心配でもある。

 

ぼくももともと読むのは遅いけど

みくのしんさんみたいにこれだけゆっくりとたっぷりと

一文一文味わって読んでいたら

時間がかかって仕方がないけれど

速読とかよりもよっぽど作品を堪能できると思う。

 

スローライフならぬスロー読書ですね。

 

 

 

 

ーー本を読んだことがない32歳がはじめて本を読むーー

かまど

みくのしん