2025年3月8日(土)14時開演 新国立劇場
ビゼー/歌劇「カルメン」
カルメン:サマンサ・ハンキー
ドン・ホセ:アタラ・アヤン
エスカミーリョ:ルーカス・ゴリンスキー
ミカエラ:伊藤 晴
スニガ:田中大揮
モラレス:森口賢二
ダンカイロ:成田博之
レメンダード:糸賀修平
フラスキータ:冨平安希子
メルセデス:十合翔子
指 揮:ガエタノ・デスピノーサ
合唱指揮:三澤洋史
演奏:東京交響楽団
合 唱:新国立劇場合唱団
児童合唱:TOKYO FM少年合唱団
演 出:アレックス・オリエ
美 術:アルフォンス・フローレス
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先般の二期会公演に続き「カルメン」を観劇しました。新国立劇場の最終日になります
何度見ても飽きないオペラです。
今回のものは2021年に出したものと同じ演出です。前回観ていないので初めての演出です。鉄格子のなかの「かごの鳥」演出がどのような舞台かも楽しみにしていました。
舞台は現代であり、ドン・ホセの所属は軍隊ではなく警察になっています。別に階級があれば軍隊でも警察でも良いでしょう.
ね。とくにカルメンを捕らえるなら軍隊は逆におかしいですから道理に合っています。
但し、日本の警察の制服は違和感があります。日本の警察が乱痴気騒ぎに関与すると観客としては思えないのですよね。
格子については、出演者の心理も含め、制約のある世界で展開される意味も込めてか合理性があると考えます。
オペラの舞台の多くが現代におかれることが近年多く、演出家もいろいろ考えていることがわかります。新たなチャレンジは悪いことではないのでチャレンジしていって欲しいです。
カルメンがコンサートの舞台に上がり芸能人のような扱いを受けていたのも興味深いです。
カルメンのもつ背景民族が虐げられたことから心理的肉体的自由を志向することとされていましたが、少し立場が違っているかもしれません。
近年ジプシーは差別用語と認定され、今回の舞台の訳詞は「ロマ」という文字が踊っていました。通常の翻訳ではその部分は表現されず示されることが多かったですが、今回はやはり彼女の出生を明確にするようにしたのでしょうか。
歌手の面々ですが、カルメンを歌うサマンサ・ハンキーは行動の意図がよくわかる人ですね。まわりくどい表現はないですが、思慮深いカルメンを演じていたように思います。
情熱的なカルメンというよりも体形も声も知的なカルメンといった感じでした。あばずれ女的なカルメンを見続けていたのでとても新鮮でした。
死を前にして、ホセから逃げ惑うのですが、一方でホセに突き放してしまうのではなく理解させたい行動をしていました。
そしてホセを演じたアタラ・アヤンですが、派手さには乏しかったです。陰湿さもいまいちですし、カルメンの追い込み方にやや弱さがありました。激情に満ちた感じに乏しかったように思います。
歌は二人とも卒なく歌い切っていました。
カルメンの境遇小さながハリウッドスター的な感じでもあり、バブリーな女性でもあり下層境遇から這い上がろうという意識を感じませんでした。
最終日の公演でしたが、出演の皆さんに気負いはなくまとまりのある公演だったように思います。
この公演の前にたまたま1978年にカルロス・クライバーがウィーン国立歌劇場で指揮したものをみていました。演出はあのフランコ・ゼフィレッリのものです。ドミンゴがホセ、エレーナ・オブラスツォワがカルメンをしているものでこんな演奏を観劇してみたいと思いました。
オーケストラの弦のうなりも木管・金管の表現も極限のものでした。
一方で東京交響楽団もデスピノーサのもと立派に演奏していましたが、オペラをリードすることなく伴奏に徹していたように思います。第1幕冒頭は裏方のトランペットはきれいに響いていましたが、ピットの首席さんの音がいきなりしくじっていました。
またいつもの首席さんのケアレスミスです。オランダ人でもやっていましたし、緊張感から負のらせんに陥っているかもしれませんね。暖かい目で見守っているので今度は頑張ってください。
「カルメン」はいつも楽しいのですが極限のものを見たいと感じた土曜日の午後でした。
夕方霙(みぞれ)が降り出し寒かったですが、心も寒かったです。
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