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昨日の新日本フィルの演奏は僕にとっての大変なクリスマスプレゼントだった。
ディープ企画の合間にブログもまるで開かず今回のコンサートに専念した。当初このコンサートはルトスワフスキーの管弦楽のための協奏曲とチャイコフスキーの交響曲第1番だったが、11月の初旬ルトスワフスキーが中止になりユンディのピアノによるラヴェルのピアノ協奏曲の変更の葉書が送付されてきた。

 

12月22日 新日本フィル第410回定期  午後7時15分  すみだトリフォニーホール 

ラヴェル/ピアノ協奏曲
ピアノ:ユンディ・リ
チャイコフスキー/交響曲第1番
指 揮:小澤征爾
演 奏:新日本フィルハーモニー交響楽団
 

神降臨!!

僕の席といったら、トリフォニーホールのB席(3階6列29番~9,000円は高いが・・・小澤さんだし・・)の本当に舞台が豆粒にしか見えないところでした。僕が申し込んだときにはもうほとんど完売でチケットがあっただけも奇跡です。それが、曲目変更・・

 

うわーラッキー!!

ユンディといえば「ショパンコンクール」でダンタイソンとともにアジア人で「第1位」を獲得した数少ないピアニストです。実演をずっと聴きたいと思っていたのです。

 

そして、その内容は・・・
「あ~なんて素敵な2時間だったんだろう」ユンディ・リのピアノと小澤の指揮。これで名演が起こらないわけがないです。

 

曲はたったの2曲。それも25分と42分。短すぎますが期待感いっぱいなのです。
観客も非常に若く、館内の熱気がすごい。先般のNHK交響楽団の演奏とは全く異なります。ぼくの席のとなりも高校生のお嬢さんとそのお母さん。いいコンサートになりそうな予感・・・

 

7時15分開演。

 

本当に出てくるユンディと小澤。小澤さん元気そうでした。今年は松本のショスタコ「革命」も聴いたが、その後も体をお悪くしており、体調も気になりました。しかし、いつもの快活な姿・・・

 

ピアノは「STEINWAY&SONS」

第1楽章。いきなり笞(ムチ)の一撃とともに軽快なリズムが始まります。ラヴェルのピアノ協奏曲。打楽器群がはじける。2/2拍子を奏でる。すぐに指揮者に合わせるオーケストラ。バランスが良く軽やかに流れます。
ピアノの音はかげりがなく、しっかりとしたものです。たたくピアノ。ん~、ホロヴィッツに近いかも。そういえば、ホロヴィッツも「STEINWAY&SONS」の愛用者ですがホロヴィッツは自分用のピアノを持ち歩いていましたよね。

すごい。とにかく、この音を1音1音正確に奏でます。コーダになだれ込むダイナミックさに舌を撒きます。
最後「ドドシラソファミレド」とピタッと終わりました。

ただ・・・・    ホルン・・・下手くそ(そそこでやっちゃいますか)!!帰れ!!(うそです。本当に帰っちゃダメだけど)

 

さて、第2楽章。ピアノのソロで始まる。音の作りがサティのジムノペディのような音作り。この音楽の面白いのは右手が3/4拍子を奏でるのに対し、左手は3/8拍子を延々と続けます。

 

天上の音が永遠と続く

 

ピアノがいつまでも美しい。これだからラヴェルはやめられないです。僕はもうこのソロで感動して泣きそうになってしまいましした。ユンディ・・・うますぎます。叩くピアノが一変とてもソフトな音・・音・・音・・
ところがこれに美しいオーボエの音がくっついてくるのです。「もう止めないで」。ゲーテのファウストが最後のところで、自分が所有する領地が生産し続けた時に吐いた言葉。
ぼくもすっかり酔いしれました。

 

ピアノとフルートのソロに始まり、オーボエとピアノのからみになります。オーボエの音がどこまでも美しくピアノと合わせられるます。森明子さんのソロもたまらないですね。
ピアノが男性、オーボエが女性。夕闇せまる美しい風景をいつまでも二人が逢い引きを続けているようなロマンチックな音。
う・つ・く・し・い・よ・う・・・

 

ピアノがオーケストラの伴奏にまわり、幕をとじます。

 

そして3楽章。トロンボーンとトランペットが威力を発揮します。シンコペーションがばっちり決まり、現代的な音を刻む。ピアノはさらに加速し、正確な音をきざみ、ラヴェルの真骨頂をこれでもかと再現します。

独奏部とオーケストラの応酬から一挙にクライマックスへ・・・
大団円。

 

わお~

との声と同時に大拍手(ブラボーなんてお決まりの声援じゃない・・ほとんど奇声!)。会場が揺れるかのようです。これで帰っても悔いはないです(ホルンだけは居残って腕立て100回ね・・)
ピアノのユンディと同じだけオーボエの森さんにも拍手が・・・小澤さんも大喜びでした。

 

さ、ここで本当のうれしいことが起こったのです。ははは!
カーテンコールが3回終わると、いきなり小澤さんが指揮台に「座ります」。アンコールです。

 

モーツァルトピアノソナタK330の第3楽章。速いテンポで弾ききります。これまた、曖昧さのかけらもないピアノ。しっかりと音符を奏でます。

 

大拍手・・・

 

小澤さんと肩を組んでめでたし、めでたし。ところが、またユンディと出てくると、小澤さんが再び指揮台にドッカと座り込みます。

 

ユンディ、ピアノ椅子に座ると弾き出しました(2曲目・・・)。

 

ショパンのノクターンop9-2!!!

 

 もう僕にはここで感想が書けないです。感動が続きすぎて、今も息が止まりそうになりました。速いテンポながら後半ゆっくり終わらせます(この曲今シーズンフィギュアの真央ちゃんがすべったので有名な曲)。僕だけでなく観客皆さんの感動が肌で感じられます。また泣きそうになってしまいました(泣かないけど)。
 そして最後の1音。そして静けさ。誰もが息を止めています。長い静寂・・1秒・・2秒・・3秒・・そして怒濤の拍手。もう死にそうになってしまいました。

 

ガハハ・・・嬉しくて自分が壊れそう。彼の解釈はやはりホロヴィッツに似ています。速い、そして強い音さらに正確な音。すっかりチケット代の元をとってしまいました。大満足。

 

今度こそ小澤さんと肩くんで出ていくはずでしたが、ここで観客から2つのプレゼント。引っ込んだ後、また2人で肩くんで出てきたと思ったら小澤さんがユンディをピアノのイスに座らせポンポン肩をたたきました。

 

館内はうれしさの大爆笑。

 

3曲目のアンコール。生きてて良かった 中国民謡 「サンフラワー」

 

てきぱき弾いて、今度は本当に小澤さんと肩くんで去っていきました。

サントリーホールのプロコフィエフも行きたかったですね。超残念でした!

 

 

休憩後、メインのチャイコフスキー。「冬の日の幻想」。これ絶対的な名曲です。チャイコフスキーで最もロシア音楽を感じさせる1曲です。そしてこの曲はチャイコフスキーの要素を全て兼ね備えています。
ここでも小澤さんは指揮棒を使用せず「素手」で指揮をされました。

 

的確な指揮。かっこいい。もう本当にかっこいいです。前のめりにリズムどおり美しい楕円形を描きながら、音が出てきます。音が発せられるのはオーケストラからではなく小澤さんからのようです。
木管軍団とコントラバス軍団が1楽章をひっぱる。Vnが30人、Va,Vcが11人(数えたんだよ)そしてCbが8人、オーケストラ全体で80人はいます。すごい編成です。

 

弦の美しいこの音楽は弦楽セレナードの原点となっています。低音の響きの上にきれいに高音がのっていく、チャイコフスキーの弦の響きがこの時すでに完成されていたのがわかります。
木管が美しい。オーボエもクラリネットも、そしてフルートからファゴット。いろいろな音の重なりがオーケストラと対峙しています。

 

小澤さんの呼吸が聞こえるのです。あの息をすいこむ「スッ」いう音。このコンサートのいいのは、誰も咳をしなかったということです。
そう、演奏の良さとは単に音楽が素晴らしいだけでなく、指揮者の呼吸と、オーケストラの呼吸と観客の呼吸が一緒になることです。僕が言っているのは比喩でなく実際の話です。小澤さんが息を吸い込むとき、僕も吸い込みます。多分ほかのお客も吸い込んでいるのです。名指揮者はオケだけでなく、観客も指揮できるのですね。

 

小澤マジックとはこのことなのですよ。

 

CD聴いても呼吸が合わないが、コンサートではしっかり呼吸が合います。多分これを経験すると小澤批判なんてできなくなってしまうし、よく小澤のCDを非難する人間は彼のコンサートに行ったことがないんだというのがわかってしまうのです。

 

だから僕は小澤のコンサートに通い続けているのです・・・・

 

4楽章まできたときには、もう何が何だかわからない状況。前のめりで聴いていました。
ゆったりと始まります。それからフルオーケストラへ。弦軍団が必死で弓を動かし続けます。上から見るとこの姿が壮観です。1流オーケストラが音を絞り出す姿はいかにも美しい。

 

パート毎の音の流れが自然です。小澤さんの良さは耳の良さとそのバランス感覚。この1番、ロシアの指揮者でもコンサートで何回も聴いたが、大きい音を出すばっかりで、パート毎の別々の音を出し、アンサンブルに欠ける音を何度となく聴いてきたのですが、レベルが違います。この手の演奏をさせたら、小澤さんの右に出る者はいません。彼がウィーンのシェフに君臨できたのはこのバランスある音楽を作れるからだと思います。

 

この4楽章を聴いているうちに後半部分に差しかかって、いつの間にかオーケストラがぼやーっと見えるようになってきました。いよいよこらえきれず、目の中に涙があふれてきました。胸がこみあげてくるのがわかります。かっこ悪いけど・・・

 

何でこんな素晴らしい音楽を作れるんだろう・・・

 

病気をせずに、いつまでも音楽を続けて欲しいです。弦と管が一体化して音が結実する・・

 

猛拍手・・・

 

マエストロへの尊敬でいっぱいに包まれた瞬間だ!!誰もが彼を尊敬しているのがわかります。

 

小澤さん、観客に頭をペコリと下げるとコンサートマスターとも挨拶せず、一目散にフルートの元へ。そして握手。さらにオーボエのところに行って握手。もう観客の拍手は最高潮に達しました。

 

マエストロに続く主役2人。会場の皆がそれを祝福します。皆が彼らに拍手をしたいと思っていたはずです。
クラリネットもファゴットも最高の演奏をしてくれました・・・

 

なんて良いコンサートなんでしょう!!「エクセレントコンサート!!」

 

木管、金管を一回りしてやっとコンサートマスターのもとへ・・・

 

カーテンコールが続き、小澤さんがコンサートマスターを促し、オーケストラを立たようとするが、コンサートマスターの崔 文洙さんはじっとして立ちません(崔さんはこれするの好きですよね)。小澤さんに『最大の敬意を表するため』にオケを座らせたままにしました。芸が細かいです・・・・

 

最後まで楽しませてもらいました・・・よし来年も松本に行くとしましょうか!!

 

【参 考】今年のサイトウキネン「Bプロ」