藤巻隆(ふじまき・たかし)オフィシャルブログ -29ページ目

藤巻隆(ふじまき・たかし)オフィシャルブログ

私のテーマは6つあります。
(1)ビジネス書の紹介(2)医療問題 (3)自分ブランド力
(4)名言 (5)ランキング (6)ICT(情報通信技術)
このブログでは、主に(1)~(4)を扱っています。
(5)と(6)はそれぞれ別のタイトルで運営しています。

イオン 挫折の核心
(日経ビジネスオンラインから)<2>



『日経ビジネス』は 2015.04.27・05.04 合併号
でしたので、今週号は休刊となりました。


そこで、日経ビジネスオンラインから私が興味を
持った記事をご紹介し、自分の考えを自分の言葉
でお伝えします。



尚、本編を早く読みたい方は、 こちら 
クリックしてみてください。



私のブログ 日経ビジネスの特集記事 同様に、
記事の引用と、私個人の考えを明確に分けて、
お伝えしていきます。



尚、イオンに関する日経ビジネスの特集記事は、
下記のページをご覧ください。

日経ビジネスの特集記事(105)
挫折の核心 イオン セブンも怯えるスーパーの終焉(1)



日経ビジネスの特集記事(105)
挫折の核心 イオン セブンも怯えるスーパーの終焉(2)



日経ビジネスの特集記事(105)
挫折の核心 イオン セブンも怯えるスーパーの終焉(3)





これからお伝えする内容は、『日経ビジネス』
2015.04.27・05.04 合併号に、当時掲載でき
なかった記事の概要です。




前回は、
 「トップバリュ、安さ一辺倒から脱却する」
イオンの柴田英二・執行役が語る、
商品政策180度転換(前編)
 

の前半
をお伝えしました。


今回は、後半をお伝えします。







 「トップバリュ、安さ一辺倒から脱却する」
イオンの柴田英二・執行役が語る、
商品政策180度転換(前編)
 

の後半


前回に引き続き、『日経ビジネス』取材班の
インタビューに応じた、イオン商品担当執行役の
柴田英二氏が真摯に語った内容です。


柴田氏の言葉から、イオンの本気度が伝わって
きます。


では、本題に入ります。





 まずは、トップバリュ全体の約9割を占める

 第1象限の商品について、上期中に約2割を

 カットするつもりです。

 さらに、下期中には残った商品の中から約2割

 を追加でカットしたい。

 そのため、残るアイテムは60%くらいでしょう。

 そのうえで、単品ベースの売上高を2倍にする

 つもりです。


 既に改廃したいくつかのアイテムでは、

 結果が出ています。例えばメロンパン。

 たかがメロンパンと思われるかもしれませんが、

 お客さまの要望を生かして商品をリニューアル

 しました。


 リニューアル後の商品の売り上げは、旧商品より

 も3倍近く伸びている。

 

      日経ビジネスオンライン から




イオンでグループの商品戦略を担当する柴田英二執行役





トップバリュ全体の約9割を占める商品を上期、
下期それぞれ約2割ずつカットするということ
ですね。


種類が多すぎたということです。
よくあるケースは、1つのカテゴリーの中に、
類似した商品を何種類も用意して失敗する
ことです。商品を厳しく絞りこまなくては
なりません。


リニューアル商品の中から成果が出てきている
商品があるそうです。例えば、メロンパンです。


具体的にどのようにリニューアルしたかは
分かりませんが、原材料の品質を一から
見直したのでしょう。


背景を探ると、メーカーとの「共創」による成果
と推測できます。イオンの担当者とメーカーの
担当者が膝を突き合わせてミーティングを繰り返し、
試作段階で試食し、何段階にもわたってチェック
を繰り返したのでしょう。


前回、お伝えしたように、従業員に実食してもらい、
率直な感想をフィードバックしたことも、
リニューアルに貢献したと考えられます。







 販売ボリュームの大きい商品ほど、改廃が出来て

 いないがゆえにダメージが大きかったわけです。

 ですが今後は、少なくとも年に1度は商品の評価を

 行いたい。ベンチマーク商品に対する優位性が

 維持できているのかを評価する必要があるでしょう。


 開発当初は、ベンチマークした商品よりも明らかに

 優位性があり、お客さまの支持を得ていた。

 けれどその後、お客さまの変化に応じて、

 ベンチマークしたNB商品は変わっていっている。

 対してトップバリュが変わらなければ、NBに比べると、

 相対的に競争力のないものになってしまいます。

 だからこそ、これからは年に1回は、お客さまの評価

 を確認するわけです。

 

      日経ビジネスオンライン から





何事にも言えることですが、
「これはが完成品であるから、
もう改良の余地はない」
という話は、ありえないということです。


常に変えていかなくてはいけないのです。


ウォルトディズニーが語ったとされる、
「ディズニーランドは永遠に完成しない」
という言葉があります。


お客様を飽きさせないためには、常に、
リニューアルしていかなくてはならない
のです。


テーマパークだけに課された課題では
ありません。


現状維持は、相対的に見ると、後退を意味
すると認識するべきでしょう。


セブン&アイ・ホールディングス会長兼CEOの
鈴木敏文氏が、

『鈴木敏文 商売の創造』
(緒方知行 編 講談社 2003年10月22日
 第1刷発行)

の巻頭で書いているように、



 われわれにとっての最大の競争相手は、

 同業の他社・他店ではありません。

 世の中の変化、お客様のニーズの変化

 こそが最大の競争相手なのです。

 

  (前掲書 P.1)


という意識を決して忘れてはいけないのです。





 最初にカテゴリーマネジメント戦略があり、

 それを実現するために、NB商品の調達や

 PB商品の開発をどうするのか考えていました。

 ホワイトスペース(空白地帯)をなくすために、

 PB商品を開発しようと考えていたのです。

 カテゴリーのホワイトスペースを潰すことを

 優先して、トップバリュ単品が、各カテゴリー

 の収益にどのように貢献したかという評価が

 できていなかったわけです。

 作る方に重きが置かれていました。

 本来はそうではなく、競争力を付けるための

 品揃えであり、価格政策であるべきでしょう。

 そのためのNB商品の調達であり、トップバリュ

 の開発であるはずです。

 

      日経ビジネスオンライン から




機械的に商品開発をし、陳列棚のスペースを
埋めることが目的化していたという反省ですね。


お客様が希望する商品開発をし、提供するのでは
なく、言い換えると顧客視点ではなく、
提供する側の論理で商品開発を進め、陳列して
いたのです。


本部の指示通り、PBを陳列棚に並べることが
常態化し、現場の従業員も「考える営業」を
してこなかったことも、イオンが厳しい状況に
陥った原因の一つです。


もちろん、こうした現象はイオンに限った話
ではありません。


どこにでも見られる、「マンネリ化」という
病巣です。


自覚症状が乏しいために、気づいた時には
手遅れだったという「末期がん」にも似た
ものです。「茹でガエル現象」とも言い換え
られます。



「トップバリュを作ること自体が目的化されて
きていた」(柴田氏)


手段が目的化されていたのです。






 イオンの強みはマルチフォーマットにあります。

 しかし、これまで、商品開発は総合スーパーが

 主体となっていた。

 今後は、小型店や、緒に付いたばかりのEC

 (電子商取引)など、それぞれの業態に求め

 られるトップバリュ商品も開発する予定です。

 

      日経ビジネスオンライン から




ネットスーパー(EC)に関しては、
既にセブン&アイ・ホールディングスはダークストア
を展開しています。


お客様からの発注商品を実店舗から品出しするの
ではなく、いわば配送センターから直接出荷する
ことです。スピード配送と売れる在庫商品を可能
にしています。


実店舗から品出しすると、実店舗で販売する商品
に欠品が出たり、集荷・出荷のための人員が余計
にかかってきます。混乱をきたす原因になります。


イトーヨーカドーネットスーパーで実際にあった
ことだそうです。そのこともあり、ダークストア
に変更したのです。


いわゆる「ラストワンマイル(最後の1マイル)」
をいかにして届けるか、が課題となってきています。


お客様が来店してくれるのを待っているのではなく、
店側からお客様の元へ届けるのです。


そのラストワンマイルが、他社に奪われて、
ロストワンマイル(失われた1マイル)にならない
ようにしないといけません。


セブンでは既に稼働しています。


ダークストアについては、

日経ビジネスの特集記事(93)
物流の復讐 変わる産業の主導権(1)



日経ビジネスの特集記事(93)
物流の復讐 変わる産業の主導権(2)



日経ビジネスの特集記事(93)
物流の復讐 変わる産業の主導権(3)


をご参照ください。






 「我々にはこういう競争相手がいて、

 こんな商品をこの価格で売らないといけない」

 という事業会社の声を、これからは、

 より生かしていきます。

 お客さまからの評価と事業会社への貢献度合い。

 この2つによって、トップバリュの評価を行うことを、

 3月からスタートしています。


 (「評価の結果はいかがでしたか。」という

 質問に対して)

 残念ながら、事業会社に貢献していないアイテムも

 たくさんありました。

 私は基本的には、全てのトップバリュが、

 売り上げなどに貢献しているという思いでした。

 ただ貢献のレベルでは、期待値や予想値を下回った

 ものがあったのは事実です。

 

      日経ビジネスオンライン から





今やったことが、すぐに結果に結びつくことは
なかなかありません。


試行錯誤していく中で、複数の「解」が発見
できると思います。


使い古された言葉ですが、「仮説と検証」の
繰り返しによって、精度を上げていくしか
ありません。


ビッグデータを活用するにしても、
「売れた商品」と「購入してくれたお客様」に
関する情報が得られるだけで、
陳列棚になかったために売れなかった機会損失と、
なぜ他の多くのお客様が来店してくれないのか、
という情報は含まれていません。


定量分析と定性分析は切り離せません。
お客様に直接聞くということは極めて大切なこと
です。




次回は、
 「イオンの商品改革、半年先には成果出す」
イオンの柴田英二・執行役が語る、
商品政策180度転換(後編)
 

の前半をお伝えします。






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イオン 挫折の核心
(日経ビジネスオンラインから)<1>



『日経ビジネス』は 2015.04.27・05.04 合併号
でしたので、今週号は休刊となりました。


そこで、日経ビジネスオンラインから私が興味を
持った記事をご紹介し、自分の考えを自分の言葉
でお伝えします。



私のブログ 日経ビジネスの特集記事 同様に、
記事の引用と、私個人の考えを明確に分けて、
お伝えしていきます。



尚、イオンに関する日経ビジネスの特集記事は、
下記のページをご覧ください。

日経ビジネスの特集記事(105)
挫折の核心 イオン セブンも怯えるスーパーの終焉(1)



日経ビジネスの特集記事(105)
挫折の核心 イオン セブンも怯えるスーパーの終焉(2)



日経ビジネスの特集記事(105)
挫折の核心 イオン セブンも怯えるスーパーの終焉(3)





これからお伝えする内容は、『日経ビジネス』
2015.04.27・05.04 合併号に、当時掲載でき
なかった記事の概要です。






 「トップバリュ、安さ一辺倒から脱却する」
イオンの柴田英二・執行役が語る、
商品政策180度転換(前編)
 

の前半


この記事を読んで驚きを禁じえませんでした。


『日経ビジネス』取材班のインタビューに
応じた、イオン商品担当執行役の柴田英二氏が、
ここまで公にしてしまっても良いのだろうか、
という感想を抱いたからです。


現状の問題や今後の戦略を明らかにした
からです。


別の言い方をすれば、良いにつけ悪いにつけ、
イオンが今までの戦略を「180度転換」しなければ、
生き残ることさせ危ぶまれる、とトップが実感した
からだろう、と推測します。


では、本題に入ります。




インタビューですので、柴田氏が語る内容を
中心にお伝えしていきます。





 トップバリュについてのお客さまの評価は、

 価格軸に振れています。

 「安い」ということがメッセージとして

 あまりにも強く伝わったがゆえに、

 安さの評価はあるけれど、安さと共に我々が

 訴求しようとした価格以外の価値について、

 十分に伝えられていなかったと反省をして

 います。


 イオンの一貫した主張としては、

 もちろん価格も非常に重要な商品の価値の

 1つだと思っています。

 「良いものだから高くなってもいい」と

 妥協をするつもりはありません。


 ただ、それが逆に安いことだけにこだわっ

 ていると伝わっているなら、その誤解は

 解かなければならないでしょう。

 事実、従業員にも、我々が安さにだけに

 こだわっているという、エラーメッセージ

 として伝わっていた可能性があります。

 

      日経ビジネスオンライン から




イオンでグループの商品戦略を担当する柴田英二執行役




つまり、価格と価値という2つの軸がありますが、
安さだけで売っていこうとしたところに根本的な
原因があったという認識です。


イオン自ら価格競争に参加してしまったという
反省があります。価値を訴求できなかったのは、
お客様だけではなく、社員に対しても同様だった
ということです。


昔、日本製品は「安かろう悪かろう」と言われた
ものです。品質が良ければ、その品質に見合う
価格設定が必要です。 


今後は、スーパーの特徴の一つでもあった、
「薄利多売」ではどこもやっていけなくなります。


現実的な問題として、会社が儲からなければ
社員に給与を払うことさえ、ままならなくなります。



最近、「トップバリュセレクト」の1商品として、
ギリシャヨーグルトを発売したそうです。







 例えば、先日発売したトップバリュセレクトの

 ギリシャヨーグルトは、プレーンタイプで脂肪分

 ゼロ。こうしたギリシャヨーグルトは日本国内

 でも初めてです。我々の調査によると、

 日本国内で、自分でお金を払ってギリシャヨーグルト

 を食べたことがある人は8%くらいしかいません。


 グループ内の食品スーパーや総合スーパーの

 店長には、発売前にギリシャヨーグルトを食べる

 という体験をしてもらいました。食品売り場の

 責任者や発注実務者にも、トップバリュセレクト

 のギリシャヨーグルトを食べてもらっています。


 ギリシャヨーグルトとは何か。もしくはトップ

 バリュセレクトというブランドとは何か。

 こういうことを伝えたかった。トップバリュの

 良さを従業員に伝えることができたから、

 初日で11万個を販売することができたのだと

 思います。 


 同じように、今まで開発した商品でもその新しい

 価値を伝えていくこと。我々は、それを伝える

 努力を怠ってきたことを、本当に反省しています。

 そのため、まずは従業員に伝えていく。

 これまでは、開発の経緯を文章にして、商品部が

 売り場などの担当者に説明をすれば、その価値は

 伝わると思っていました。

 けれど、それでは全く伝わらなかった。

 一番反省しているのは、この部分です。

 

      日経ビジネスオンライン から





商品の良さや価値を伝えるには、現場で販売に
従事している人たち、スーパーの場合には
パート社員が主体となると思いますが、
食品を試食して味を確かめ、衣料品を試着して、
着心地を確かめることで、本当の良さを知れば、
お客様に強く訴求することが可能です。


こうした「当たり前のこと」をしてこなかった
ツケが回ってきたとも言えます。


社員を「お客様」にできなければ、自社商品を
自信を持って売っていくことはできません。


ギリシャヨーグルトに限らず、自社商品を試食
したことがなければ、お客様から「どんな味なの?」
と聞かれて、その場で「試食してみてください」
と言うだけでは説得力は乏しいでしょう。


現場の従業員が実食していれば、試食した
お客様をその場で説得することはそう難しいこと
ではない、と思います。自分が体験した実感を
率直に伝えれは良いからです。


「トップバリュの良さを従業員に伝えることが
できたから、初日で11万個を販売することが
できたのだと思います」

という柴田氏の言葉に現れています。






 今すべきことは、価値をちゃんと伝えること。

 同時に、つまらないトップバリュではなく、

 ワクワク・ドキドキするようなトップバリュ

 を作ることです。

 

      日経ビジネスオンライン から




私はこう考えています。
現在、市場に出回っている多くの商品に、
「ワクワク・ドキドキ」感が乏しいために、
お客様からそっぽを向かれ、売れないという
現象が起きているのです。


以前と比べ、ソニー製品に魅力がなくなった、
と感じられるのは、まさに「ワクワク・ドキドキ」
感がなくなったからです。


ソニーに限りません。日本製品全般に言えること
かもしれません。もちろん、その背景には、
お客様の価値観が「多様化」(ダイバーシティー)
したという、大きな変化があったことは間違い
ありません。


ありふれた商品では見向きもされないのです。




「トップバリュ」は今までどのようにして開発して
きたのか、柴田氏は次のように語っています。







 現在のトップバリュの全体の約9割については、

 主にNB(ナショナルブランド)商品をベンチ

 マーク(比較対象)として開発してきました。


 既存のトップバリュは、そのほとんどが、

 既存カテゴリーで顕在化されたニーズに対応

 したものでした。この第1象限に入るのが、

 トップバリュ全体の約9割です。


 この約9割を占める部分について面白くない

 商品があるなら、リニューアルして面白く

 しないといけませんし、その価値を評価して

 もらっていないものについては、大胆にカット

 していかないといけません。

 加えて、ベンチマークにしたNB商品よりも、

 価格を含めた価値があるものについては、

 もう1度伝え方を見直す努力をします。

 

      日経ビジネスオンライン から



「トップバリュ」はPB(プライベートブランド)です。
「主にNB(ナショナルブランド)商品をベンチマーク
(比較対象)として開発してきました」、と柴田氏は
語っています。


問題は、NBも今までと同じ品質を維持していたわけ
ではなく、改良が続けられてきていたはずです。
味も成分の配合も少しずつ変えてきていたはずです。
ベンチマークを継続的に行なってきていれば、それで
良いわけではありません。


セブン&アイ・ホールディングスのPB「セブンプレミアム」
のカップ麺を例に挙げれば、麺、スープ、具を
それぞれ異なるメーカーに作らせている商品が
あります。


メーカーからすれば非常に屈辱的な扱いを受けて
いるわけです。どのメーカーでも商品をすべて自社
の材料で出したいわけですが、力関係でままなり
ません。


セブン・イレブンの棚からNBまで排除されかねない
からです。


セブンはNBよりもPBを高く売っているのです。
「PBはNBより安いもの」という固定概念を覆して
います。高付加価値を提供していると自負している
からこそできることです。


最高の素材を結集して最高の商品づくりをする
ことで、「価値」をお客様に提供しているのです。


だからこそ、PB「セブンプレミアム」は NB より
高くても売れるのです。





「トップバリュセレクト」のもう一つの商品の
例を柴田氏が紹介しています。


「タスマニアビーフ」を使ったハンバーグだそう
です。






 2014年度のトップバリュのヒット商品の1つに、

 タスマニアビーフを使ったハンバーグがあります。

 トップバリュセレクトとして発売したこの商品は、

 1食398円もします。一方、通常のトップバリュの

 加工ハンバーグは1食78円。


 レストランで食べるハンバーグを家庭で手軽に

 食べられる、というコンセプトで作りました。

 専門店のレベルの商品が、家庭で食べられる

 わけです。


 レストランの味が再現できているのであれば

 決して高くはない。そういう意味で、品質にも

 価格にもこだわった商品です。

 

      日経ビジネスオンライン から




「品質=価値」を高めた商品を価格に反映
させた実例ですね。


イオンは3つの戦略を考えているそうです。
1つ目はビッグデータの活用で、2つ目は
お客様の声の活用、そして3つ目はPB受託
開発会社の存在だそうです。






 イオンだからできるマーケット視点での商品の

 開発に転換していきます。

 大きくは3つの方法があると思っています。

 1つは、どの小売業にもありますが、来店した

 お客さまがどの商品を、どういう関連で購入

 するかという、いわゆる「ビッグデータ」を

 活用するものです。


 2つ目が、ダイレクトなお客さまの声を生かした

 開発です。トップバリュの販売者はイオンです。

 つまりお客さまの商品に関する問い合わせ先は、

 トップバリュのお客さまサービスで一元管理

 されている。トップバリュに対する要望やお叱り、

 お褒めの言葉を一元管理してきたわけです。


 これからは新しい商品を作るという視点で、

 お客さまの声を分類し直そうと思っています。


 3つ目は、我々のPB(プライベートブランド)

 開発受託会社であるデイモン・ワールドワイド

 の存在です。デイモン・ワールドワイドは、

 欧米のPB商品も手がける専業ブローカーです。

 そのため、彼らは米国や欧州の先進的な動向を

 良く知っています。欧米で成功を収める小売業

 の商品戦略も熟知している。そして、彼らだから

 知り得る情報を、日本でダイレクトに受け取れる

 のはイオンだけです。

 

      日経ビジネスオンライン から



柴田氏の話には出てきませんが、エンド
(ゴンドラエンド、陳列棚の端の部分)の
見直しは大切だと思います。



セブン&アイ・ホールディングス会長兼CEOの
鈴木敏文氏は、12年前に出版した、

『鈴木敏文 商売の創造』
(緒方知行 編 講談社 2003年10月22日
 第1刷発行)

の中で次のように書いています。





 ゴンドラエンドに置くのは、お客様から見て

 魅力ある商品でなければなりません。

 






ところが、イオンの実態はこうでした。




 柴田社長には、忘れられない光景がある。

 昨年、ある店舗を訪れた時のことだ。

 「エンド」と呼ばれる陳列棚の端に、

 トップバリュがうず高く積み上げられていた。

 エンドは、一般的に特売商品や新商品を

 並べる一等地。売り場の鮮度を演出し、

 客の購入意欲を高める重要な場所だ。

 そこに定番商品のトップバリュを置いても、

 客が関心を示すはずがない。

 事実、柴田社長がじっと様子をうかがって

 いても、立ち止まる客は皆無だった。

 

  (挫折の核心 イオン “イオン化”の挫折、
  「解体」で出直し 日経ビジネスDigital から)



 * 柴田社長、昨年5月にイオン九州社長に就任した
   柴田祐司氏





かなり長くなりましたので、
 「トップバリュ、安さ一辺倒から脱却する」
イオンの柴田英二・執行役が語る、
商品政策180度転換(前編)
 

の前半は、ここで終わりとします。


次回は後半をお伝えします。







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「自分ブランド力」強化のためのノウハウ (1)



「自分ブランド力」とは、「自分ブランド」や「パーソナル・
ブランディング」などとほぼ同じ概念です。


一言で言えば、自分を、他人と差別化するための能力
です。「尖った」ところを身に付けるために、
自分を磨いていくプロセスが重要になります。


これで終わりということはありません。
半永久に続けていくことが大切になります。


「◯◯と言ったら、□□□」と言われるようになったら
本物ですね。


「超一流の経営コンサルタントと言ったら、大前研一」

「セブンプレミアムと言ったら、セブン-イレブン」

「高級アイスクリームと言ったらハーゲンダッツ」

などなどいろいろありますね。




しばらく前の話になりますが、伊勢丹新宿店で、
「カリスマバイヤー」と呼ばれた藤巻幸夫さんは、
業界人の間で有名なだけでなく、新聞や雑誌に
しばしば取り上げられ、その個性的な風貌や、
一味違う発言で世間一般に知られていました。
参議院議員でもありました。 著書も多数あります。


究極の「自分ブランド力」を身にまとっていた人
です。残念ながら、2014年3月15日に亡くなり
ました。 54歳という若さでした。


私は、苗字が同じということもあり、幸夫さんの
著作だけでなく、お兄さんの健史(たけし)さんの
著作もよく読みました。


幸夫さんはファッション業界でつとに著名で、
一方健史さんは元米モルガン銀行東京支店長
に在任中、債券・為替・株式トレーダーとして名を
馳せ、「東京にフジマキあり」と言われた伝説の人
です。 健史さんも参議院議員です。
金融のプロフェッショナルで、金融に関する著書が
多数あります。


  
藤巻幸夫 氏(左) と 藤巻健史 氏(右)



藤巻幸夫さんの画像は こちらのWikipedia  から
藤巻健史さんの画像は こちらのWikipedia から
藤巻兄弟の画像は こちらのWikipedia から




藤巻幸夫さんは、自分ブランド力に関する本を書いています。

『自分ブランドの教科書』
(藤巻幸夫 インデックス・コミュニケーションズ
 2007年12月31日 第1刷発行)

この本に基づいて、藤巻幸夫さんが説く、「自分の磨き方」
を一緒に学んでいきましょう!


この本は6つの CHAPTER と、 LAST LESSON で構成
されています。


目次

CHAPTER 01 自分ブランドとは?

CHAPTER 02 自分マーケティングをしよう

CHAPTER 03 「武器」を鍛える

CHAPTER 04 「センス」を磨く

CHAPTER 05 「表現力」を高める

CHAPTER 06 自分ブランドを進化させる

LAST LESSON さらなる自分ブランドを求めるあなたへ





第1回は、CHAPTER 01 自分ブランドとは?
をご紹介していきます。


もちろん、私はこの本を読了しましたが、
何年も前のことですので、読み直しました。


新たな発見がいくつもありました。
読み直すことは大切ですね!


1回で十分に理解できなかったことや、
著者の真意はどこにあったのかを探ることで、
内容をより深く理解できるようになります。
そうした点で、速読はお勧めしません。


速読するなら、一回通読し、二回三回と繰り
返し読む必要があるでしょう。
著者が言いたかったことを、十分に理解し
なくてはならないからです。


著者は1冊の本を書くために、構想を練ったり、
調べたり、思考を巡らしたりといった、
下準備に多くの時間を割いています。 
その上で、執筆に取り掛かるのです。


書き上がった本がたとえ100数十ページ程度で
あっても(この本は160ページ)、
著者は執筆にかかった時間の何倍もの時間を、
調査・研究・思考に割いていることを忘れては
いけない、と思います。


それを5分や10分で読み終わりました、
というのは著者に失礼ではないでしょうか?



さて、藤巻幸夫さんは、『自分ブランドの教科書』
「本書を手にとったあなたへ」というメッセージの中で、
 「自分ブランド」 を定義しています。


まず、そこからスタートしましょう。
定義が明確になっていないと、読者によって解釈が
大きく異なってしまいます。


定義は極めて重要です。
本は、著者と読者の知的対決です。
同じ土俵(統一した定義)でなければ、
議論が噛み合いません。




 自分ブランドとは、あなた自身のブランドのこと。

 「あなた」をほかの誰でもない「あなた」にして

 いるもののことだ。

  

 (前掲書 P.6 以下同様)


とても分かりやすい定義ですね。
one of them ではなくて、個人としてのあなたの
存在を明確にできること、存在理由(レーゾン・デートル)
と言い換えても良いと思います。




CHAPTER 01 自分ブランドとは?

 1 自分ブランドとは 

ここでは、先の定義を具体的に語っています。
先の定義の補足説明をしています。




 自分なりの「武器」と、あなたらしい「スピリット」

 をもつことだ。


 この分野なら任せろ、といった何らかの武器

 既存のものに縛られずに、自分のセンスと志に

 基づいて行動しようとするスピリット

 そうした武器とスピリットが周りにも広く受け入れ

 られ、「この人を信じてみたい」とまで感じさせる

 ようになったものが、あなたならではの「ブランド」

 だと思う。

  

 (P.10)




まだ抽象度が高いと感じられたかもしれません。
そこで、藤巻幸夫さん(以下、幸夫さんがよく
使う「フジマキ」さんに統一)は、
「憧れのブランド人を見つけよう」というテーマで
話を展開していきます。




 2 憧れからスタートしよう 

あなたの憧れの人、あるいはスター、アイドルは
誰ですか? その人のことを思い浮かべてみて
ください。 そうするとフジマキさんの言わんとして
いることが掴めてきます。


因みに、私の憧れの人は、大前研一さんです。
他のブログで何度も書いていますが、
大前さんは私にとってメンター(師匠)であり、
グールー(思想的指導者)です。




 ある人に憧れて「こんなふうになりたい」と思い

 焦がれる。 まずはそこからスタートだ!



 憧れの存在に「少しでも近づきたい!」と

 本気で望むこと。そうすることで、あなたのなかに、

 自分をどのようには磨いていきたいのかという

 具体的な目標が芽生えるだろう。

 

 (P.12)




ビジネスの世界でよく使われる手法は、
「ベンチマーク」です。
あるいは、「ベストプラクティス」です。


同業種でも異業種でも良いのですが、
まず、その業界で最良と思われる企業を
見つけ、その企業のどこに他社を圧倒する
強み(秘密)があるのか徹底的に調査します。


その上で、その企業を目標にして自社を変革し、
目標企業を超えるための方法を考え出す手法
です。


これと考え方は同じですね。


次に、フジマキさんは意外なことを語っています。


目標に定めた、憧れの人に少しでも近づきたいと
望む場合、つい野心が芽生えてくることがあります。


ですが、フジマキさんは野心を否定する必要は
ない、と言っています。




 3 野心を否定しない 

どうしてなのかは読んでみないと分かりませんね。





 「野心」は絶対にあっていい。

 もちろん悪い野心だけではダメ。「贅沢したい!

 ど派手に遊びたい!」という野心に飲み込まれ

 たら、自分ブランドなど築けるわけがない

 (そんな思いがゼロではないにしてもだ)。

 そうではなくて、我々のなかには「みんなをアッと

 言わせたい!」といった、きれいな野心もそびえて

 いるはず。それは「志」と呼んでいいかもしれない。

 

 (P.14)




「志」という言葉はかっこいいですね。
志という言葉を使うと、青臭いと言われそうですが、
恥ずかしいことではなく、むしろ誇りに思ってよい
と思います。


信念にも通ずるものです。


ここまでの話で、力が入りすぎているんじゃないの、
と思うかもしれません。 


「力みすぎると失敗するよ!」
という声が聞こえてきそうです(笑)。


ですが、フジマキさんは「いいじゃないか!」と
言っています。




 4 力が入ったっていいじゃないか 


フジマキさんは「自分ブランドを築くうえでは
力一杯力[りき]むことも必要なプロセス」

(P.17)と言っています。


そのプロセスとは、下記のことです。

試行錯誤 → 力[りき]み → 自然体 →

自分ブランドの完成


(P.17)





 何かをめざすときに、力が入っている段階は

 あってしかるべきだ。


 かくいう私も30いくつまでガチガチに力が

 入っていた! 取引先に顔を売ろうと必死

 だったし、ファッションの見聞を広めようと

 そこかしこで「これ何ですか?」と無知丸出し

 で聞いたりもした。

 

 (P.16)



必死になって(力みすぎて)取り組んでいると、
相手も理解してくれるようになります(もちろん、
端から相手にしてくれない人もいますが、
そんな人はこちらから、おさらばすればいいの
です)。


大事なことは、
「自分がどう見られているかより、
自分がどうありたいかだ」
(P.16)
ということです。


この CHAPTER の最後は、「軸を決める」という
ことです。 「確固としたブランドを築く」という
ことになります。




 5 軸を定める 


 3 野心を否定しない  の項に出てきましたが、
志を高く持つことで、確固としたブランドを築いて
いこう、という考え方です。




 「誰かのために」頑張るという意識。

 本物の自分ブランドを手に入れたいなら、

 どんなことでも「誰のために何ができるか」

 を繰り返し自問自答して、軸をしっかり

 定めること。

 その軸が定まれば、あなたの行動がむやみに

 ブレることはなくなり、自分ブランドに欠かせない

 「信頼」が、少しずつ積み上がっていくだろう。

 

 (P.18)




第1回はいかがでしたか?
面白いと思われましたか?
そうであれば、この本を取り上げたことに
成功したということになりますが。




次回は、
CHAPTER 02 自分マーケティングをしよう
をご紹介します。


お楽しみに!




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『サラリーマン再起動マニュアル』(41)


大前研一さんは、私にとってメンターでもあり、
グールー(思想的指導者)の存在でもあります。


大前さんの著作を読んでいつも感じるのは、
物事の本質を捉えるずば抜けた能力です。


凡人である私は大前さんの足元にも及びませんが、
不断の努力を怠らず、一歩でも彼に近づきたい、
と思っています。




サラリーマン再起動マニュアル
2008年10月4日 初版第1刷発行 小学館
ISBN978-4-09-379454-1






 

目次
 [イントロダクション]志のあるサラリーマンは、
            きつい仕事を厭わない

 第1章[現状認識]なぜ今「再起動」が必要か?

 第2章[基礎編]「再起動」のための準備運動

 第3章[実践編]「中年総合力」を身につける

 第4章[事業分析編]“新大陸エクセレントカンパニー”の条件

 第5章[メディア編]「ウェブ2.0」時代のシー・チェンジ

 [エピローグ]新大陸の“メシの種”はここにある




第4章[事業分析編]“新大陸エクセレントカンパニー”の条件




 「ウェブ2・0型企業」と「ウェブ1・0型企業」

 の違いは、顧客のニーズの変化をすぐに感知して

 対応できる企業体質になっているかどうか、

 ということである。たとえば、日本の主要パソコン

 メーカーは、需要予測をして半年に1回のサイクル

 で新しいモデルを決め、あらゆる機能を詰め込んだ

 商品を出している。だから値段が高い。

 いくら大々的に宣伝・販売しても、思うように売れ

 ない。

 残った在庫はアウトレットで叩き売り。

 その繰り返しで体力を消耗し、かつては日本国内で

 8割のシェアを占めていたNECでさえ、世界に出て

 いく力がなくなった。

 ところが、世界トップレベルのパソコンメーカーで

 あるデルの場合は、すべての顧客からダイレクトに

 注文を受けてオーダーメードで作った商品が10日で

 届く。だから需要予測は必要ない。


  
                      (今日の名言 41  488)





世の中の動きは本当に速いな、と感じます。
このブログを最初に書いた当時(2012年1月)、
デルはパソコン販売で世界一でした。


わずか3年後の2015年現在では、デルは順位を
大きく後退し3位です。


現在のパソコン販売世界一は、中国のレノボ
です。IBMがパソコン事業から撤退し、
レノボに売却しました。


以前首位であった、2位のHP(ヒューレット・
パッカード)が巻き返せるかどうか、
というのが現状です。事実上、この2強の争い
と言っても過言ではないでしょう。


日本のメーカーは、ことパソコンに限らず、
携帯やスマートフォンにも当てはまる話ですが、
めったに使わない機能やソフトを盛り込み過ぎ
るため、価格が高く設定されています。


ガラケーはその典型です。ついに、2017年度
までに日本メーカーがガラケーの販売から
完全撤退することが、決定しました。


それだけではありません。
「ワクワクする」製品作りができていません。
顧客が驚くような「ワクワクドキドキ感」が
ないのです。


ですから売れないのです。


メーカーの技術力を誇示したい気持ちは分かり
ますが、顧客が求めていない機能やソフトを
搭載することは、顧客の声に耳を傾けていない
証拠です。


「自己満足に陥っている」、と言われても仕方が
ないでしょう。


iPhoneにしても他のスマホにしても、内部の主要
部品を製造しているのは村田製作所やソニーなど
の日本の世界的な企業ですが、完成品となると
アップルやサムスンの後塵を拝しています。
とても悲しいことです。







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『マキアヴェッリ語録』 (03)





『マキアヴェッリ語録』 塩野七生 新潮文庫
平成4年11月25日 発行


目次
第1部 君主編
第2部 国家編
第3部 人間編





マキアヴェッリ(日本ではマキャベリと表現されることが多い)
は『君主論』の著者として知られ、「マキャベリズム」が
人口に膾炙しています。


その思想を端的に表現する言葉は、
「目的は手段を正当化する」
です。


目的のためならどんな手段を講じてもかまわない、と解する
ことが多いですね。


実は、私もこの書を読むまではそのように解釈していました。
言葉を文脈の中で解釈せず、言葉が独り歩きすることの怖さは、
風説の流布でも経験することです。


福島第一原発事故以後、周辺にお住まいの方々は風説の流布
に悩まされ続けています。拡散した誤情報はさらに誤情報を加え、
拡大していきます。容易に訂正されることはありません。



話しを戻しますと、マキアヴェッリの実像はどのようなもので
あったのか、そして「目的は手段を正当化する」と言っている
ことの真意は何だったのか、を知りたいと思いました。


先入観を取り払い、大前研一さんが言う、「オールクリア
(電卓のAC)」にしてマキアヴェッリの説くことに耳を傾ける
ことにしました。


マキアヴェッリは、1469年5月3日にイタリアのフィレンツェで
生まれ、1527年6月21日に没しています。15世紀から16世紀
にかけて活躍した思想家です。500年位前の人です。


ニッコロ・マキャヴェッリの肖像画

ニッコロ・マキャヴェッリの肖像画 Wikipedia から
 


塩野七生(しおの・ななみ)さんは、「まえがき」に代えて
「読者に」で次のように記しています。塩野さんが解説
ではなく、また要約でもなく、「抜粋」にした理由を説明
しています。


尚、10ページ以上にわたる説明からポイントとなる言葉を
「抜粋」しました。




 この『マキアヴェッリ語録』は、マキアヴェッリの思想の

 要約ではありません。抜粋です。

 なぜ、私が、完訳ではなく、かといって要約でもなく、

 ましてや解説でもない、抜粋という手段を選んだのかを

 御説明したいと思います。

 第一の理由は、次のことです。

 彼が、作品を遺したということです。


 マキアヴェッリにとって、書くということは、生の証[あか]し、

 であったのです。


 マキアヴェッリは、単なる素材ではない。作品を遺した

 思想家です。つまり、彼にとっての「生の証し」は、今日

 まで残り、しかもただ残っただけではなく、古典という、

 現代でも価値をもちつづけているとされる作品の作者でも

 あるのです。生涯を追うだけで済まされては、当の彼自身

 からして、釈然としないにちがいありません。


 抜粋という方法を選んだのには、「紆曲」どころではない

 マキアヴェッリの文体が与えてくれる快感も、味わって

 ほしいという私の願いもあるのです。そして、エッセンスの

 抜粋ならば、「証例冗漫」とだけは、絶対に言われない

 でしょう。


 しかし、彼の「生の声」をお聴かせすることに成功した

 としても、それだけでは、私の目的は完全に達成された

 とはいえないのです。マキアヴェッリ自身、実際に役に立つ

 ものを書くのが自分の目的だ、と言っています。 

 

  (前掲書 「読者に」から PP.3-5、14)






お待たせしました。マキアヴェッリの名言をご紹介します。


第1部 君主編



 古代のローマ人は、紛争に対処するに当たって、

 賢明な君主ならば誰もが行うことをしたのであった。

 つまり彼らは、眼前の紛争にのみ役立つ対策を

 講じたのではない。将来起こりうるものにも、

 対策を忘れなかったのだ。ローマ人は、あらゆる

 努力を払って、それらがまだ芽でしかないうちに、

 つみ取ってしまうことを忘れなかったのである。

 将来起こりうる紛争も、芽のうちにつみ取っていれば、

 対策も容易になる。医療も、効果を発揮させるには

 「間に合う」ことが必要であるからだ。



                    ―― 『君主論』 ――

                              (P.75)

         (007-1-0-000-484)
 



 


 頭にしかと入れておかねばならないのは、

 新しい秩序を打ち立てるということくらい、

 むずかしい事業はないということである。

 このうえなく実行が困難で、実行したとて成功は

 おぼつかなく、実現での過程では細心の注意

 を必要とすることなのだ。

 なぜなら実行者は、現体制下で甘い汁を吸って

 いた人々すべてを敵にまわすだけでなく、

 新体制になればトクをするであろう人々からも、

 生ぬるい支持しか期待できないものだからである。

 この生ぬるさは、2つの原因から生れる。

 第1は、現体制を謳歌[おうか]している人々に

 対する恐怖感であり、第2は、異例の新しきこと

 への不信感によるものだ。


  
                    ―― 『君主論』 ――

                          (PP.76-77)
                                           
          (008-1-0-000-485)
 






 新しく国を興した者は、次のことを守らねばならない。

 敵から身を守る方策を立てること。

 味方を獲得し、味方網とも呼んでもよいものを確立

 すること。

 策略によってであろうが力によってであろうが、

 まずなによりも勝利を収めること。

 民衆から、愛されるとともに怖[おそ]れられる

 存在になること。

 部下からは、服従され、敬意を払われるように

 すること。

 反旗をひるがえす怖れのありそうな者は、前もって

 押さえこんでおくこと。

 旧体制を、新しい方法で改革すること。

 厳格であるとともに丁重であり、寛大で鷹揚[おうよう]

 に振舞うこと。

 忠実でない軍隊を廃し、新しい運隊を創設すること。

 他国の指導者たちとの間に、友好関係を確立すること。

 これは、彼らの敬意を獲得することによる利益のほかに、

 彼らが侵略しようにも慎重にならざるをえないように

 仕向けるためでもある。



                    ―― 『君主論』 ――

                           (PP.78-79)
                              

          (009-1-0-000-486)
 








マキアヴェッリがいう「君主」はリーダー(指導者)のこと
ですから、上は大統領や首相から、下は企業や組織に
おける責任者に読み替えて考えて良いと思います。


より身近な存在としてのリーダーの心得、あるいは自覚
すべきことを考えていくべきです。


その点で、マキアヴェッリは実に率直に、歯に衣着せぬ
言い回しで語っています。


平時におけるリーダーではなく、激動の時代における
リーダーがすべきこと、部下にさせることを、時には非情
をもって、時にはオブラートに包んでアドバイスしています。


そうした点から、マキアヴェッリの考え方を「権謀術数」と
表現することがあるのだ、と思います。


ただはっきりしていることは、上に立つものは綺麗ごとだけ
では組織を率いていくことはできないという事実です。


組織に、柔軟性と強固さという一見すると、相反する性質を
持たせるためには欠かせないことです。


私が長年勤務した会社を今、振り返ってみると、経営者層
におもねる人たちがいて、その人たちを経営者層はうまく
利用し、引き立てるという人事が行われました。


このような実態は、どの組織にも見られることだと思われ
ます。 ですが、そうした組織のほとんどは内部崩壊する
ことでしょう。


イエスマンしかいなくなれば、トップは「裸の王様」にならざる
を得ません。 自分を客観視できなくなるのです。





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