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藤巻隆(ふじまき・たかし)オフィシャルブログ

私のテーマは6つあります。
(1)ビジネス書の紹介(2)医療問題 (3)自分ブランド力
(4)名言 (5)ランキング (6)ICT(情報通信技術)
このブログでは、主に(1)~(4)を扱っています。
(5)と(6)はそれぞれ別のタイトルで運営しています。

『サラリーマン再起動マニュアル』(48)


大前研一さんは、私にとってメンターでもあり、
グールー(思想的指導者)の存在でもあります。


大前さんの著作を読んでいつも感じるのは、
物事の本質を捉えるずば抜けた能力です。


凡人である私は大前さんの足元にも及びませんが、
不断の努力を怠らず、一歩でも彼に近づきたい、
と思っています。




サラリーマン再起動マニュアル
2008年10月4日 初版第1刷発行 小学館 
ISBN978-4-09-379454-1
 







目次
 [イントロダクション]志のあるサラリーマンは、
            きつい仕事を厭わない

 第1章[現状認識]なぜ今「再起動」が必要か?

 第2章[基礎編]「再起動」のための準備運動

 第3章[実践編]「中年総合力」を身につける

 第4章[事業分析編]“新大陸エクセレントカンパニー”の条件

 第5章[メディア編]「ウェブ2.0」時代のシー・チェンジ

 [エピローグ]新大陸の“メシの種”はここにある





[エピローグ]新大陸の“メシの種”はここにある




 少子高齢化時代のビジネス新大陸では、

 企業は「内向き・下向き・後ろ向き」になったら

 必ず衰退する。

 日本国内にいて少しぐらい商品を改良してみても、

 どうにもならない。

 既存市場で生き残っていこうと思ったら、

 よほどの奇抜な企画力で付加価値の高い商品を

 生み出していかねばならない。

 換言すれば、少子高齢化時代に対してあなたが、

 あるいはあなたの会社が「外向き・上向き・前向き」

 にチャレンジするかどうかで自分たちの命運が

 決まるのだ。

 

  
                      (今日の名言 48  495)






今国会(当時)で野田首相は、
「社会保障と税の一体改革」を、念仏のごとく
唱えています。


少子高齢化時代になり、さらに2011年3月11日に
発生した東日本大震災及び東電福島第一原子力
発電所事故により、日本国内は企業も個人も
一部を除いて疲弊しています。


こうした状況下で消費税増税が実施されたら、
多くの零細企業とサラリーマンはその衝撃に
耐え切れず、倒れてしまいかねません。


デフレが慢性化し、ギリシャに端を発したEUの
不安定さが円高に拍車をかけています。


株式市場も日経平均が一時的に1万円を回復した
と思ったら、8千円台に下げています。


パナソニックやソニー、シャープなどの家電メーカー
は、韓国のサムスン電子やLG電子の後塵を拝し、
2012年3月期決算で軒並み数千億円の巨額の
赤字を出しています。


薄型テレビの価格下落が急激で、企業業績の足を
引っ張っています。


日本の半導体メーカーのエルピーダメモリは破綻し、
米半導体メーカーに買収される見込みです。


同じくルネサステクノロジも業績悪化のため、
数千人規模の人員削減をつい最近発表しました。


日本には今、逆風が吹き荒れていますが、
大前さんが力説しているように、
「外向き・上向き・前向き」にチャレンジして
頂きたい、と強く願っています。







上記の記事を書いたのは、2012年5月23日のことです。
今から3年前のことです。わずか3年前のことですが、
隔世の感があります。


当時は、デフレ、消費増税、東日本大震災から1年後、
といった負のスパイラルに苛まれていました。
民主党が自民党から政権を奪っても、成果を収める
ことはできませんでした。


その後、自民党が政権を奪還し、自民党と日銀の
共同歩調による円安誘導政策が功を奏し、
自動車メーカーをはじめ輸出産業は好業績を上げ、
日経平均株価は2万円の大台を回復しました。


ですが、庶民の生活は楽になったかといえば、
以前と変わりません。


消費増税が重しになっていることは明らかです。
さらに、非正規雇用者が増加し、収入が減少して
いるため、なかなか消費の増加に結びつきません。


パナソニックは業績が回復しましたが、ソニーは
道半ばです。


一方、シャープは三洋電機と同じ道を辿るのでは
ないかと見られています。つまり、解体される、
というのです。


この3年で、強者と弱者の差が鮮明になったと言え
ます。それは企業にかぎらず、個人においても同様
です。


非正規雇用者の割合が増加したことにより、
賃金格差が拡大したからです。 


こんな時代だからこそ、大前さんが言うように、
「外向き・上向き・前向き」にチャレンジして
いきたい、と思います。


決して「内向き・下向き・後向き」になっては
いけません!







参考データ







雇用形態別に見た非正規社員の推移




完全失業者の雇用者に対する比率の推移









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本当に役に立つビジネス書
<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の
概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>



日経ビジネスの特集記事(109)

日野原・稲盛 魂の提言
日本の医療を救え

2015.06.01



テーマ

今週の特集記事のテーマは

「日本を、長寿を悲しむ国にしてはいけない」
103歳の現役医師、聖路加国際病院名誉院長の
日野原重明は言う。
「長寿世界一」は日本の誇りである。
だが、老人の医療費負担が現役世代に重くのしかかる。
2000年に約30兆円だった国民医療費は2025年に
50兆円を突破。
支え手の負担が限界を超えれば、社会は長寿を
寿げなくなる。
コスト構造をゼロから見直し日本航空(JAL)を再生した
京セラ名誉会長の稲盛和夫は言う。
「医療に従事するすべての人が経営マインドを持てば、
できることはまだまだある」
医療という「命のインフラ」をどう守るか。

 (『日経ビジネス』 2015.06.01 号 P.022)

ということです。



医療問題と高齢化は切っても切れない関係にあります。
日本は「少子高齢化」の先頭を切っています。
生産年齢人口(15~64歳)が減少傾向にあり、
高齢者を支える人たちの負担が重くのしかかってきて
います。


日本がこの問題をどう解決するのか、世界は注目して
います。先進国においては、いずれは日本と同じ道を
たどることが確実視されているからです。




日野原・稲盛 魂の提言<br />日本の医療を救え

日野原・稲盛 魂の提言
日本の医療を救え

(『日経ビジネス』 2015.06.01 号 表紙)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.01




今特集のスタートページ

今特集のスタートページ

(『日経ビジネス』 2015.06.01号 PP.022-023)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.01







第1回は、
「PART1 魂の提言
 日野原重明×稲盛和夫」
「PART2 夢の団地と必然の孤独死」
を取り上げます。


第2回は、
「PART3 算術が仁術を超えた日」
を取り上げます。


最終回は、
「PART4 初公開
 病院経営力ランキング」
をご紹介します。




今特集のキーワードは次の5つです。

キーワード

 医療の質 
 利益の還元 
 仁術に限界 
 病院経営力 
 選択と集中 




では、本題に入りましょう!


 PART1 魂の提言 
 日野原重明×稲盛和夫 




片や、医学界で知らない人はいないと言える、
聖路加国際病院名誉院長、日野原重明氏と、
京セラ名誉会長で、破綻したJALをわずか
2年半で再上場させた、名経営者、稲盛和夫氏
の対談です。


お二人は対談の中で、医療問題の本質を見抜き、
貴重な提言をしています。


まずは、お二人の熱のこもった「魂の提言」に
真摯に耳を傾けてみましょう!


それにしましても、お二人ともご高齢ですが、
頭も身体も元気です。


聖路加国際病院名誉院長 日野原 重明 氏    京セラ名誉会長 稲盛 和夫 氏

聖路加国際病院名誉院長 日野原 重明 氏と
京セラ名誉会長 稲盛 和夫 氏

(『日経ビジネス』 2015.06.01号 PP.024-025)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.01




まず、日野原氏が問題提起します。
それに対して、稲盛氏がどう答えるかご注目
ください。


 日野原

 まず無駄な医療をやめることです。

 医療を営業と考える医者は延命治療に夢中に

 なりがちです。患者や家族には「長生きは良い

 ことだ」という思い込みがあり、医者も延命した

 方がもうかるからです。

 しかしチューブにつながれて最期を迎えることが

 患者や家族にとって本当の幸せでしょうか。

 社会的にみれば膨大なコストがかかっている。


 延命治療をやめれば、住み慣れた自宅で最期

 を迎える人が増えるでしょう。病院より、自分が

 ずっと生きてきた場所で最期を迎えたいと望む

 人は多いのではないでしょうか。

 これを実現するには医者も患者も家族も考え方

 を改めなくてはなりません。

 死に抗うのではなく、死を受け入れる考え方が

 必要です。


 ルネ・サンド(1928年に国際社会福祉協議会を

 設立したベルギーの医学者)は「国民の参与

 なくして国民の健康は作られない」と言っています。

 まず社会の中のいろいろな層の人々による協力

 体制を作る必要があります。「真の健康社会を

 作る」ことを国民の総意にしなくてはならない。
 

  (P.024)





 稲盛

 サンドの言葉は経営にも通じると思います。

 全従業員の参与がなければ良い経営は実現でき

 ません。

 
 ドクターから看護師さん、食事を担当する人まで、

 医療に関わるすべての人が、どうすればコストを

 上げずに、患者さんに良い医療を提供できるか。

 皆で考えるところから始めたらいいのではない

 でしょうか。
 

  (PP.024-025)





 日野原

 老人だからといって、周りにしてもらうばかりでは

 いけません。生物的な「老化」は避けられない現象

 ですが、自ら新しいことを創めていれば精神的な

 「老い」は避けられます。

 新しいことを創める高齢者を、社会は交わりの中に

 迎え入れ、温かい心で包み、彼らに役割を与えるの

 です。老人を廃車のように扱う国は、とても文明国家

 とは言えません。
 

  (P.025)





 稲盛

 中小企業の経営から始めた私は、「赤字を出しては

 いけない」という考えが体に染み付いています。

 中小企業は赤字を出したら簡単に潰れてしまい

 ますからね。中小企業の経営者は収入が減ったら

 それなりに支出を減らし、何とかして収益を上げる

 ことを考えます。しかし大きな企業は、1度や2度の

 赤字では潰れません。当事者意識を持ちにくい。

 経営者も従業員もいつしか、赤字に慣れてしまうの

 です。


 病院は制度で単価が決まっていますから、利益を

 出すにはみんながコストと真剣に向き合うしかない。

 赤字の病院の職員の方に、そのような意識がある

 でしょうか。
 

  (PP.025-026)





 日野原

 例えば、お金を出せる患者には、広くてきれいな

 個室に入ってもらい、おいしい食事を出して高い

 お金を取ればいい。そうやって稼いだお金で、

 貧しい人は安く治療してあげればいいのです。

 日本の医療制度は硬直的過ぎて、こうしたことが

 自由にできない。

 最初にお話しした延命治療が最たる例ですが、

 医療を営業だと勘違いしている医者が多いのも

 事実。高額納税者には医者が多いでしょ。

 利益を患者さんに返しなさい、と僕は言いたい。 
 

  (P.026)



ポイント

「延命治療をやめれば、住み慣れた自宅で最期

 を迎える人が増えるでしょう。病院より、自分が

 ずっと生きてきた場所で最期を迎えたいと望む

 人は多いのではないでしょうか。

 これを実現するには医者も患者も家族も考え方

 を改めなくてはなりません。

 死に抗うのではなく、死を受け入れる考え方が

 必要です」




完治する見込みがあれば、高度治療を実施する意味は
あります。 ですが、延命措置のために高額医療費を
使うのは、労働者に負担を強いるだけです。


それでなくとも、介護保険と健康保険、年金保険などの
社会保険料の負担額は年々増加しています。


日本の病院の経営状態について『日経ビジネス』は、
次のように述べています。 実態は相当厳しいようです。



 日本の病院は7割が赤字。公立に限れば9割が

 赤字だ。 4月13日に日本医学会総会が採択した

 宣言にも「医療制度の維持が難しくなりつつある」

 との文言が盛り込まれた。
 

  (P.025)




PART2では、マンモス団地に約半世紀にわたって
寄り添い続けた医師の苦悩を描いています。


 PART2 夢の団地と必然の孤独死 





団地の高齢化と40年以上<br />向き合ってきた<br />平山登志夫院長

団地の高齢化と40年以上
向き合ってきた
平山登志夫院長

(『日経ビジネス』 2015.06.01 号 P.027)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.01






 約7000戸、2万8000人が住む花見川団地が

 千葉市花見川区に出現したのは1968年。

 大阪府の千里ニュータウンが完成するまで、

 日本一のマンモス団地だった。


 今、全世帯の1割に近い約700戸に独居老人

 が住む。これは半世紀にわたり巨大団地の

 高齢化と向き合ってきた1人の医師の物語で

 ある。

 花見川団地は、当時としてはモダンな2DKの

 間取りで家賃も手ごろ。

 部屋は若い住民で埋まったが、交通の便が悪く

 「陸の孤島」と呼ばれた。


 聖路加国際病院で日野原重明の薫陶を受けた

 平山登志夫は、東京・銀座菊地病院で外科部長

 をしていた。その平山が公団に請われ、

 団地の8‐1号棟103号室で開業したのは68年の

 ことである。


 平山が「高齢化対策」を訴えたとき、花見川地区

 で検討されていたのは小学校の新設だった。

 平山は反対したが地域に5つ目の小学校が建った。

 行政が動かないのなら、自分でやるしかない。

 平山は77年、病院の隣に60床の特養を建てた。

 「待ってました」と言わんばかりに、寝たきりの親を

 背負った家族が殺到し、部屋は数日で埋まった。
 

  (PP.027-028)



特養(特別養護老人ホーム)を切り盛りしたのは、
妻の享子さんでした。



 「業務用の大型洗濯機ができて、50人分のオムツが

 いっぺんに洗えるようになり、ずいぶん助かりました。

 干すところがなくて困りましたけど」。享子は当時を振り

 返る。
 

  (P.028)



ここで、特養について確認しておきましょう。



 特別養護老人ホームは、要介護1から5の認定を

 受けた65歳以上の方を対象としており、身体上

 または精神上著しい障害により、常に介護が必要

 な状態で、居宅において適切な介護を受けること

 が困難な方が入所する施設です。
 

  (特別養護老人ホームとは ホームメイト・シニアのサイトから)



平山院長が痛感したのは、「リハビリ」が抜け落ちて
いることでした。



 病気を治す「病院」と、介護をする「特養」の間で

 抜け落ちていたのは「リハビリ」だった。

 ちょうどその頃、国もリハビリの重要さを認識し

 「老人保健施設」の新設を検討していた。

 当時の日本には「リハビリ」という概念がほとんど

 なく、どんな施設を作って、どう運営したらいいのか

 分からない。そこで国はいくつかのモデル事業を

 立ち上げることにした。

 長野県、三重県、大阪府など7つの地域の病院が

 手を挙げた。平山もその一人だ。
 

  (P.028)



現在、平山院長が運営する施設はどうなっている
でしょうか?



 開業から47年、かつて子供たちの声でにぎやか

 だった花見川団地は、すっかり老人の街になった。

 平山が予見した通り、高齢化は日本の大問題に

 なり団地は孤独死対策に追われている。

 平山の運営する晴山会グループは、特養と老健を

 何度も増床し、在宅介護支援センターやケアハウス

 も作った。それでも平山は言う。

 「作っても、作っても供給が需要に追い付かない」
 

  (P.028)



将来を見据えると、さらに不安が広がってきます。



 平山が花見川団地に診療所を開いたころ、

 日本の65歳以上は10人に1人だった。

 今は4人に1人。

 10年後の2025年には3人に1人になる。

 年齢が上がるほど疾患を抱える確率は

 上がる。

 手を打たなければ、医療費は増え続ける。

 一方で15歳から64歳の生産年齢人口が減る

 ため、健康保険の保険料や税金を納める人

 が少なくなる。


 平山にはもう一つの不安がある。

 「昔はね、お年寄りを元気にして家に帰すと、

 家族が喜んだんですけどね。今は、帰して

 くれるな、と言う人がいる。施設に押し付けた

 方が楽ですからね」
 

  (PP.028-029)



平山院長は、このままでは縮小均衡に陥るのは
目に見えているため、ある決断をします。



 かつて「家族任せにせず、社会が高齢者を受け

 止める仕組みを作れ」と旗を振った平山が今、

 「あらゆる問題を社会に押し付けていたら、

 制度が破綻する」と警鐘を鳴らす。

 高齢化の衝撃は平山の想定を超えていたのだ。

 「仁術」だけでは限界があると悟った平山は、

 病院の経営を安定させるため2010年、

 京セラグループの「医療法人向けアメーバ経営」

 を導入した。
 

  (P.029)





ポイント

「仁術」だけでは限界がある





私見

普段は、「医療は万能」と考える人はいない、
と思いますが、高齢化することで、
より多く発現するアルツハイマー病などが
原因の認知症や、身体が不自由になり、
介護が必要になった場合、自宅で治療したり、
介護することには、非常に困難が伴います。


子供も高齢化し、介護者も被介護者になり
かねない環境にある人も少なくない、
と推測されます。


非婚化や晩婚化の傾向が強くなり、今後、
介護がずっしり重い問題になってくるのでは
ないか、と危惧しています。


病院で人生の最後を迎えたくない人たちが
増えれば、必然的に、自宅で介護してもらい
ながら、終末を迎えることになりますが、
見てくれる人がいなければ、自宅で終活する
ことさえ難しいことです。


今特集は、多くの読者にとって重いテーマです。




次回、「アメーバ経営」を取り入れた病院の
ケーススタディーをご紹介します。





今特集のキーワードを確認しておきましょう。

キーワード

 医療の質 
 利益の還元 
 仁術に限界 
 病院経営力 
 選択と集中 



次回は、
「PART3 算術が仁術を超えた日」
をお伝えします。


ご期待下さい!






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本当に役に立つビジネス書
描くは「2040年」の東京
2015.06.01

舛添 要一 (ますぞえ・よういち) 氏

[東京都知事]


 今は「この国に行きたい」というより、「世界の

 この都市に行ってみたい」という時代ですから、

 世界の都市同士が競争しています。

 参考になるのが森記念財団(東京都港区)の

 シンクタンクである都市戦略研究所がまとめる

 「世界の都市総合力ランキング」です。

 2014年版では首位はロンドン、以下ニューヨーク、

 パリと続き、東京は7年連続となる4位です。

 けれども、5位のシンガポール、6位のソウルに

 差を縮められています。

 交通・アクセスや市場の魅力への評価が伸び

 悩んでいるためです。


 2020年のオリンピック・パラリンピックの成功の

 ためには、やはり地震発生に備え、防災にも

 気をつけないといけない。

 幅広い分野で東京の評価を高め、「世界一」を

 目指そうというのが大きな狙いです。


 過去20年もデフレによる経済の低迷が続く間に、

 アジアの金融センターの座はシンガポールに

 取って代わられてしまいました。

 まずはこのマネーの面を何とかしたい。


 海外から資金や人材を呼び込むには、

 「東京に多くのビジネスチャンスがある」と思って

 もらえることが条件です。

 外国の銀行や証券会社は金もうけができないと

 入ってきません。


 都は、都の信用力を生かして資金を呼び込もうと、

 官民連携の「再生可能エネルギーファンド」を創設し、

 今年度内には高齢者施設や子育て支援施設の

 整備資金を供給する官民連携の「福祉貢献インフラ

 ファンド」も設立します。


 今度はさらに、公金の運用先に外銀を加える運用

 改革に乗り出すことにしました。


 もう一つは、東京を創薬を中心としたライフサイエンス

 分野のメッカにしたいと考えています。

 創薬関連ビジネスは高い付加価値を生みます。

 日本橋地区には製薬大手が拠点を構えており、

 ここに世界中の創薬の研究者など産官学が集い、

 ビジネスにつなげていけるように環境を後押しして

 いきます。


 あとは、都内で水素社会の実現を目指したいですね。

 都も都内での燃料電池車の普及や水素ステーション

 の設置を支援していきますし、中央区晴海に整備する

 五輪の選手村を五輪のプラスの遺産として水素タウン

 にしたい。

 今回の東京五輪をきっかけとした目玉は水素社会の

 実現だと考えています。


 東京がニューヨークやシンガポールなどほかの大都市

 と比べた時の最大のマイナス点は英語力です。

 東京にいながら海外生活や異文化に触れることが

 できる「英語村(仮称)」を開設し、児童や生徒に生きた

 英語や文化の教育の機会を提供したりしますが、

 これは息の長い取り組みになります。


 東京五輪は日本、東京にとって絶好の機会ですが、

 これを生かすことに失敗したら日本の再生などあり

 得ないと思っています。

 これを機に、何とかリカバリーショットを打ちたいという

 のが今の状況ですね。


 五輪はあくまで通過点であり、一里塚にすぎません。

 10年後、20年後、そして30年後の東京というものを

 見据え、様々な計画や政策を打ち出していく必要が

 あります。

 昨年12月には今後10年間の都政の工程表となる

 「長期ビジョン」を策定しました。


 その中では2020年の五輪の成功に向けた多くの取り

 組みや、少子高齢・人口減少社会の到来など東京が

 直面する幅広い課題に対処するための具体的な数値

 目標などを示しています。

 そのうえで、今度は長期ビジョンのさらにその先である

 2040年代をにらんだグランドデザインの検討に着手する

 ことにしました。

 交通体系の整備や都市づくりは相当、長期的な時間軸

 で取り組む必要があるからです。


 街というものは、いったん整備しても30年もすれば古く

 なるもの。東京都心の各地域がそれぞれの特性に応じて

 多様な都市機能を持つ拠点を作っていけば、東京全体

 の競争力を高めていくことにつながるはずです。

 常に躍動的な街づくりをするためのグランドデザインを

 描きたいと考えています。


 都内で今、大規模な再開発をうまくやっている地域は、

 官民がうまく協力しているという共通項があります。

 例えば虎ノ門には森ビルがあり、東京駅周辺は三菱地所、

 三井不動産が、渋谷には東急グループがある。

 様々な交渉や地道な作業も含め、開発する能力は

 デベロッパーしかないのです。

 役人の頭だけでやっては駄目です。

 こうした民の知恵や能力を存分に活用し、支障となる規制

 などがあれば特区など様々な手段を活用して都が後押し

 する。

 都市づくりにはこうした官民の協力体制が欠かせません。


 地方の活性化と大都市の発展は二律背反の関係ではなく、

 プラスサムゲームにしないといけません。

 一つのカギは交通体系など国全体の国土計画です。

 
 航空路線も含め、交通体系を重視した国土政策なしに

 地方創生などあり得ないと思っています。


 大阪都構想の賛否を巡る住民投票が反対多数となり

 ましたが、大阪は行政組織の改革に集中するより

 「金もうけが先だろう」と言いたいですね。

 東京は金もうけになることをこれからも、どんどんやって

 いきますよ。
 

  (PP.064-067)




東京都知事 舛添 要一 氏

東京都知事 舛添 要一 氏
(『日経ビジネス』 2015.06.01 号 P.065)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.01









キーセンテンスは、

 「五輪はあくまで通過点であり、
 一里塚にすぎません」 
です。


五輪が終わったら、世界中の人たちの日本へ
の関心が薄れるようなことがあってはなりま
せん。


立て続けに施策を打っていく必要があります。
そのテーマを舛添都知事が示しました。
どれもが長期的に取り組むべき課題です。


と同時に、並大抵なことでは解決できない課題
ばかりです。






ポイント1


東京を世界一の都市に

舛添都知事は、次のように述べています。

「幅広い分野で東京の評価を高め、

 『世界一』を目指そうというのが

 大きな狙いです」。


ロンドン、ニューヨーク、パリが上位にあり、
シンガポールとソウルに追い上げられている
のが現状です。


目標は高く掲げたほうが良いですが、相当の
困難が伴うことでしょう。





ポイント2


海外からマネーを呼びこむ

「日本をアジアの金融センターに」という悲願を
達成するには、「金もうけができる国」に変貌
させなければなりません。 口で言うほどに
簡単なことではありません。 国内の金融機関
が犠牲を払う局面も出てくると思います。
それでもやりぬく覚悟があるのか、が問われます。





ポイント3


水素社会の実現

トヨタ自動車は、水素を燃料にした燃料電池車を
開発しています。 国内ではトヨタ自動車だけです
から、現状のままでは、同業他社は指を咥えて
眺めているだけという状況になります。


ただし、トヨタ自動車は1社だけで開発するのでは
なく、すべての特許を公開し、どこでも利用できる
ようにしました。 この措置によって、国内の自動車
メーカーのみならず、海外の自動車メーカーも開発
できる道が開かれました。


もちろん、その背景にはトヨタ自動車1社で大きな
リスクを負いたくないという考えがあるはずです。





ポイント4


英語力の底上げ

「英語力」をどの基準に置くかによって施策は
異なってきます。


日常会話程度なのか、それとも通訳ができる
レベルを想定するかによって、全く異なる施策
が必要です。


と同時に、日本人が自国の文化、歴史、伝統、
社会制度などを十分に理解しておく必要があり
ます。 私を含め、日本人は日本のことをどこ
まで理解しているか、どれだけの知識があるか、
今一度、振り返ってみることが大切です。


海外からの訪日旅行者の中には、日本について
よく勉強してきて、日本の事情に詳しく、いろいろ
な質問をしてくるかもしれません。


それらの質問にきちんと回答できるかどうかで、
日本人の真の「英語力」が問われることになります。


「英語力」と言っても、英語に関することだけでは
ありません。 英語「を」学ぶのではなく、英語「で」
学ぶとはこのことです。


Study English. ではなく、 Study something in English.
です。 英語(外国語)は目的ではなく、あくまで手段
だからです。





ポイント5


2040年代をにらんだグランドデザインの検討

大切なことは、現時点の延長線上には
未来のカタチは存在しないことです。


今までになかった技術や制度、法律が
生まれ、それらの枠組みの中でどう
取り組むかが、重要な課題になってくる、
と考えています。





ポイント6


官民の協力体制

役人は、「ハコモノ行政」と揶揄されるように、
立派な器だけ作って、中身が貧弱な建物や
制度を作ることが多いですね。


もう1つは、損益意識が乏しいことです。
予算が不足すれば補填してもらえばいい
という、安易な考え方がずっと継承されて
きました。


この意識改革の実現は、一朝一夕に
できるものではありません。


自治体が中心になって始めた事業が、
赤字ばかりというのも頷けます。





ポイント7


地方の活性化と大都市の発展をプラスサム
ゲームに


すべてを足すとゼロになるという、ゼロサム
ゲームが、しばしばビジネス書に取り上げ
られます。


舛添都知事は、

「地方の活性化と大都市の発展は二律背反

 の関係ではなく、プラスサムゲームにしない

 といけません。

 一つのカギは交通体系など国全体の国土

 計画です」

と述べています。


これを実現するためには、地方は大都市の
真似をしていてはいけません。 その地方
ならではの特徴を全面に出すことが必須条件
です。


日本全国どこへ行っても、大都市と変わらない
風景ではプラスサムゲームにはならず、
ゼロサムゲームに陥るだけです。 


最悪の場合には、マイナスサムゲームになって
しまうかもしれません。





私見


舛添都知事が何期都知事を務めるか分かり
ませんが、明白なことは、今回のインタビュー
で提示した課題の解決が、舛添都知事の
在任中に完了することはない、ということです。
何代にもわたる都知事の継続した実行力が
不可欠です。


2040年代というのは、今から25年以上先
の話です。 あらゆる局面でそこまで見通す
ことが可能なのか。


恐らく、現時点の延長線上には未来のカタチ
は存在していないと思います。 新たな技術や
枠組みが生み出され、良きにつけ悪しきにつけ、
予測と乖離することは十分に考えられることです。


それでも、今から20年後、30年後の「日本や
東京の姿」を描くことは、決して無駄なことでは
ありません。





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本当に役に立つビジネス書
大手から革新が生まれない
小さい組織の新しい発想を
大切にしていきたい


木村 眞琴(きむら・まこと)氏
[ニコン代表取締役会長]





今週の言葉


 大手企業からなかなかイノベーションが生まれてきません。

 革新的だった企業も大きくなると、過去の延長線上で物事

 を考えるようになり、社員は効率のいい歯車になる。

 まったく新しい製品やビジネスは既存の顧客との関係を

 壊しかねないから、あえてイノベーションが起きないように

 していると言ってもいい。

 こうしたしがらみと無縁の小さな組織の発想を、大手に

 なっても生かし続けられるかが、企業発展のカギだと思うの

 です。


 それを痛感したのが1990年代前半、米ベンチャー企業から

 の技術導入にこぎつけた経験です。


 この米企業が開発したのが、パソコン本体に差し込んで

 持ち運びできる、超小型のフィルムスキャナーです。

 
 この米社製品は、ランプではなくLEDを採用するアイデア

 で冷却装置を不要にし、一気に大幅な小型化に成功。

 画質は大型より悪いですが、業者にいちいちお願いしな

 ければならなかったスキャンがどこでも可能になります。


 社内でその技術導入を提案したら、開発チームから

 「画質に問題がある」と反発を受けました。これまでカメラ

 やスキャナーは、画像がいいほど売れるはずと信じて

 やってきたのですから、当然でしょう。

 私は「自分たちの価値観で判断するな」と強く主張。

 結局、社内で技術導入を認めさせたんです。

 そして、ニコンの生産技術を組み合わせて商品化し、

 持ち運べるスキャナーという、新たな収益源となる市場を

 生み出しました。

 もちろん当時、ニコンは既にカメラ大手でしたが、

 小さい組織や個人の言うことに耳を傾ける大切さを、

 よく分かっていたのだと思います。


 90年代終わりの、フィルムからデジタルカメラへの移行の

 際も猛烈な議論になりました。

 やはり、問題になったのはデジカメの画質の悪さ。


 デジカメの画質は飛躍的に改善していったのですが、

 当時、あくまでフィルムにこだわっていたら、今頃どうなって

 いたでしょうか。


 そのデジカメも今、カメラ付きスマートフォンに市場を侵食

 され、苦戦しています。ネットワーク社会になる中で、

 カメラはどうあるべきか、まったく違った発想が求められて

 います。

 小さい組織や個人から生まれる革新的で破壊的なアイデア

 を大切にし続けられているかどうか。

 今一度、見直すべき時期が来ているのかもしれません。



                   (2015.06.01 号から) 

 




ニコン代表取締役会長 木村 眞琴 氏

ニコン代表取締役会長 木村 眞琴 氏

「日経ビジネス」 2015.06.01 号 P.001
「日経ビジネスDigital」 2015.06.01





キーワード

キーワードは、 イノベーション です。



シュンペーターが生み出したイノベーションという言葉と概念
は使い古された感がありますが、どうしてどうして、現在でも
極めて重要な考え方であり続けています。


なぜなら、組織が大きくなると、変化を嫌い、変化しづらくなり、
マンネリ化してくるからです。そこからは新しい発想は出て
きません。物事を延長線上で考えるようになり、それが当然
と捉える空気が支配するようになります。


創造的破壊という言葉が示すように、既存の考え方を破壊
しなければなりません。これが心理的な壁を作り出します。
「今までうまく行っているからこのままでいいじゃないか」
という考え方が支配的になってくると、危険な徴候です。


その点、小さな組織は機動性に富み、実験を繰り返し行なう
ことが可能になります。仮説と検証を何度でも繰り返すことが
できるのです。そうした繰り返しの中から、今まで世の中に存在
しなかった画期的な製品が生み出されることがあります。




ポイント

ポイントは、
 小さい組織や個人の言うことに耳を傾ける大切さ 
です。


「小さなアイデアでも潰さないこと」です。
いくつかの小さなアイデアを組み合わせることによって、
革新的製品が生まれることがあります。


よく例に挙げられるは、3M(スリーエム)の「ポストイット」
誕生のエピソードです。


研究者のアート・フライは、コーラスのメンバーで賛美歌
を歌っていました。楽譜をめくる時、栞[しおり]が落ちて
しまうことにいつも不満を持っていました。


「何とかならないものか」と社内の至る所に声をかけて
いました。


もう一人の研究者、スペンサー・シルバーは、
世界一強力な接着剤を開発する研究を続けていました。
ところが、どういうわけか、付けても剥がれてしまう接着剤
ができてしまいます。つまり、失敗作だったのです。


シルバーも、フライ同様に社内に「こういう製品ができたん
だが、何か使い道はないか?」と尋ね回ったのです。


そんな二人が出会ってできたのが、「ポストイット」だった
のです。ちなみに改良を重ね、製品化するのに5年の歳月
が必要だったそうです。


現在の言葉で言えば、「共創」が当てはまるかもしれません。
さらに言えば、シルバーはセレンディピティを体験したのです。


二人のアイデアが実を結び、出来上がった「ポストイット」は
3Mの看板商品となりました。






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本当に役に立つビジネス書
『マキアヴェッリ語録』 (06)





『マキアヴェッリ語録』 塩野七生 新潮文庫
平成4年11月25日 発行


目次
第1部 君主編
第2部 国家編
第3部 人間編






マキアヴェッリ(日本ではマキャベリと表現されることが多い)
は『君主論』の著者として知られ、「マキャベリズム」が
人口に膾炙しています。


その思想を端的に表現する言葉は、
「目的は手段を正当化する」
です。


目的のためならどんな手段を講じてもかまわない、と解する
ことが多いですね。


実は、私もこの書を読むまではそのように解釈していました。
言葉を文脈の中で解釈せず、言葉が独り歩きすることの怖さは、
風説の流布でも経験することです。


福島第一原発事故以後、周辺にお住まいの方々は風説の流布
に悩まされ続けています。拡散した誤情報はさらに誤情報を加え、
拡大していきます。容易に訂正されることはありません。



話しを戻しますと、マキアヴェッリの実像はどのようなもので
あったのか、そして「目的は手段を正当化する」と言っている
ことの真意は何だったのか、を知りたいと思いました。


先入観を取り払い、大前研一さんが言う、「オールクリア
(電卓のAC)」にしてマキアヴェッリの説くことに耳を傾ける
ことにしました。


マキアヴェッリは、1469年5月3日にイタリアのフィレンツェで
生まれ、1527年6月21日に没しています。15世紀から16世紀
にかけて活躍した思想家です。500年位前の人です。


ニッコロ・マキャヴェッリの肖像画

ニッコロ・マキャヴェッリの肖像画 Wikipedia から
 


塩野七生(しおの・ななみ)さんは、「まえがき」に代えて
「読者に」で次のように記しています。塩野さんが解説
ではなく、また要約でもなく、「抜粋」にした理由を説明
しています。


尚、10ページ以上にわたる説明からポイントとなる言葉を
「抜粋」しました。




 この『マキアヴェッリ語録』は、マキアヴェッリの思想の

 要約ではありません。抜粋です。

 なぜ、私が、完訳ではなく、かといって要約でもなく、

 ましてや解説でもない、抜粋という手段を選んだのかを

 御説明したいと思います。

 第一の理由は、次のことです。

 彼が、作品を遺したということです。


 マキアヴェッリにとって、書くということは、生の証[あか]し、

 であったのです。


 マキアヴェッリは、単なる素材ではない。作品を遺した

 思想家です。つまり、彼にとっての「生の証し」は、今日

 まで残り、しかもただ残っただけではなく、古典という、

 現代でも価値をもちつづけているとされる作品の作者でも

 あるのです。生涯を追うだけで済まされては、当の彼自身

 からして、釈然としないにちがいありません。


 抜粋という方法を選んだのには、「紆曲」どころではない

 マキアヴェッリの文体が与えてくれる快感も、味わって

 ほしいという私の願いもあるのです。そして、エッセンスの

 抜粋ならば、「証例冗漫」とだけは、絶対に言われない

 でしょう。


 しかし、彼の「生の声」をお聴かせすることに成功した

 としても、それだけでは、私の目的は完全に達成された

 とはいえないのです。マキアヴェッリ自身、実際に役に立つ

 ものを書くのが自分の目的だ、と言っています。 

 

  (前掲書 「読者に」から PP.3-5、14)




マキアヴェッリの名言をご覧ください。


第1部 君主編



 君主たる者は、才能ある人材を登用し、

 その功績に対しては、充分に報いることも

 知らねばならない。

 そして、国民に対しては、それぞれの分野で

 安心して働けるようはからい、彼らが、取得

 したものを取りあげられるのが嫌[いや]さに

 財産を増やすのを怖れたり、重税嫌さに取引

 を鎮静させることのないよう、注意を怠っては

 ならない。


                    ―― 『君主論』 ――

                              (P.93)

         (016-1-0-000-493)
 



 


 人は、心中に巣食う嫉妬心[しっとしん]によって、

 賞[ほ]めるよりもけなすほうを好むものである。

 それゆえに、新しいやり方や秩序を主張したり

 導入したりするのは、それをしようとする者に

 とって、未知の海や陸の探検と同じくらいに危険

 をともなう「事業」となる。


                    ―― 『君主論』 ――

                              (P.94)
                          
          (017-1-0-000-494)
 






 嫉妬心をおさえこむには、方策は2つある。

 第1は、それを行わなければ直面せざるを

 えない困難な事態を、人々に納得させる

 ことだ。誰しも難局を自覚すると、そこから

 脱出しようとして、自分一人の想いなど忘れ、

 脱出させてくれそうな人に進んで従うように

 なる。

 第2の方策は、強圧的にしろ他のいかなる

 方法にしろ、嫉妬心をもつ人々が擁立しそう

 な人物を、滅ぼしてしまうことである。

 モーゼもまた、彼の考えに反対した多くの人を、

 殺さざるをえなかったのだ。

 
 人々の嫉妬心が、善きことをしていれば自然に

 消えていくなどとは、願ってはならない。

 邪悪な心は、どれほど贈物をしようとも、変心して

 くれるものではないからだ。

 人々の心に芽生えがちな嫉妬心を克服できるか

 どうかは、大事業が成功するか失敗するかの、

 分かれ道でもある。


                    ―― 『政略論』 ――

                              (P.95)
                              
          (018-1-0-000-495)
 








ポイント

嫉妬心は、人間であれば誰でも一度はもつものです。
そして、この嫉妬心を克服するのは容易なことでは
ありません。


あなたも、他の人に嫉妬心を抱いた経験はお持ち
でしょう。もちろん、私も経験があります。


「あの人がいなければ、自分は浮かばれるのに・・・」

「なんで、いつもあの人ばかり高評価されるのか・・・」

「あいばかり、いつもモテるな! それに比べ、オレは
どうしてこうもモテないのか・・・」


笑い話のようですが、大なり小なりこのような経験は
あると思います。




キーセンテンス

「君主たる者は、才能ある人材を登用し、

その功績に対しては、充分に報いることも

知らねばならない」




これはとても難しいことです。
自分より才能のある人材を登用したら、
自分の立場が危うくなると考える君主(リーダー)が
多いからです。


マキアヴェッリはかなり過激な表現を使っていますが、
君主たる者(リーダー)は時には非情とも思われる
こともしなくては、一国(部署)を治めることはできない、
と言っているのです。


平時の君主(リーダー)と非常時の君主は、
自ずから異なることが分かります。


平時であれば、無茶な方策を行なう必要はありません。
ところが、非常時であれば、方策を躊躇している余裕
はありません。


強引でも、実行していかなければならないのです。
独裁者にもならなければいけない局面が、
必ずあると思います。


その方針に従えない人は馘首することも辞さいない、
強い気持ちを継続できるかが問われます。






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