日経ビジネスの特集記事(71) 号砲! 3D生産競争 クルマもスマホも印刷できる(2) | 藤巻隆(ふじまき・たかし)オフィシャルブログ

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<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の
概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>



日経ビジネスの特集記事(71)

号砲! 3D生産競争
クルマもスマホも印刷できる

2014.09.01


今週の特集記事のテーマは

一人ひとりに最適化した商品を、外部の知恵を
取り込んで作る。
独り善がりのモノ作りが通用する時代は終わった。
それは開発や生産の現場のみならず、物流や
販売にも革命を起こす。
3D生産革命にどう向き合うかで、ニッポンの未来
が変わる

ということです。



前回同様、下図をご覧ください。
3Dプリンターが「フィギュアか試作品」を作製
する装置から、「実物の部品」を作製する機械へ
進化していることが、分かると思います。


ダイハツの「コペン」という軽自動車の外装パーツ
を作製できるということです。

クルマ作りをオープン化

(『日経ビジネス』 2014.09.01 号 PP.032-033)



PART2 モノ作りの常識を変える3つの「P」

『日経ビジネス』は「モノ作りの常識を変える
3つの『P』」をキーワードとして取り上げて
います。


Preference(個性に寄り添う)
Performance(性能の限界を突破する)
Personalization(究極の個別化)


順に見ていきましょう!

Preference(個性に寄り添う)

1つ目の「P」は、Preference(消費者の嗜好)
です。

このキーワードの根底にあるのは、「個客」です。
「個客」であって「顧客」ではありません。


高度成長期から続いた大量生産、大量消費時代
から、個人は他人と同じものでは満足できない
時代へ入りました。個性を表現したくなったの
です。


 ダイハツ工業が6月に発売下軽スポーツ車

 「コペン」は、大胆な“オープン化”の発想で

 開発された。これまで自社で囲い込んできた

 車体の外装デザインやその製造を、外部の

 企業や個人などの第三者に委ねようというのだ。

 1台1台のコペンを、所有者の嗜好(Preference)

 に合わせたオリジナル品に変貌させる。それが、

 クルマ作りの外部解散に踏み切るダイハツの

 狙いだ。
 

  (P.032)


開発を担当したダイハツの藤下修チーフエンジニア
はこう語っています。


 「これまでのクルマは、完成した製品を買って

 終わりだった。コペンは、買った後にユーザー

 の想像が無限大に広がる」。
 

  (P.032)


安全性は確保できるのあろうか、という疑問が
わいてきます。軽自動車は普通車と比べ、
ボディの構造や材質の点で、劣るからです。
その点が気になったのです。
軽自動車と普通車との価格差があるので、
当然のことですが。


 フレームだけで乗客の安全を担保している

 ため、クルマの輪郭や色といった見た目を

 左右する外装パネルは、第三者が安全面

 の制約を気にせずに設計・製造することが

 できる。実際、現在販売しているコペンの

 外装は、フレームに接続しているドア部分

 を除き、すべて樹脂製だ。
 

  (P.033)


ダイハツは軽自動車メーカーとして、軽自動車
市場を牽引してきました。


ところが、ホンダや日産自動車が参戦し、シェア
争いは激化しています。


ダイハツの現状に危機感を抱いていました。
そこで、現状を打開する施策として、3Dプリン
ターを使い、「個客」の要望に応えることを実現
したのです。藤下氏の言葉に危機感が表れて
います。


 藤下氏は、「個性的で顧客の感性に訴える

 ようなクルマ作りに転換しなければ、生き残

 れない」と危機感をあらわにする。自動車の
 
 外装は、最大の購買決定要因になっている

 からだ。
 

  (P.033)


ダイハツが描く将来は、次の言葉が物語っています。


 「世界に1台しかない、自分だけのクルマ」

 という新しい価値を消費者に提供できる――。

 ダイハツが描くのは、こんな壮大な構想だ。
 

  (P.034)


こうした流れは、「付加価値を生み出す厳選自体が
企業から個人の側へと移りつつある」ということを
如実に表しています。



Performance(性能の限界を突破する)

2つ目の「P」は、Performance(性能)です。


3Dプリンターが試作品を作製する段階から、
部品を作製する段階へ進み、部品性能が限界を
超えることが求められるようになってきています。


3Dプリンターの特長をよく表す説明があります。


 金型は金属の塊を工作機械で削って作る。

 3Dプリンターで作ると、細く複雑な構造を

 した金型の内部にも、冷却水を流す配管を

 自由自在に張り巡らせることができる。

 これにより、高温に溶けた樹脂を流し込む

 射出成形型の際に、金型の冷えにくい部分

 をなくし成形プロセスをスムーズにできる。

 金型という製品としての性能が大きく向上

 するのだ。
 

  (P.034)


3Dプリンター活用の目的は、製品性能の限界を
突破することになります。


 材料を少しずつ積み上げて造形する

 3Dプリンターなら、具現化できる形状

 の幅が圧倒的に広がる。

 構造の自由度が増せば、製品の機能も

 おのずと向上する。加工技術に制約され

 てきた製品の性能(Performance)の限界

 を突破すること。これが、3Dプリンター

 活用の第2の柱だ。
 

  (P.035)


3Dが普及すれば、中小企業にいる名工(匠)
の存在理由が薄れてしまうか、なくなってしま
うのか、気になるところです。


それどころか中小企業が減少してしまう可能性が、
高まった気がします。


 自動車大手では、日産が3Dプリンターを

 燃料性能改善に本格的に活用する準備を

 進めている。同社のターゲットは、エンジン

 部品を鋳造する際に、溶かした金属を流し

 込んで成型するための砂型を、3Dプリンター

 で作ることだ。
 

  (P.036)

「日産は約15年前から独EOS製の3Dプリンター
を導入し、試作用の砂型の製作に利用してきた」
(P.036)という実績があります。


今は、試作ではなく部品を作ることができるように
なってきたのです。この差は極めて大きなことです。
その理由は、こうしたことです。


 「これ以上の性能アップは無理と信じてきた

 エンジン部品でも、砂型を3Dで作れば、

 改善の余地が生まれる」。日産のエキスパート

 リーダー、神戸洋史氏はこう期待する。 
 

  (P.036)



Personalization(究極の個別化)

3つ目の「P」はPersonalization(個別化)です。


「消費者の個性に合わせた最適なモノ作り」と
「従来の加工技術では望めない複雑な構造の
実現」という、2つの強みを実現できる分野は
どこなのでしょうか?


 それは、医療やヘルスケア、ウェアラブル

 機器といった業界だ。こうした産業では、

 一人ひとりの体格にフィットさせることで

 飛躍的に商品力を高める究極の個別化

 (Personalization)がカギを握る。
 

  (P.036)


ただ、3Dプリンターに過剰な期待をかける
ことは危険です。使い方(ノウハウ)に習熟
するには時間がかかります。


 3Dプリンターは、単に装置を買ってくれば

 画期的な商品が出来上がる「魔法の箱」

 ではない。どんな素材を使い、どんな手順

 で造形すれば十分な品質が出るのかと

 いったノウハウは、一朝一夕には蓄積でき

 ない。3次元計測や3Dデータを扱うソフト

 ウェアなど、必要とされる技術の幅も広い。
 

  (P.037) 



PART3 全ての好機と危機

3Dプリンターの影響力は、さらに広まっています。
モノ作りだけにとどまらず、様々な業種や職種に
まで変化をもたらす、と『日経ビジネス』は見て
います。


 3Dプリンターは、開発や製造というものづくり

 の現場だけではなく、様々な業種や職種にまで

 変化をもたらす。メーカーと消費者との関係を

 一変させ、企業内部の業務プロセスにも変革を

 迫る。つまり、産業構造そのものを根本から

 変えるだけの潜在力を秘めている。
 

  (P.038) 


私は次のアフターサービス部門の変化に注目して
います。「修理」からその場で「部品」を作製し、
部品交換することができるからです。


さらに、部品の在庫が不要になる可能性があるから
です。「個客」の要求に迅速に対応できるように
なります。


 アフターサービスも効率化できる。今は商品

 を販売した後も、故障に備えて何年も補修

 部品を保管し続けなければならない。だが、

 デジタルデータさえあればいつでもその場で

 作れるのなら、部品やそれを作るための金型

 を保管し続けなくても済むようになる。
 

  (P.039) 


3Dプリンターは、個人にも影響を及ぼし始めて
います。


 3Dプリンターというモノ作りの道具を手に

 した個人は今や、自らの手で付加価値を作り

 出す力を持ち始めた。実際に、米シリコン

 バレーではハードウェア関連の起業が急増

 している。
 

  (P.041) 


3Dプリンターの普及がさらに進むと、
ソフトウェアの重要性が高まります。
PCなどのIT(情報技術)の世界で米国が支配する
構図は、3Dプリンターの世界でも再現されるの
でしょうか?


日本はまた米国の後塵を拝することになってしまう
のでしょうか?


 3Dプリンター振興協議会の早野誠治代表は

 次のように訴える。「より重要なのは新たな

 アプリケーション(用途)やビジネスモデルを

 作リ出せるかどうかだ」。
 

  (P.041) 



COLUMN 理解を深めるポイント

『日経ビジネス』は、3Dプリンターについて
簡潔にまとめています。

1.3Dプリンターの価格は、用途に応じて
数万~1億円超まで様々なタイプがあります。

2.30年近く前から存在していました。

3.材料はプラスチックだけでなく、金属や紙
でも大丈夫で、液状や粉末にして積層します。

4.市場は、2020年にプリンターだけで1兆円、
関連産業は10兆円超に達する見込みです。

5.課題があり、銃などの製造は規制が必要
で、製造物責任も曖昧になる恐れがあります。

(PP.042-043 の記事を藤巻が書き直しました)


市場の伸びと課題

(『日経ビジネス』 2014.09.01 号 P.043)



今から10数年前に読んだ本の中に、3つの「S」
が書かれていました。


Simplification(単純化)
Standardization(標準化)
Specialization(専門化)


製造だけでなく、仕事のやり方を述べたものです。
まず、誰でもできるように単純化し、個別の分野
で専門化する、というプロセスを経るというもの
でした。


これと同じことが、3Dプリンター(ハードウェア
とソフトウェア)で一気に実現できる、と実感しま
した。





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