連載は今回を含めあと2回で終了します。
今までの内容で、疑問に感じたことや、
これは違うのではないかと思われたら、
遠慮なくコメントやメッセージで
お知らせください。
STAP細胞、失墜の連鎖 ④ 迎合
(『日経ビジネス』2014.07.21号 P.066 以下同様)
「万能細胞」という言葉は、ES細胞研究が
活発化した1998年頃に生まれた。神経や骨、
筋肉など様々な組織に分化するとの意味で
新聞やテレビが多用するが、科学的な厳密さ
はなく、研究者の多くはその使用に慎重な
姿勢を示す。
京都大学iPS細胞研究所は「万能という表現
は『どんな病気でも治す魔法の細胞』という
印象を与えかねない」として、報道資料でも
iPS細胞を「多能性幹細胞」と表記する。
(上掲誌 P.066)
STAP細胞は当初、iPS細胞などにはない
胎盤への分化能力を持つことから、受精卵に
近い究極の“万能細胞”だと注目された。
だが、それもあくまで未検証の仮説。
事実、小保方晴子ら研究チームは「STAP」
の名付けに際し、多能性を意味する
「pluripotency」の頭文字を取った。
にもかかわらず、理研の発表はSTAP細胞
の能力と利点を強調し、メディアに迎合する
道を選んだ。
(上掲誌 P.066)
毎年夏、各省庁が翌年度の政策に必要な予算
を財務省に申請する概算要求が近づくと、
役所を飛び交う文書がある。
通称「ポンチ絵」。
事業の意義や計画、予算要求額などを1枚の
紙に単純化し、外部各所に説明するための
ものだ。
(上掲誌 P.066)
「財務省は事業内容について詳細な情報を
求めてくるし、我々も時間をかけて説明する。
単純化が必要になるのは、15秒しか集中力が
続かない政治家たちと、ワンショットで
すべてを切り取ろうとするマスメディアに
説明する時だ」。
文科省幹部は苦虫を噛み潰す。
(上掲誌 P.066)
理工系の若手研究者は、「大学教員の職に
応募する際には、自分の過去の論文数や
被引用数を履歴書に書く」と話す。
「ネイチャー」や「サイエンス」といった
有名誌への掲載経験の有無は、任期の付か
ない研究職を得られるかどうかの分かれ目
になると言われる。
(上掲誌 P.066)
科学の価値判断で、常に外形的な基準が
重用される現実。背景には、研究の大型化・
細分化が進み、その道の専門家であるはず
の研究者でさえ、他人の成果の見極めが
困難になったという現実がある。
(上掲誌 P.066)
「いくつかの誤解を招く点はあったが、
STAP細胞の広報は総じて大成功だった。
専門家以外に身近に感じてもらえない研究に
税金はもう出せない」。割烹着姿の小保方が
脚光を浴びる理研の演出を、文科省幹部は
こう評価する。
研究者たちが自らの仕事をどう意義付ける
かに苦悩している以上、国民自身も科学を
見る目を養う必要がある。
(敬称略)
<私の感想と考え>
あなたはこのようなテーマに興味はないですか?
こうしたテーマを、マスメディアは当初、
興味本位だけで扱い、長期間にわたって報道
します。
ところが、物事の本質を深く追求することは
多くの場合ほとんどなく、しばらくすると、
視聴者や読者を別のテーマへ誘導しようと
します。
しかも、記者は当事者の感情を配慮すること
なく、罵倒したり、関係のない質問を連発し、
露骨に追及します。
しかし、自局のテレビ番組で「やらせ」が
発覚すると、報道するのは他社だけで、
自社で「お詫び番組」を放送することは、
めったにありません。
他人には厳しい態度を示しながら、
自分には大甘なのです。
そして、しばらく経つと、「やらせ」が
繰り返されます。
こうした行動は、ことメディアに限ったこと
ではなく、組織や企業にも言えます。
記者会見で、責任転嫁、責任逃れとも取れる
発言が、発せられることが多いからです。
組織や企業は、外部からはどんなに堅牢に
見えても、内部は脆いものであることを
示しています。
論文に関しては、
(上掲誌 P.066)
研究の大型化・細分化が進み、その道の
専門家であるはずの研究者でさえ、
他人の成果の見極めが困難になったという
現実がある
という状況が生み出した「産物」だった、
と言えます。
文科省、財務省、政治家、理研、研究者、
論文を審査する専門家、メディアのバランス
は微妙で、その中の一カ所に綻びができると、
壊れてしまう脆いものなのでしょう。

STAP細胞についての詳細は、
下記のブログをご覧ください(再掲)。
STAP細胞の作製に関するマスコミの対応について
この一連の騒動により、英科学誌「ネイチャー」
への掲載論文は撤回されました。
私はこのようになる可能性が高くなった時点で、
PDFに保存しました(再掲)。
参考までに下記のPDFをご覧ください。
もちろん、英文ですし専門用語だらけですので、
理解することは極めて難しいことですが、
参考資料として考えていただければ、
よろしいかと思います。
この論文の共同執筆者に東京女子医大の大和雅之
教授の名前があります。さらに2名のバカンティ氏
も掲載されています。
Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells
into pluripotency
最終回へ続きます。
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