2014.07.21
アンリ・ドゥ・キャストゥル (Henri de Castries)氏
[アクサ会長兼CEO (最高経営責任者)]
欧州全体は強い回復には至っていません。
米国も弱い回復ではありますが、
それをも超えない程度ではないでしょうか。
ドイツは税制改革など、国を挙げての
構造改革の結果が出始めています。
一方、フランスやイタリアは改革が遅れており、
まだまだ苦しい状況にある。
構造改革の遅れは経済の阻害要因となり、
投資家の意欲をそぎ、成長を阻んでいます。
フランスの政治は長期政権が多いのが特徴です。
1つの党を責めるわけにはいきませんが、
ここに構造改革が進まなかった理由がある
のではないでしょうか。
保険会社はALM(アセット・ライアビリティー・
マネジメント=資産と負債を総合的に把握し
管理する)手法を導入して運用しています。
金利変動による債券価格の変動を小さくし、
リスクマネジメントを厳しくしなければなり
ません。
保険会社の使命は、顧客の生活を守ること
です。健康や生活、資産を守るのです。
戦略を例えるなら、ピアノを弾くようなもの
とでも言いましょうか。同じ楽器であるピアノ
を弾くにしても、どのような場所でどのような
時間にどのようなメロディーを弾くか。
相手によってかなり違いが出てくるでしょう。
保険会社のビジネスは、まず様々なデータを
収集し、その中からどのようなリスクがあるか
を特定することから始まります。そのリスクを
理解した上で、リスクに対して対価を決めて
お客様に商品やサービスを提供していきます。
(「結果を出す勝因は何なのでしょう」という
質問に対し)共通の夢と価値を持つ。そして、
とにかく一生懸命頑張ることではないでしょうか。
世界的に成功している日本企業もたくさんあり
ます。優れたグローバルリーダーを数多く輩出
していますし、多くの尊敬する日本企業があり
ます。
アクサの成功事例を分析するならば、やはり
多様性をいち早く認めたことにあるのでは
ないかと思います。
成功したいと思えば、お客様を見ることから
始めなければならない。
日本での成功の秘訣は、まず忍耐力(笑)、
そして学ぶということです。日本に進出して
約20年になりますが、14年前に日本団体
生命保険を買収し、喜びや、苦労を重ねて
きました。失敗もしましたが、そこから多くを
学びました。
私の考えを申し上げると、ミスを全て避ける
のが大事なのではなく、ミスを犯した場合には、
そこから何を学んで次の段階に進むかという
ことが重要だと思うのです。
人口減少は深刻な事態です。
しかし、それによってシルバー経済を取り巻く
新たなニーズが生まれると考えています。
シルバー層にサービスを提供するセクターの
一つとして、保険業界があります。
高齢化は顧客ニーズに変化をもたらし、
新たなビジネス機会を生み出します。
また、若い世代においてもニーズの変化が
あるでしょう。

(『日経ビジネス』 2014.07.21号 P.070)
キャストゥルさんの、「14年の長きにわたってCEOを
務め、しかも世界最大級の保険会社に育てた実績」
(田村俊一編集長の「傍白」)は素晴らしいことです。
しかも、数々の「失敗」の経験を率直に認めるところ
は並のエリートではありません。
本文中にピアノの話が出てきますが、恐らくピアノを
弾けると思います。ピアノをどのように弾くか、
具体的に例えるところに現れています。
欧米の優れた経営者には、専門分野以外に、
音楽、芸術、文学、歴史などリベラル・アーツ
(一般教養)を身につけている人たちが多いように
思います。
名経営者と言われる人物は、経営だけではなく、
多様な側面を持つことで、それらが複雑に絡み合い、
才能を発揮することができるのでしょう。
1954年生まれということですが、若々しく見えますね。
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