世界で勝てない
したたかに戦うのも大事
竹内 敏晃(たけうち・としあき)氏
[日本電波工業会長]
私が父の経営するこの会社に常勤で働き
始めたのは1977年でした。その最初から、
大変な会社の危機にぶつかりました。
160億円あった売上高がその年100億円
を切るほど急落したのです。原因は、
米連邦通信委員会(FCC)が電波規制を
急に厳しくしたことでした。
この時は、幸いにも腕時計用の水晶部品
を開発したところだったから、これを
海外に売り込むことに全力を挙げ、
何とか危機を乗り切ることができました。
ところが、追い打ちをかけるようにすぐに
別の危機が起きました。欧州市場の掛け
時計用に輸出していた水晶部品が、現地の
ライバルメーカーにダンピング提訴され、
ある値段以下では売れなくなったのです。
売り上げはまた急落。私は頭を抱えました。
ところが、その時、独ダイムラー・ベンツ
向けに時計を作っていたあるドイツの
メーカーが注文をくれたのです。
「クルマは何より品質を重視する。日本
電波の品質は信頼できる」と。ありがた
かった。本当に助かりました。
相次ぐ危機の中で私は感じました。経営は
あらゆる危機を想定して備えることだと。
その備えが強さを生むもとになるのです。
当社が日本企業としては最も早く国際会計
基準(IFRS)を導入したことは、会計に少し
詳しい方ならご存じかもしれません。
実を言えば、これも危機の経験が根っこに
ありました。世界で戦うには信用が第一。
IFRSはそのためのものです。ただし、真面目
さだけでは足りません。欧米が決める規制や
基準に振り回されないしたたかさも大事です。
真面目な努力としたたかさ。強さはいろんな
努力をしてこそ作り出せるものだと思います。
(2014.05.19号から)
竹内さんは、「真面目な努力としたたかさ。
強さはいろんな努力をしてこそ作り出せるものだ
と思います」と述べています。
今、『マリーシア <駆け引き>が日本の
サッカーを強くする』(戸塚啓 光文社新書
2009年1月20日初版1刷発行)を読んでいます。
W杯ブラジル大会が来月開催される前に、
サッカー関連の本を読んでおこうと思い立った
からです。
「マリーシア」は聞き慣れない言葉ですね。
実は、この言葉の意味が、竹内さんが話された
ことにつながってきます。
サッカーが国技であるブラジル人にとって、
「マリーシア」は頭と体の中に染み込んで
いるもののようです。
「マリーシア」の日本語訳は「狡賢さ」で、
狡いことが強調されますが、ブラジル人に
とってはポジティブな意味で「インテリ
ジェンス=賢さ」や「クリエイティビティ=
創造性」を意味するものだそうです。
(上掲書 P.118)
マリーシアとは駆け引きである――試合の流れに
応じた臨機応変(りんきおうへん)なプレーこそ、
マリーシアの本質なのだ。
もう一つご紹介しましょう。
(上掲書 P.137)
「日本人はすごく真面目(まじめ)で、すべてを
しっかりやっていきたいと考えているところが
ありますよね。
ブラジル人は逆で、人と違うことをやらなけきゃ
いけないと考える。小さい頃からそうやって育って
きているんです。だから、言い方は悪いけど、
日本人はロボットみたいなところがあるような気が
するんです」
<アジエル(執筆当時、湘南ベルマーレ所属)>
これは、サッカーに限定した話ではなく、生き方の
違いとも言えるかもしれません。
「ワーク・ライフバランス」にも関わってくる、
重要なポイントでもあります。
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