―― お知らせ ここから ――
明日(日本時間6月6日8:30)、「日本 対 ザンビア」
のW杯強化試合が壮行されます。
代表選手たちのコンディションや、チームプレーの
完成度を確認するために、ぜひ観ておきたいですね。
テレビ朝日で8:00から実況中継します。
―― お知らせ ここまで ――
「マリーシア」を説明する、日本でプレーするブラジル人
選手たちと、「マリーシア」のある日本人選手はいるのか?
前回は、「マリーシア」の定義と日本人選手には
「マリーシア」足りない、という話をお伝えしました。
では、日本人選手の中で、「マリーシア」のある選手は
いないのか、いるなら、それは誰なのか、を日本でプレーする
ブラジル人選手たちへのインタビューを通じてご紹介して
いきます。
もう一度、本のタイトルを確認しておきましょう。
『マリーシア <駆け引き>が日本のサッカー
を強くする』(戸塚啓 光文社新書 2009年
1月20日初版1刷発行)
5年前に出版されました。
マリーシアの定義をもう一度確認しておきましょう。
マリーシアとは、「狡猾(こうかつ)さ」だけを
指し示す言葉ではない。
マリーシアとは、「柔軟性を持った発想力」である。
マリーシアとは、「勝つために必要な駆け引き」である。
そして、マリーシアはブラジル人特有のメンタリティや
価値観ではなく、フットボーラーなら誰もが身に付ける
べきスキルである。
(上掲書 P.9)
この定義とは別に、ブラジル人選手たちが考え、
実践している「マリーシア」と比較していくと、
マリーシアがより鮮明になってくることでしょう。
まず、ブラジル人選手たちの証言をご紹介します。
その時々で率直に、また遠慮がちに証言する選手や
コーチ、監督の言葉に素直に耳を傾ける必要があります。
彼らが明かした話の中には、現・日本代表選手の名前も
挙がっています。
W杯ドイツ大会後のインタビューが中心になっているため、
現在は代表を引退していたり、代表に選出されていない
日本人選手の名前も何人も挙がっています。
そうだとしても、日本人選手の中にも、確実に「マリーシア」
を身につけていた選手がいたことは心に留めておく必要が
あります。
彼らが経験したことを後輩に語り継いでいくことは、
とても大事なことだからです。
W杯代表に選出されただけでなく、「ピッチに立って
実際に戦う」という経験を通じて、「世界の力」を肌で
感じることができるからです。
この感覚は、経験者にしか分からないことでしょう。
日本代表の遠藤保仁は、自著でこう語っています。
この本が書かれたのは南アフリカ大会後のことですが、
ブラジル大会への意気込みも書いています。
近日中に、この本の内容についてもお伝えします。
やっぱり経験者の言葉、知恵というのはすごく大きい。
大会中、ストレスを感じることなくプレーに集中する
には、何を重視し、どういう環境が必要なのか。
こういうのがデータとして積み重なっていけば、今後の
ワールドカップは少なくともドイツの時のように環境面
で失敗することはなくなる。どこに行ってもストレスを
感じることなく、サッカーに集中できる。
そうすれば、近い将来、もっと大きな結果を残すことも
可能になるはずだ。
(『信頼する力 ―― ジャパン躍進の真実と課題』
遠藤保仁 角川oneテーマ21 2011年1月10日
初版発行 P.90)
「経験値」はとても重要な要素です。短時間に簡単に
増やせるものではないからです。
日本でプレーするブラジル人選手たちの証言
現・ヴィッセル神戸のFW、マルキーニョスが証言する
言葉が、多く出てきます。
日本でプレーする外国人選手の中で、最も長くプレーして
いるブラジル人選手です。
ここで、マルキーニョスについてお話します。
過去Jリーグ得点王を獲得したことがあり、今シーズン
から横浜F・マリノス(以下、マリノス)からヴィッセル
神戸(以下、ヴィッセル)へ移籍しました。
マリノスファンとして、マルキーニョスが移籍したにも
かかわらず、大型補強をしなかったことが残念で仕方が
ありません。
マルキーニョスはストライカーだからです。
現在、得点王ランキングで4位の7得点しています。
マリノスのチーム総得点が13ですから、半分以上を
1人で得点していることになります。
ヴィッセルは現在(2014.06.06)、J1の3位で、
マリノスが12位なのもうなずけます。
マリノスには、残念ながらFWはいても、ストライカーは
いません。
ストライカーは得点を量産できるFWです。その中でも、
高得点するのが、エース・ストライカーです。
ヴィッセルの総得点が26で、そのうちマルキーニョス
の同僚で、得点ランキング1位のペドロ・ジュニオール
が9で、マルキーニョスが7ですから、合計16です。
ほとんど、この二人で、得点していることになります。
別の言い方をすると、マリノスと同様、ヴィッセルには、
日本人FWはいても、ストライカーはいないことになり
ます。FWは得点してこそストライカーです。
ヴィッセルに限らず、シュートレンジに入っても自ら
シュートせず、ゴール前でパスを出しているようでは、
ストライカーとは呼べません。
ストライカーは、時には、強引なシュートも放つ必要が
あります。相手DFに当ってコースが変わり、ゴール
することもあるからです。オウンゴールであるかどうか
にかかわらず。
マルキーニョスに限らず、外国人選手が得点王ランキング
で上位を占める状況を変えていく必要があります。
その意味で、久々に日本代表に復帰した大久保嘉人が、
8得点で2位に入っているのは特筆すべきことです。
Jリーグのレベルが高い、と世界から評価されるように
なれば、世界の大物をJリーグに呼びこむことが可能に
なります。
前回のW杯南アフリカ大会の得点王、ウルグアイの
フォルランが、今シーズンからセレッソ大阪(以下、
セレッソ)に加入しました。
ストライカーとは何か、を気づかせるのにうってつけの
選手で、フォルランのプレーを身近で見て感じて、
FW柿谷が日本のストライカーに成長するという期待感を
抱かせます。
フォルランがJリーグに加入したことは、セレッソという
1チームだけの問題ではなく、日本代表のストライカーを
育成するためにも大きな出来事だった、と考えています。
ちなみに、フォルランは現在、6得点で5位です。
「マリーシア」について語るブラジル人選手たちの
話に戻します。
(1)マルキーニョスの証言
鹿島アントラーズがJリーグ5チーム目
(その後、マリノス、ヴィッセルへ移籍で
7チーム目 注:藤巻隆)
となるマルキーニョスが言う。
「日本人は決められたことを杓子定規に
守るクセがあるなあ、と私は思っています。
ボールがあそこへいったら、ここにきて
ボールをもらう。そして、ここへボールを
出す。そういう流れが自然に身についていて、
自分で何かを作り出そう、何科をやろう、
とトライする気持ちが薄いのではないで
しょうか。決められたとおりにやるのが習慣に
なっていると感じます。創造性を発揮していい
場面でも、変化を求めずに同じようにプレー
することが多い、と言いますか・・・・・・」
(『マリーシア』以下、同様 PP.135-136)
自分たちが勝っているときに、ボールを前に
蹴ってしまう選手がいたとします。コーナー
フラッグ付近までボールを持っていくとか、
ドリブルしてファウルを誘うとか、そういう
狡猾さを使わなきゃいけない場面で違うことを
する選手がいたら、チームメートが指摘しない
といけないでしょう。
(P.194)
ブラジルでは、ベテランがミスをしたら若手が
指摘したり文句を言う。それが、日本には足り
ないと思います。
(P.195)
(2)シルビーニョの証言
「マリーシアにはいくつか種類があると思います。
リードしている試合で、そのまま逃げきるための
もの。すごいプレッシャーを受けていて、その
プレッシャーを回避するためのもの。あるいは、
試合の流れやリズムを断ち切るためのものもあり
ます」
こう語るのはシルビーニョ(前アルビレックス新潟)
である。
(PP.195-196)
「何かをつかみ取ろうという気持ちが、足りない
のではないか。ピッチに入った瞬間からそういう
気持ちを持たなきゃいけないし、そういう気持ち
の強さがあれば、そこにマリーシアがついて来る
と思います」
(P.197)
(3)ロペスの証言
日本人の試合に臨む姿勢に着目するのは、
前横浜F・マリノスのロペスである。
「日本人にはマリーシアが欠けているかも
しれませんが、マリーシアをまったく使え
ないのではなく、そういうリスクをなかなか
冒(おか)そうとしないのではないで
しょうか。
とにかく練習してきたことを試合でやりたがり
ますよね?」
(P.200)
「リスクを冒すことで、プレーが拡がっていく
んですよ。自信もつきます。よし、もう1回
トライしようという気持ちになれる。」
(P.200)
ブラジル人選手が「マリーシア」を持っている、
と考える日本人選手たち
日本人選手の中にも、「マリーシア」を身につけている
選手がいます。
誰だと思いますか?
前回の記事で、ACミランのカカが中田英寿と中村俊輔は
「マリーシア」を持っている、と証言していることを
ご紹介しました。
他にもいます。現・日本代表にもいます!
1人目は、大久保嘉人(よしと)です。
ボッティに聞いてみる。日本人でマリーシアを
持っている選手は誰か?
ヴィッセル神戸のチームメイト(当時)の名前
を、彼は即答した。
「ヨシトさん、しっかり持ってますよねえ。
言ってみれば、相手にするとうざいような選手
かもしれない。実際に相対する選手はイヤで
しょうし、審判もイヤだと思うんです。スペ
インでやった経験が大きいでしょうね。スペ
インにはブラジル人もアルゼンチン人もいます
から。あっちで学んだところはあるでしょう」
(PP.232-233)
ゼ・カルロス(前セレッソ大阪)も大久保嘉人
をあげた。
「マリーシアに関しては素晴らしいです。
ホントにいい選手だと思う。」
(PP.232-233)
2人目は、遠藤保仁です。
現役の日本代表では、遠藤保仁の支持率が
高い。ガンバで2シーズンプレーしたかつて
のチームメイトの名前を、フェルナンジー
ニョ(前京都サンガ)は迷わずあげた。
「とても、とても、賢い選手です。ファウル
を受けたらちゃんと倒れるし、そういうときに
間を取ることもできる。いま、ここで何を
すればいいのかを、すごく分かっている選手
だと思います」
(PP.234-235)
3人目は、小笠原満男です。
小笠原満男を評価する声も多い。鹿島アント
ラーズの司令塔を、ゼ・カルロスは絶賛する。
「ブラジル人同士で日本人の話をするときに、
オガサワラの名前はよく出てきました。
ホントにブラジル人みたいにプレーしますから」
(P.235)
4人目は、中村俊輔です。
日本代表(当時)の中村俊輔はどうだろうか。
「持ってますね」とフランサ(前柏レイソル)
はうなずいた。
「彼は技術が高いし、試合を読む力に優れている。
試合の流れに応じてチームを落ち着かせることの
できる、本当に能力の高い選手だと思います」
(PP.236-237)
マリーシアを再度まとめると、下記のようになります。
著者、戸塚啓さんが言いたかったことが、凝縮されて
います。
マリーシアとは発想の柔軟性のことであり、勝利
につながる駆け引きだと僕は言いたい。サッカー
の教本には書いていないが、だからこそ見過ごして
はいけないと思うのだ。
(PP.237-238)
この本が書かれたのは、5年前です。
当時の状況と大きな違いが1つあります。
南アフリカ大会以降、海外でプレーする日本人選手が
増えたことです。
海外でプレーし、試合に出場することで「マリーシア」
を自然に身につけていった選手たちが増えた、と思って
います。
開幕までいよいよ1週間となりました。
日本代表の活躍を大いに期待しています!
世界を驚かせて欲しい、と心の底から思います。
あなたも日本代表を応援してください!!!
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